【探究領域】自主自律
【セントラルアイディア】多様な選択肢からの意思決定が道を拓く。
<テーマ学習> 〜レポート
<Week 1>
今回のテーマ「To Be or Not To Be」は、世界で一番有名な劇、シェイクスピアのハムレットという劇中の、一番有名なセリフからきています。
どういう意味だろう?とキッズに問いかけると、
Aさんが、「「Be」は「ある、いる」という意味だから、「そうあるべきか、そうあるべきでないか」ということなんじゃない?」と答えました。
また、Mくんは、「「To Be Continued」ってゲームで出てくるよ。「続けるか、続けないか」ということなんじゃないかな?」と閃きました。
他にも数名考えを出してくれましたが、みなとても良い発想をしていました!
実際、ハムレットの日本語版で、このセリフは「生きるか、死ぬか」「存在すべきか、存在すべきでないか」「このままでいいのか、いけないのか」など、色々な訳され方をしています。
「するのか、しないのか?」
「そういう、どちらか選択しなくてはいけない場面で悩むことってあるよね?」と問いかけると、みんな こぞって「うん、うん!」と頷きます。
そこで、今までに迷ったことを思い出して、どんなことで悩んだのか、どんな決断をしたのかをそれぞれ用紙に書き出し、4人チームでシェアをしてみることにしました。
「どんなことがあったかな〜?」
・家に帰ってゲームをするか、勉強をするか
・好きな子に告白するかどうか?
・ミラハイに出るか、出ないか?
・劇の主役をしてみるかどうか?
など、様々な迷った経験が挙がりました。
そして次に、その判断をした「決め手」はなんだったのか?ということを考えてみました。すると、
・ルールだから
・自分がやりたいから
・人の迷惑になるから
・人にどう思われるかを考えたから
・怖いから
・ムカつくから
・もったいないから
など、色々な理由が、その行動を選択する上で決め手となった「判断基準」として出てきました。
「To Be or Not To Be」では、この「判断基準」を深掘りしていきます。
次に、このテーマのセントラルアイディアは、「多様な選択肢からの意思決定が道を拓く」だと発表し、その意味を考えてみました。
特に、道を拓くの「拓く」と普段よく使う「開く」の違いに着目し、「「開く」は物理的なもの(ドアなど触れるもの)に使い、「拓く」は未来など物理的でないものに使うのではないか?」
「「拓く」は、自分で作って変えていく感じがする。」
など、良い考察が出てきました。
そして、このテーマの探究領域は何になるのだろう?と予想を聞くと、すぐさまIさんが「C.I.の内容からして、自主自律じゃない?」と当てることができました。
*C.I.:セントラルアイディア
さすが、TCS4年生ともなるとお見通しのようです!
G1:「I am Special, YOU are Special.」
C.I. :私たちはかけがえのない存在である。
G2:「感感学学」
C.I. :我感じるゆえに我あり。
G3&4:「体に栄養、心に栄養」
C.I. :栄養は生きる営み。
これまでにやってきた「自主自立」のテーマをふりかえり、どんなことを探究したかおさらいしてみると、
・G1は見た目の違い
・G2は五感での感じ方の違い
・G3は体や脳の違い
ということが挙がり、今回のテーマは 選択の仕方、つまり「考え方」が人それぞれ違い、それによって個性が生まれるということではないか?と推察することができました。
その通りで、まずは自分がどのような考え方をして行動しているのかを認識し、課題があればBetterにしていくきっかけとする。また、自分と他者の考え方は違うことを知り、それを認められるようになっていく。ということが目標です。
そのために このテーマで発揮してほしいSpiritは3つ。
①Resilience:自分の行動をふりかえるから、辛いこともある。どれだけ自分と向き合えるか。
②Ownership:人ごとではなく、いかに自分ごととして考えられるか。
③Confidence:自分と違う考え方を認められるか、信じられるかどうか。
→このテーマは、自分の失敗した行動などについて突っ込んでいくため、キツイこともあります。毎回、絶対泣く人が出るそうです。
しかし、そこで逃げずにこれらのSpiritを発揮して自分に向き合って考えることができると、とても成長できるテーマです。
なので、自分に向き合って頑張ろう!とキッズと話しました。
<Week 2>
選択を悩む代表例として知られるのが、「トロッコ問題」です。
自分が人の運命を変えられる立場になった時、何を「判断基準」にして選択するのか?ボタンを押すか押さないか、意見は半々くらいでした。
ケース2は、線路Bにいる人が親友の場合どうするか?
