【探究領域】自主自律
【セントラルアイディア】感覚を研ぎ澄ませば世界は広がる。
<テーマ学習> 〜レポート
<紅葉山公園 散策>
まず初めに、今回のテーマ名も内容も伝えないまま、「紅葉山公園に行きます!」と言ってキッズを外に連れ出しました。
「1列でついてきてね」とだけ言って公園内を歩いていると、「ねー、何してるの?」「なんで紅葉山に来たの?」「なんのテーマなの?」と、今回のテーマを知りたくてウズウズする子供たち。
それでも何も伝えずに色々な場所を歩き、たまに立ち止まってその場で静かにしてみたり、寝転がったりもしてみました。
公園を一回りした後、「さー、じゃあそろそろスクールに帰ろうか。」と言うと、「えー!なんのための時間だったのー?」と困惑。
そして、スクールに戻ってから「紅葉山公園で感じたこと」を付箋に書き出してもらいました。
「感じたこと〜?えー、何があったかなー。」
「最初に言ってくれれば、もっと色々感じるようにしたのに!」
と言われましたが、でも 実はそれが狙いでした。
普段の状態で、みんながどれだけ感じることができているかを知りたかったのです。なぜなら、私たちは普段ボーっと過ごしてしまっていて、感じることを積極的にできていないことが多いから。
ボーっとしていると、せっかくの学びのチャンスを逃してしまっているかもしれません。
今回のテーマ名は、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」で、「感じる」ことについて探究していきます。
「感じる」ってどういうことだろう?どんな感覚を使って感じるんだろう?と問うと、「目で見たり、耳で聞いたりするよ。」などと意見が出てきました。
そして、「五感」というワードも出てきました。
感じたことを書いた付箋を、「触覚」「味覚」「聴覚」「視覚」「嗅覚」の五感で分けてみると、一人も感じられなかった感覚があったりと、使えている感覚に偏りがありました。
このテーマのセントラルアイディアは、「感覚を研ぎ澄ませば世界は広がる。」です。
ボーっとして学びにチャンスを逃してしまわないように、私たちがどのように感じているかのメカニズムを学び、五感を研ぎ澄ませて もっともっと意識して使えるようにしていくことが目標です!
<触覚>
アートに使う葉っぱ採集も兼ねて、もう一度紅葉山公園へ。
静かなともだちのときのように、同じ葉っぱを2枚ずつ集めてきました。
今日研ぎ澄ませていく感覚は、「触覚」です。
目隠しをして、手の「触覚」を頼りに葉っぱの特徴を探り、葉っぱのペアを当てていきます。
葉っぱの大きさ、柔らかさや厚み、鋸歯の形や葉脈を感じてみると、みんなちゃんとマッチさせることができました。
さらにレベルアップしてみようということで、次は硬貨を触って、1円から500円まで、大きい順に並べられるかチャレンジしました。
「よっしゃ!全部できた!」
「触覚」は手だけでなく、足の裏や全ての皮膚で感じることのできる感覚です。
しかし、「敏感」なところと「鈍感」なところがあります。どこが「敏感」で、どこが「鈍感」なのか、実験して確かめてみることにしました。
手の指だと、どの指を触られているか目を閉じていても簡単にわかりますが、足の指は意外と難しい!「あれ、中指かな?薬指かな?」と混乱してしまいました。
背中も、何本の指で押されているか、なかなか分かりません。
腕も、肘の内側をペンで触られたら「そこ!」と言うだけなのに、違う場所で「そこ!」と言ってしまい、「なんで〜!?」と盛り上がりました。
意外と鈍感な場所が多いことが分かりました。
最も敏感な場所は指先。次いでくちびるだそうなので、赤ちゃんは物を口に持っていって確かめるそうです。
<レーダーチャート>
ホースキャンプ中でもテーマを意識して、ボーっとしないで色々感じてみよう!と言って、五感を研ぎ澄ませてきました。
馬の手入れをしながら、えさはちゃんと食べたか、水は飲んでいるか、ボロはちゃんと出ているか、馬房の匂いはどうか、毛並みはどうか、などなど、五感を使ってお馬さんたちの健康状態を確認しました。
騎乗では、お尻からの触覚で、ドンドン跳ねてしまっていないか、バランスを取れているか感じたり、手綱で馬とつながり合図を送りました。
Virtusの方からは、気になっていた馬の五感についても聞くことができました。馬は聴覚も嗅覚も人間より鋭いそうです。また、味の好みもあるそうで、好きな草、食べない草があるそうです。
スクールに帰ってきてから、ホースキャンプで何を感じたか また付箋に書き出してみました。
そして、感じたことを五感に分類して、それぞれの感覚につき何個のことを感じたか、レーダーチャートを作成してみました。
まずいくつ見つけたか目盛に点をつけ、定規を使って点同士を繋いでいきます。
同じように、初回に紅葉山で感じたこともレーダーチャートに落とし込んでいくと、全員面積が増えており、感覚をより多く使えてきていることが分かりました!
