特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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もったいないの現状は……

[3・4年生]

ここは選りすぐりのドキュメンタリー映画を放映するので有名な渋谷の映画館。そんなハイブローな空間に現れた小学生たち。見にきた映画のタイトルは『もったいない』(原題・TASTE THE WASTE)。食品廃棄の現状を赤裸々に映し出した野心作です。

デパートやスーパー、コンビニ、そして飲食店としては、食品廃棄しているところは見せたくないので、取材を申し込んでも丁重に断られてしまいます。ゴミ箱にしても厳重に管理されています。このため食料廃棄がなされている現場に出向いて実態を目の当たりにすることはとても難しいのです。またまた食品偽装の問題が巷を賑わせていて、なおさら神経をぴりぴりさせている「現場」を小学生相手に見せようというところはありません。

だからといってただあきらめるわけにはいきません。「文章」や「数字」といった「情報」や「データ」だけでなく、現状を「目」で確かめたい……そんなときに、このテーマ学習のために公開してくれたのか!というぐらいドンピシャの映画に出会ったのです。

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冒頭からスリリングな映像。ウィーンの街中にある業務用の巨大なゴミ箱にダイヴして、まだ食べられるのにスーパーが廃棄した食品をあさる若者二人の姿。捨てられたものであっても勝手に持って帰ると窃盗罪に問われます。そうなったらそうなったで自分たちの正当性を訴えるのみ!というポリシーと覚悟を持って臨んでいます。

無事、家に戻り、「戦利品」を食卓に並べてみると、野菜に肉、魚、乳製品の山ができました。全然不潔な感じがしないどころか、腐ったり、悪くなったりしている形跡すらありません。それもそのはず。表面がちょっとしおれているとか、あと数時間で消費期限が切れるとかの理由で、品質になんら問題がないのに廃棄されてしまっているからです。彼らはこうやって食品を手に入れているので月の食費は15ユーロしかかからない……いきなり「飽食」の「矛盾」を目の当たりにしました。

いつでも焼きたてのパンを店頭に並べておくために、冷えたパンはどんどん廃棄されます。こうしてダンプカーに山盛りに積まれたパンが巨大ゴミ倉庫に集められます。画面に向かって流れ落ちてくるパンの滝の迫力がショッキングです。

消費期限をちょっとでも過ぎた総菜やお弁当も大量にポリバケツに捨てられてゆきます。ちょっと前までは、とてもおいしそうにパックされていた食べ物が、ポリバケツの中で無惨な姿をさらしている……形がちょっと曲がっていたり、色がちょっと規定と外れているだけで捨てられてしまう野菜や果物の山……市場で買われることなく無造作に発砲スチロール容器に放置される魚……映画館の巨大スクリーンに淡々と次から次へと映し出される食品廃棄の現実を子どもたちは食い入るように見つめていました。

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まだ食べられるのに捨てることがわたしたちの日常に組みこまれている……なんてひどいんだと思いつつも、自分たちがそこに加担していることにも気づいてしまった……子どもたちの中に強い葛藤が生じました。

まず自分の身のまわりからということで、給食の残飯調査をしよう!と子どもたちが言い出しました。もともとプランしていてやらせようと思っていたことでしたが、映画を見終わってスクールに戻ってきた途端、子どもたちの方から言い出し、学びの時間以外に勝手にやり出しました。

この日のメニューは豚キムチ。子どもたちに人気のあるメニューです。にもかかわらず、たった20名のスクールでありながら、残飯の重さを量ってみると約1kg。1人分の重さも量っておいたので割り算してみると……4人分!なんと5分の1も食べ残していることがわかってしまいました。

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「今日は少ないと思ったのになあ……」

嫌いなメニューでもないのに現状はこのありさま。これが積み重なればいったいどんなことになるのかという「想像」が子どもたちの頭の中をグルグルしています。

目の前に出現した「事実」を通じて、その背後に広がる「全体像」や「本質」を「想像」できることがとても大事なことです。これこそ「認識」をゆさぶり、変え続ける探究する学びによって育まれる力です。食品廃棄に対してどうアクションするか子どもたちは歩み始めました。

RI

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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