もし親だったら選択は変わる?と、少しシチュエーションを変えて考えてみました。
ケース3は、ボタンを押すのではなく、太った人を橋から落としてトロッコを止めるかどうか?
こうなると、自分で人を突き落とすことになるので、自分の罪になるのではないか?という意見も出てきてトロッコを止めると回答する人数は減りました。
ケース1、2、3で選択が変わったか?「判断基準」が変わったか?
似ているところ、違うところは何だったか?という風に、視点を変えながら考え、話し合いを進めました。
トロッコ問題は正解のない問題なので、絶対にこっちが正しい、こっちが間違っている、ということがありません。なので、それぞれの考えが違うことを認め、自分はこう思うけれども、他の人がどうして違う意見なのかと理解しようとする良いアクティビティとなりました。
「半パン・デイズ」
次に題材として取り上げたのは、今年度の初めに課題図書で読んだ「半パン・デイズ」です。物語の中で登場人物が迷い、葛藤しながら決断する心境や、その時の判断基準が何だったかということを検証しました。
また、「多様な選択肢」として、他にどんな選択肢があったのかということも挙げていき、自分だったらどの判断基準で、どの選択をするか?と考えてました。
第1章では、練馬に引っ越す向かいの家の子に、「練馬から海は近い」と嘘を言ってしまったことを、訂正したかったのにできなかった主人公ヒロシの心境について想像してみました。
嘘をついてしまったこと、自分が悪いと思っても素直に言えなかったこと、謝れなかったことなど、共感できるエピソードがふりかえりで多く出てきました。
また、この話し合いの後に、「親に謝れていなかったことや嘘をついて隠していたことを正直に言って謝った。」と自主的に行動した子もいました。心の中で引っかかっていたことが解決され、行動に移して良かったとスッキリした顔で報告してくれました。
第5章では、身体が不自由なタッちんを送り続けるか、送るのをもうやめるか、というヒロシの葛藤について。
第7章では、万引きをしようと誘う田原と、やらないと決めたヒロシの狭間で揺れる栗本の心境を話し合いました。
以前あったRくん、Hくん、Oくんのクレーンゲーム事件に状況が酷似しており、「やめた方がいい」と言って参加しなかったIくんと、誘いに乗ってしまったTさんの情報も本人達から出てきて、その話題で盛り上がりました。
<親からの手紙>
Harmonyクラスの中で、人を傷つけてしまう言動が見られる事象が連続して起こってしまったため、今回のテーマのために書いてもらった手紙を読む前に、「I am Special, YOU are Special」の時に書いてもらった手紙を読み直してみることにしました。
自分の名前の由来や、親からどんな子に育って欲しいと思われているか、また、親目線で見る自分の持ち味などを読み取り、発表しました。
1年生の頃を懐かしく思い出しながら読んでみると、より内容を理解できるようになっている自分たちに気づいて誇らしく思ったり、また、1年生では読み取れなかった新たな発見も得られたようです。
そして、全員で一人ずつの良いところ、持ち味や強みなどを出し合いました。お互いに良さを認め合って、それぞれの持ち味を合わせてHarmonyを発揮していこう!と、クラスの気持ちを新たにすることができました。
そして、今回のテーマで書いてもらった手紙も渡し、まずは2人ペアで読み合い、大人たちがどんな「判断基準」で行動しているのかを探ってみました。
「お父さん、お母さんって、こんなことを考えているんだ!」「初めてどういう仕事しているのか知った」という発見や、判断基準が「思っていた通り!」と納得もありながら、みんな楽しく手紙を読みました。
もっと他の人の手紙も読んでみたいという声が多かったため、終わった人同士で交換したり、「読む」の時間も使ってできるだけ多くの手紙に目を通しました。