このテーマの終わりまでに、レーダーチャートがどのように変化していくか楽しみです。
<触覚 Part2 & 少し視覚>
保護者参観Weekだったので、保護者の方たちにも協力してもらい、手の感触だけでお母さんを当てられるか実験もしてみました。
この実験では、まず腕を交差してから手を組み、友達に一本指を指してもらって、「この指動かして!」と言ってもらいます。
視覚でどの指か分かっているはずなのに、違う指が動いてしまい、視覚と手の感覚はあまり上手くつながっていないんだと発見になりました。
こちらは、紙やすりを粗い順に並び替えるチャレンジです。
「こっちの方がもっとザラザラしてるよ」などとみんなで意見を出しながら並び替え、見事粗さの番号順に並び替えることができました!
また、温度を感じる触覚についても実験をしてみました。
まず、片方の手をお湯に、もう片方を氷水にしばらくつけます。
そして、両方の手を同じ常温の水に入れてみます。
すると、同じ温度のはずなのに、全然感じる温度が違う!というおかしな結果に。
人間は、周りの温度によって感じ方が変わるそうで、冬に27度の部屋で長袖、夏に27度の部屋で半袖がちょうどいいのが納得できますね。
<私の木>
紅葉山公園で、「私の木」というネイチャーゲームに挑戦しました。
まず、目隠しをして一本の木の前に連れてきてもらいます。そして、樹皮はどんな感触か、太さはどれぐらいか、匂いはあるか、葉っぱはどんな音か、などなど、視覚以外の感覚を使ってその木をじっくり観察します。
お勧めはしませんでしたが、樹皮の味を覚えようとする子もいました。
観察して覚えられたら、元の位置に戻してもらい、感覚を頼りに同じ木を見つけます。
結果、ほぼ全員が「私の木」を探すことができました!
「苔の感じで分かった」「枝のつき方で分かった」「洗剤みたいな匂いがするから分かった」「足から感じる根っこで分かった」「皮の味で分かった」笑など、ちゃんと感覚を使って探し当てることができたようです。
<視覚>
まず、みんなの視力を検査してみました。
写真を撮り忘れましたが、保護者の方が結果を記録してくれていました(ありがとうございます!)
時間の都合上片目しか検査していませんが、全員0.9以上あり、問題ありませんでした。
次に、少しずつ変わる映像のどこが変わったかを探す「アハ体験」や、左右の絵の違いを見つける「間違い探し」などをして、集中して視覚を研ぎ澄ませていきます。
また、色覚検査もしてみました。
色が違って見える人は結構な確率でいるそうで、最近では色覚を矯正する眼鏡もあります。
昆虫の中には人間が見えない色が見えていたり、逆に色があまり見えていない動物もいます。
それぞれの生き物がどんな色の世界で生きているのか、想像してみると面白いですね。
「錯視」の画像も色々見てみました。
「下の線の方が長く見える!」「こっちのりんごの方が大きい」と意見が出る中、「違うよ、どっちも同じなんだよ」と正解を言ってしまう子が。
確かに正解ではあるのですが、感じ方は人によって違いますし、生き物によっては元から持つ機能が違うということもあります。なので、人がどう感じるかについて「間違っている」と言うことこそ、間違いなのだと話をする良い機会となりました。
まさに、自主自律のテーマですね!
