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「 玉石混交」3年4年生 テーマ学習 〜レポート

 

【探究領域】万象究理
【セントラルアイディア】石ころから自然の不思議が見えてくる。

<テーマ学習> 〜レポート

「石」ってなんだろう

 

3、4年生のクラスになって初めてのテーマ。このメンバーでのテーマ学習は2年ぶりとなりますが、2年前とは経験値が違います。

テーマ名「玉石混交」と伝えただけでもアンテナは動き出し、「石」に対してのイメージもどんどん出てきました。

大きい、ちっこい、丸っこい、ゴツゴツといった形に注目した意見もあれば、「土が固まったものが石なのか」「マグマからできている」といった石の由来に関する意見も出てきました。

D君は石と背比べ?をしているらしく、石の方が大きいことがあるから「石はうざい」という何と敵対心を燃やしていたり。

姿形は違えど、石という存在は私たちの周りに溢れていて、宝石のようなレアなものもあれば、公園にだって石はあります。ホースキャンプでヴィルタスの石集めをしたこともありましたね。

そういえば、石と砂、岩は何が違うんでしょう?

 

岩は石より大きい、砂利と砂では砂の方が小さい?泥はもっと小さい、、、

などなど石を表すような言葉の意味も考えてみました。岩は分解すると「山」と「石」だから山のように大きい石なのでは!?

英語でも考えてみると、Rockの上にBoulderというサイズもあることがわかりました。話をしていると、岩だったら紅葉山公園にもあるよね!と声が上がり、石も砂もある、とのこと。そこで、紅葉山公園にいって観察してみることにしました。それぞれが「これは岩だね」「砂利に水をつけたら泥になると思う」などなど、実際に見て触りながら、感覚を話し合っていきました。

石ころ集めで盛り上がってきたので、テーマ後、帰り道や家で見つけた石を持ち寄って、語り合うことにも挑戦しました。

 

私たちの身の回りに溢れている石たち。何年も、何百年も、何千年も前からいるのでは。そんな想像をしながら、石がどこからきたのかを考えてみます。いや、そもそもここにずっとあったのか。川などで流されてきたのか。はたまた石を運んだ職人がいたのか。

江戸城の石垣の石は運んできたんだよ、と昨年度東京発見伝で学んだ四年生が教えてくれました。

そこでまず、都内を流れる多摩川の上流にあたる「御嶽」に外出して、上流域の様子を探ってみることにしました。

 

電車で片道約2時間。青梅で乗り換えてからは周りの景色に変化が出てきます。

途中では「石神前」という駅も。景色を見ていた子ども達からは「石に関係ある土地なのかな」と疑問もあがります。

じゃあこの先にある御嶽はどんなところなのかと考え始めます。

 

「御嶽駅」を出て、目の前にある橋から見下ろすと大きな岩がゴロゴロ転がる「御岳渓谷」。

電車で少し疲れていた子ども達も「すげー!」とテンションが跳ね上がります。

今回の調査、橋の上から眺めるのではなく、下に降りて、実際に石を触って調べます。ただ、見ての通り流れの早い渓流。しっかりとみんなでルールを決め、「誓約書に記名」した上で調査に取り組みました。

 

石の調査は大きく2つ

①石の大きさの調査:目立つ石を一つ決めて、そこから半径2m以内にある石を大きい順に20個探して、長さの測定と記録

②白い石の調査:ある地点に1m四方測り、その中にある白い石の個数と最大/最小のサイズの調査と記録

これをペアで調査していきました。

メジャーを使いながら、少しずつ、しっかりと調べ記録していきました。

中には大きい順に石を並べ始めるチームもあったり、見つけた白い石をまとめて置いておいたり。それぞれがどうやったらわかりやすく調べられるかを考えている様子も見られました。

 

調査しているうちに石が割れてしまった!ということもありました。
 

どうやら、落としただけで割れてしまう石もあるようです。よくみるとヒビが入っていたり、ポロポロと取れてくるような石もあることがわかります。

さらには自分の気になった石を10種類集めました。気になった、気にいったとなると、じっくり探し始める子ども達。見た目で集めてみたり、握り心地で比べてみたり。思い思いの視点で石を観察し、集めていきました。これらの石は、持ち帰ってじっくり調べていきます。

 

昼食後には、水切りにも挑戦。子ども達からやりたーい!と声が上がっていたのですが、いざやってみると「ぽちゃん」と跳ねずに沈んでしまう。。。水切りをやったことがあると自信満々の子もいたのですが、全体での最高はR君の4回。うまく跳ねないことにモヤモヤしながらもっとはねろ!と投げ込んでいました。チャレンジは続く、、、