「読む」の時間には、分かりにくい部分にスタッフの解説も入れながらしっかり読み込んで、理解度を上げました。
また、手紙を読んだ感想を「発見・疑問・もやもや」の観点でポストイットに書いて貼り出してみました。
次に、手紙から読み取った「判断基準」を書き出してみると、様々な基準で行動を選択しているのだということがわかりました。
この判断基準も参考にしながら、いよいよ自分たちの事例に入っていきます。
<自分たちの事例>
決断するのに迷ったことや悩んだこと、また、失敗しちゃったなーというエピソードを最低でも6事例集めてみました。
最初はなかなか出てこず、スタッフに助けを求める子も多かったのですが、「こんなことあったじゃない?」と話していると、「あ、そういえばこんなこともあったな」と次第に自分から過去の失敗談なども含めて出てくるようになりました。
本当だったら伏せておきたい失敗や後悔の事例を自分で出せるということは、自分に向き合うことができてきている証拠です。
どんどんエピソードを思い出し、10個以上集められたキッズも数名いました。
そして、事例毎にその時の状況と自分の選択をまとめ、その時の「判断基準」が何だったのかを考えてみました。
さらに、他の選択肢はなかったのか、「多様な選択肢」を挙げ、どうするのがベストだったのかについても考えてみました。
事例が全て出揃ったら、「判断基準」を書き出してみます。
すると、自分がどのような判断基準で行動しがちかという「傾向」が見えてきます。
「楽しいことを選んで、やるべきことを後回しにしてしまいがち」や、「全部に『自分』ってついているから、自分のことしか考えていないんじゃないか?」など、分析ができました。
そして、見えてきた現状の課題を把握し、どんな自分になっていきたいかを考えます。
今回のテーマ学習のプレゼンテーションは、その目標に向かうために、どんなことをしていくべきか、「意志」を込めたオリジナル四字熟語の発表になります。
なりたい自分になるために行動していくとき、1年生でやったテーマ学習「I am Special, YOU are Special.」の話をした際に再確認した自分の持ち味や強みが活かせないか?ということも考えて、その時に思い浮かぶ漢字を書き出してみます。
自分たちが知っている四字熟語を集め、どのような構成になっているのかも学び、音読みと訓読みも考慮しながら色々な組み合わせで考えてみました。
語呂も大切ですが、その四字熟語を見たときに自分の目標がすぐにわかることが一番重要といういうことを念頭に、作成しました。
<プレゼンテーション>
練習では、それぞれが発表した後にフィードバックを出し合い、伝わりにくかったポイント、気をつけた方がいいことなど、お互いにアドバイスをしながらプレゼンの質を磨くことができました。
みんな的確なアドバイスをし合っていて、これが今年度最後のプレゼンになりますが、この1年での成長を感じることができました!
本番では全員が堂々とオリジナル四字熟語を発表し、エピソードを含めてどんな自分になりたいか「意志」を宣言できたと思います。
プレゼンテーション後のクラスごとのリフレクションで、このテーマ全体をGood & Betterでふりかえってみました。
「内容的に満足できた」「やり遂げた感がある」「納得する四字熟語ができた」など、達成感、満足感のあるテーマとなったようです。
また、このテーマで初めて自分の傾向や課題が見えたという感想も多く、このテーマの目的である「自分と向き合う」ことができ、今後に向けて意義のある学びになったことを嬉しく思います。
ひとつ学年が上がり、より責任も増えますが、今回作った四字熟語を意識して一層活躍してくれることを応援しています!
KH
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)