こちらも暗い部屋で実験したので写真がありませんが、1階の会議室の電気を消し、さらに窓を遮光してできるだけ暗くして、「海賊の眼帯の秘密」の実験をしてみました。
人間の場合昼間に活動する動物のため、明るい場所で色を認識する錐体細胞の方が、色は認識できないけれど少しの明かりでも感知できる桿体細胞より多く、暗闇で見えるナイトビジョンは強くありません。
また、桿体細胞が働き出し、暗闇でも見えるようになるには10分程度時間がかかり、せっかく働き出しても光が入るとすぐに錐体細胞が優位に変わってしまいます。
なので、海賊が他の船を襲撃し、光のある中で戦った後に船の奥に隠してある宝を探しに暗い所に行くと、「全然見えない!」という事態が起こってしまうのです。
そのため、片目に眼帯をつけて常にナイトビジョンを使えるようにしているのだとか。
実験では、薄暗い部屋で目を慣らした後、片目を手の眼帯で覆い、隠していない方の目をライトで照らしました。そして、眼帯を取って比べてみると、眼帯をしていた方の目だとはっきり見えるのに、反対の目はあまり見えないという結果に。目の構造ってすごいですね!
Mさんが家から持ってきてくれた本に、錐体細胞と桿体細胞のことが説明されていました。
こちらは、公園での「ペン探し」の様子。この通路に2本のペンが置いてあります。歩いて通過しながら、視覚を研ぎ澄ませて探します。
見つけても、「あった!」と言ったり反応してはいけないのがルールです。
<聴覚>
聴覚は、感情を左右させてしまう感覚です。
色々な音楽を流して、どんな感情になるか感じてみました。
「楽しい気分」、「悲しい感じ」、「リラックスする」など、音でかなり気分が変わります。
この作用は、映画やドラマのBGMにも使われていますね。
また、モスキート音というヘルツ数の高い音は、若者のたむろを防ぐためによくお店の入り口付近で使われています。
本当に子供には聞こえて、大人に聞こえないのか確かめてみると、私には聞こえないのに、キッズは「うるさーい!」と聞こえていました。
感じ方が年齢で変わるなんて不思議です。
人間の耳とフクロウの耳の違いについても実験して学びました。
人間の耳は左右同じ高さについていますが、フクロウの耳は片方は目の上、もう片方はクチバシの高さについているそうです。
これは、木の上で生活するフクロウが獲物や天敵の音の出を察知したいとき、左右だけでなく上下どちらから聞こえるか知る必要があるからです。
人間の耳と、頭を傾けてフクロウと同じ位置にした耳で、音の出どころを当てる実験をしました。
また、人間の耳たぶを合わせてみると、フクロウの顔の形に。
これは、耳たぶの形は集音するのに適した形で、フクロウは顔全体を使って集音しているのです。
<コウモリとガ>
聴覚を使ったゲームとして、ほとんど視覚を使わず聴覚で物の位置を把握するコウモリの感覚を体感してみました。
コウモリは、真っ暗な洞窟の中でも壁にぶつからず飛ぶことができます。それは、高周波の音を出し、その音の波が何かにぶつかって跳ね返ってくる音を感じ取っているから。
このゲームでは、コウモリ役の子は目隠しをして、「コウモリ」と言い、獲物のガを捕まえます。
ガの子達は、「コウモリ」と言われたら必ず「ガ」と音を跳ね返さないといけません。
感覚を研ぎ澄ませてみると、聴覚だけでどこにガがいるか察知することができました。
<点字>
人間は、得る情報の8割以上を視覚から得るということですが、目の見えない人はどのように生活しているのでしょうか?
「白い杖を使っている人見たことある」
「道の黄色い凸凹のやつで歩くから、自転車置いちゃいけないんだよ」
「点字で読めるんだよ」
などと、視覚障がい者についてすでに少し知っている子がいました。
そこで、街に出て点字を探してみることに。
信号、自動販売機、建物の案内などなど、普段意識していないと気づかないところにたくさん点字がありました。
何が書いてあるか分かるか、点字の表を持っていって解読しようとしましたが、指先の感覚で凹凸の位置を判断するのは難しい!