ーーー調査報告ーーー

 

スクールに戻ってからは、持ち帰ったデータを整理して報告していきます。各ペアで石の大きさ、白い石の数の2つについて報告し合い、表にまとめました。

現地で実際に持ち上げて運んだ子もいて、「50cmとか運ぶのめっちゃ重かった!」と大きさと合わせて重さについても語っていました。

白い石については、見える範囲だけでなく、石をどかして下の方まで調べたペアもいたため、かなり大量に発見したところもあります。

「掘ってみたらよかったのか!」と他のペアの話を聞きながら、もっとこうしたいといった気持ちも出てきます。

さて、調査をさらに進めていくために、採集してきた石をもっと調べていきましょう。

 

集めた10種類の石を見た目や特徴から分類していきます

実際に触ってみたり、釘で引っ掻いてみたり。実験をしてみることで石の性質もまた見えてきます。

 

ハンマーで割ってみることにも挑戦

硬いというチャートもハンマーで割ることができました。断面を見てみると、砂岩や泥岩のようにボコボコになるものもあれば、チャートのように鋭利になるものもあります。

「中の色がちがう!」といった発見もあり、みんなどんどん石を割っていきました。

 

資料には「石灰岩は酢や塩酸をかけると泡を出して溶ける」とあったので、これも実験してみました。数滴かけるだけで泡がシュワシュワと出てきて大盛り上がり。

「チャートとか砂岩とかも泡出ないかな?」

と疑問が湧いてきたので早速実験。結果は、変化なし。本当に石灰岩だけ反応しました。

小さいかけらを塩酸に入れたままにしておいたら、放課後には溶けてなくなってしまいました。石灰岩は溶けてなくなる!という発見に繋がりました。

さまざまな結果が出揃ったところで、それぞれのふりかえりを踏まえつつ「川の下流」に視点を広げてみます。

上流と比べて下流では石の様子はどのようになるのでしょうか?

上流ではTCSに入らないくらいの大きな岩があった。でもそういう岩を街では見かけないし、下流にはないんじゃないかな。

ODD海でいった海岸では砂になっていたよね。ということは、海の方が石が小さいんじゃないかな。

海に近いってことは石灰岩が多くなるよ!だって、石灰岩は海でできた、って本に書いているの見つけたから!

それだったら、海から石がやってきたってこと!?

海から登ってきた「選ばれた石」があって、それがさらに上流までいくんじゃないかなぁ。

一人の意見を皮切りに、どんどんイメージが広がっていきました。

それぞれが考えの根拠となりそうな情報を出し合っているのもいいですね。さまざまな仮説が見えてきたところで、実際に調査に向かいます。

 

宿河原堰堤を見つつ、川沿いを下っていきます。

川を見ながら、「あれ、川の流れが全然遅い!下流の方が速いとおもったんだけどなぁ」早速予想と反する光景にアンテナが働いています。

他の仮説は合ってるかな、ドキドキしながら、広い河原に到着し、調査を始めました。

 

御岳渓谷のときと同じ調査内容なのですが、早速「石が小さい!」「大きい石なんてないよ!」と口々に呟きながら測定していきました。

なんとしても大きい石を見つけたい!と考えていたキッズは御岳渓谷で石を掘り出したチームを思い出して、石の掘り出しにも挑戦していました

白い石(石灰岩)を調査して行ってみると、こちらについては白い石はあったけれど「これ、チャートじゃない?」と気づく子が現れました。

宿河原の河原にも白い石がたくさんありますが、調べてみると石灰岩はあまり見当たりません。海に近いはずなのに、、どうしてなのでしょう。

モヤモヤしながら、ひとまず結果をまとめていきました。

じっくり時間をとって調査し、結果は持ち帰って考察に繋げます。

石の調査が終わったところで、近くに泥岩の層が露出している箇所があると地図に書いてあったので向かってみます。情報によると、約100万年前の地層なのだとか。過去には化石が見つかったことを伝えると、みんな必死に掘り始めました。

 

この日は前日が雨だったこともあり、泥岩の層の露出が少なかったためか、大きな化石の発掘には至らず。化石と思われる破片がいくつか見つかったのみでした。「また化石掘りにきたい!」と思いを呟きながら、帰路につきました。

 

