【探究領域】意思表現
【セントラルアイディア】魂は細部に映る。
<テーマ学習レポート> week3
いよいよ映画制作の道を進め始めた和頼粘土組。
となれば、まずもって必要になるのが映画の「ストーリー」。
どんな内容にするかが決まらなくては、何も始まりません。
そこで今回は、これまで参考として観てきた映画『ショー・リール』のように、「自分(作り手)の思い描く空想で、観客一人ひとりの中に眠る”オモシロガリヤ”を目覚めさせる!」ということを目指し、TCSを舞台にしたオリジナルストーリーを考案することにしました。
いつも「書く」の時間に使っている”ストーリーラインシート”と、”登場人物の相関図”を使いながら、まずは一人ひとりが脚本家として「自分だったらどんな話をつくりたいか」という視点から物語を紡ぎだしていきます。しかし、実は今回、各々で作品をつくるのではなく、和頼粘土組のキッズ10人で、”1つ”の物語を制作していきます。
じゃあどうやって10作品から1作品にするのか?
ここが何より難しく、何よりエキサイティングなところ。
一人ひとりの物語をシェアしていく中で、「この話は、登場人物のアイディアがすごい。まさか!と思う驚きがあるよね」
「この話は、世界観が面白いよね。そんな場所に目をつけたかって感じ」
「この展開がいいね、こう思わせといて、えー?みたいな流れがあるじゃん」
いろんな意見が出てきます。映画のテーマを考える時に欠かせない「キャラクター」「世界観」「ストーリー展開」の要素からみてみても、あれもいいな、これもいいなと決めきれない状態。9名が「これがいいのでは?」と言っても、1名は「いやこちらだって面白い」と譲らない、そんな膠着状態もありました(!)
だからといって、意見が強い側の発言や多数決、あるいは妥協や諦めのある決め方をしては本末転倒。一人ひとりが納得できる決め方でなければ、制作者として、チームとして魂が込められるはずがありません。
そこで、もう一度「私たちは何のために制作するのか」という問いに立ち戻ります。
自分たちの楽しみのためだけに制作するのではなく、観てくれる観客のために制作すること。そこで自分たちが伝えたいメッセージを、映画という手法で伝えるんだということ。
すると、これまで「何を伝えたいか」という制作者目線だけだったところに、「何が伝わるだろうか」という観客目線が必要なだということに気づいた子どもたち。その視点で議論を重ねた結果、今回”軸”にする話がついに決まりました!
ここから、”和頼粘土組全員”の物語にするべく、軸になる話のストーリーラインをみんなで読み返し、「起承転結」の流れに沿って話を分析しながら、キャラクターや舞台設定を見直し、展開の肉付けをしていきました。
さぁ、話の軸ができたところで、一人ひとりが映画制作に必要な仕事に就いていきますよ!
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<テーマ学習レポート> week3
映画を映画たらしめるものは、キャラクター設定や世界観の作られ方、ストーリー展開だけではありません。俳優の動きやセリフ、カメラワーク、音楽、衣装、編集など、たくさんの”技術力”が結集されてはじめて、それが”映画”になるのであります。
和頼粘土組も例に漏れず、一人ひとりが技術力を磨いて制作できるように、プロの現場にならって【演出部】【撮影部】【美術部】【編集部】の4つの部を構成しました。
ちなみに「みんな一人ひとりが”監督”だからね」と伝えたところ、
「えー? 普通、監督って一人じゃないの?」と子どもたち。
そうですよね、映画に限らず”監督”といえば、組織のトップでなんだか一番偉そうでみんなに指図して、というようなイメージを持たれがち。
映画監督は、撮影現場の責任者というポジションではありますが、実はそれぞれの管轄(部署)にも、その全責任を負うポジションとして”監督”がいます。同じようにその管轄を円滑にサポートするために”助監督”がいるのです。
じゃあ、助監督はただのアシスタントってこと?
いえいえ、映画の現場では全然違います。
助”監督”として、その人にしか負えない重要な仕事がある。
だからこそ、一人ひとりが”監督”である、という意識を持って制作に取り組んでいくことにしました。
1、【演出部】
企画〜脚本づくり〜撮影までと、制作に関わる全体を指揮しながら、
イメージする作品の完成へと導いていく。スケジュール管理や撮影の諸々の手配、俳優の動きや予定など、さまざまな条件に左右されながら、決められた予算内でそれらを進めていく部署。「記録」とも呼ばれる、映画には欠かせないスクリプターの仕事も今回はこちらの部署にしました。
2、【撮影部】
監督の指示や意向にしたがって、映像面での責任を持つのがこの部署。
脚本イメージに合うよう、色彩のバランスや全体のトーンなど、細部にわたり調整していく「監督の女房」的役割!
3、【美術部】
大道具・小道具、特撮、操演、衣装などがこの部署。脚本にあったイメージで、セットや小道具含め、実在しないもの観たことのないものでも「本物らしく」つくりあげていく。今回のコマ撮りで動かす担当はこの部署!
4、【編集部】
シナリオどおりに撮影されることは少なく、シーンをまたいだりしながらバラバラに撮影されたカットをつなぎあわせ、一本の作品に仕上げていくのが編集の部署。作品の意図を十分に理解してリズムを生み出す重要な役割です。
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さぁ、誰がどの仕事に就くか決まりました!
演出部は、話の軸を元にシナリオ制作と絵コンテ制作に入ります。
映画は小説と違い、”カメラで映す”ことが目的になるため、「〜と思った」「〜と考えている」というような登場人物の心理状態や、日付や時間、人物の関係性などもカメラには映らないのです。だからこそ、撮影場所(柱)やそのときの状況・情景・動作(ト書き)、登場人物の会話(セリフ)に分解したシナリオとして、誰が見てもわかるような説明にして表現します。
そのシナリオをもとに、絵コンテを描いていきます。実際に撮影するならどんなカット割りになるか、どれくらいのサイズでどんな映像効果を使うのか、ビジュアルにおこして表現していきます。
まだ映画を撮影していないのに、頭の中で「こんなシーンを撮りたい」という一人上映会が行われている、なんとも不思議な状態ですよね(笑)
つづいて、撮影部はそのシナリオや絵コンテが完成していくのを横目でみつつ、実際に撮影するならどの場所か、どの角度が一番いいか。どういうふうにカメラを動かしていくか、ロケハンとカメラワークの確認に入ります。
美術部は、今回コマ撮りという手法を用いることもあって、何より重要な部署。撮影したいアイテムを考えつつどんな色や形がいいか、どう動かしてどんな表現ができるか、手を動かしながら考えていきます。
編集部は、実は撮影が出来上がってから大活躍する部署ではありますが、どんなカット割や音響を使えるかなど、効果的な表現方法について考えていきます。
これらをもとに、いよいよ撮影開始だ!!
MK
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(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2019年度 年間プログラム(PDF) ・ テーマ学習一覧表(実施内容)