私たちの指先の触覚はまだまだ鈍感で、点字が読めるようになるにはもっと感覚を研ぎ澄ませて練習する必要があるようです。
お札の端っこにも、触ると分かるマークがついていて、いくらのお札か分かるようになっていました。
<オノマトペ展>
テーマ外出。日本語には、感じたことを表現する「オノマトペ」がたくさん!みんなだったらどう表現する?
<1年生とPE>
1年生との合同PEの機会を使って、「コウモリとガ」と、「感覚ビンゴ」をしました。
感覚ビンゴは、ビンゴの表に書いてある形、感触、匂いなどを、1、2年生のペアで探します。
1年生は「静かなともだち」をやっているので、「見れば見るほど見えてくる。」を思い出し、じーっくり観察します。
PEなので、感覚だけでなく身体も使わないといけません!
プランクをしながら観察するチャレンジもしました!笑
<嗅覚・味覚>
みんなどれくらい嗅覚を使えるでしょうか?
目隠しをして、髪の毛や服に触らないようにしながら匂いを嗅ぎ、誰か分かるか実験をしてみました。
すると、私は何人か間違えてしまいましたが、キッズはほぼ全員お互いを匂いで認識できるという結果に。案外、普段から嗅覚を使うことができているのですね。
味覚はどうでしょうか?
目をつぶり、鼻をつまんだ状態でアメを舐め、何の味か分かるか挑戦です。
鼻をつまんでいると、「甘い」ことは分かりますが、何味かが分かりません!
次に鼻を開放してみると、「あ、ブドウの味!」というように一気に味が分かります。
最後に、アメの色を確認して、何味だったか答え合わせをしました。
味覚は、嗅覚・視覚と一緒でないと意外と分からないということを発見しました。
味覚をもっと意識して使うため、お弁当からいくつか品を選んで、「甘さ、酸っぱさ、しょっぱさ、辛さ、苦さ」のどの味がどれくらいするか、味のレーダーチャートを作ってみました。
梅干しを食べてただ「酸っぱい」だけでなく、「皮はちょっと苦いし、ずっと噛んでると甘みもしてきた」と感じたり、キウイを食べて「種のところは酸っぱくて、外側は甘い」と感じることができたり、感覚を研ぎ澄ませられてきました。
テーマ最後のふりかえりでは、「もっとご飯を味わって、食べるのを楽しみたい」と数人の子が今後の目標として挙げました。
<平和の森公園>
テーマの最後に、少し遠出して平和の森公園へ。
とても暑い日だったので、スクールを出た瞬間から「もわっとする!」と湿度を感じます。
聴診器を持っていったので、木の音、地面の音、ダンゴムシの音など聞いてみました。自分たちの心臓の音も、普段の時と走った後の音を聴き比べてみました。
木を観察したり、キノコや虫を発見したり、川の音を聞いたり、ザリガニ釣りに挑戦したり、色んなものを感じながら公園を探検していると、あっという間にランチタイム。
スクールに帰ってきてから、平和の森公園で感じたことも付箋に書き出し、レーダーチャートを作りました。
初回の紅葉山公園の時とは比べ物にならないほどの付箋の量です!
初回と今回との比較。全員かなり面積が増えており、感覚を使えるようになったことが分かります!
<プレゼンテーション>
プレゼンテーションでは、このテーマ学習で特に研ぎ澄ませられた感覚について、テーマ前はどうだったのか、どんなことをしてその感覚を研ぎ澄ませたのか、そしてどんなことができるようになったのか、具体的なエピソードを交えて1分間で語ります。
前回のプレゼンテーションでは、声の大きさやオーディエンスへの伝え方、姿勢などが課題だったので、「語る」というプレゼンスタイルは大きなチャレンジではありましたが、みんな何度も練習をして磨くことができました。
6週間(ホースキャンプを入れたら7週間)、意識して感覚を使い、みんなできるようになった実感を得られたようです。
まだまだボーっとしてしまうことはありますが、大切なのはこれから。今後も感覚を研ぎ澄ませ続けて、どんどん世界を広げていってください!
YH
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2024年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)