スクールでは早速持ち帰ったデータを前回同様に整理しました。

そして、そのデータから言えることを書き出していきます。ポイントは「表のデータからわかること」、つまり感想や予想は含まないで話す必要があります。データをそのまま読み取って話す、簡単なようで意外と予想や個人の意見が入ってきてしまいます。

ただ、いくつかデータをうまく抜き出す意見を拾っていくうちに「そういうことか!」と気づく子が増えていきました。

一旦集めたデータから言えることを整理して、いよいよ御岳渓谷との比較、考察に繋げていきます。

 

結果はデータを見たり、比較したりしてわかること。そこから言えることやこうなんじゃないかという考察を広げていきます。

今回は「石の大きさ」と「石灰岩の数」、「川の様子」の3点について、考察をまとめてみました

・石の大きさは上流の方が大きい、でかい、長い

・石灰岩の数は下流に行くほど少なくなる

・川の様子は上流の方が流れが速い

もちろん、まだまだ仮説のままの内容も含んでいるので、その理由を埋めていくための情報は引き続きリサーチしていくことになります。

石の大きさが違うのは、川で運ばれているうちに石がぶつかって小さくなる、と考えれば繋がるんじゃないか。上流の大きな岩も流れるってこと?うーん、それはなんとも。

それっぽい話はできても、まだまだ詰めきれないところが出てきます。

石灰岩も、海底でできたはずなのに、下流に少なくて上流に多い。海でできたのに、海に石灰岩はないってことなのでしょうか。とすれば、海でできたというのはデマ?でも本に書いてある。どういうことなのでしょう。

みんなの疑問やモヤモヤが増えてきた状態で、資料の読み込み、ジオ・ジャパンの視聴に取り組みました。

 

 

日本が出来上がるまでのストーリーをみていく中で、日本はもともとユーラシア大陸の一部が分かれてできた部分と、海底からプレートの動きで押し上げられてできた部分があること、さらには火山の噴火で大きくなったことなどが見えてきました。

「そっか、海底が盛り上がってできたから、海底の石が山になっているのか」

少しずつ、彼らのモヤモヤと結果がつながってきます。

また、「石ころ地球のかけら」という本でも、プレートの動きに触れつつも、石たちがどのようにしてできて、そして旅をしていくのかが解き明かされていきました。

モヤモヤしたまま考え続けきたからこそ、少しずつ話のピースがつながっていく楽しさを感じている様子でした。

もちろん、すべての疑問が解決しているわけではないし、最新の研究でもまだわかっていないことも多くあります。そんな不思議が盛りだくさんの日本、そして地球。

その不思議に迫っていくきっかけは石ころにありました。

ここからは、クラス全体で「自然の不思議に迫るカギとなる石」を3つ選びます。もちろん、どの石にも背景があることはわかってきていますが、そこから3つに絞り込んでいきます。

クラス名の時と同様、それぞれが感じることを伝え合い、そこから他の人を巻き込んでいく必要があります。

最終的に決まった石は「チャート」「泥岩」「閃緑岩」。

これらについて、グループに分かれて「石ころのストーリー」を作り上げていきます。

石ころから見えてくる自然の不思議について、どのようなストーリーが語り紡がれていくのでしょうか。プレゼンをお楽しみに!

 

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プレゼンテーション&リフレクション

今年度初のプレゼンテーションにして、全体の一発目を飾ったのが「Harmony」のクラス。

前日まで各チームで石ころから広がるストーリーを練り込んでいきました。3つの石に決める際に、それぞれの石について特徴や成り立ちについて話し合ってきたため、作り始めの時点から話したいことは盛りだくさんでした。これも入れよう、あれも入れようと話を作っていき、チームごとにまずは話してみました。

それぞれのチームが話していく中で、見えてきた課題が「説明」に寄ってしまっていること。みんながさまざまな知識を得て、話したいことがたくさんあるのは感じるのですが、相手に伝えるプレゼンという舞台において、説明が続くだけでは聞き手が飽きてしまいます。

チャート、閃緑岩、プレート、風化など、耳馴染みのない言葉が出てくる場合は尚更です。そこで、泥岩チームが話していた「これ、何で泥岩ってわかるのかな?」という話の展開を参考にすることにしました。みんなが石に対してどんなアンテナを働かせてきたのか、そこをもう一度考え直してみることで、石から話が展開できるはず。

チームごとに2回、3回と練り直してはプレゼンしてみて、磨き上げていきました。

それぞれの想いが詰まったプレゼンテーション
 

6年生から講評をもらいました

プレゼン後は、自分たちのプレゼンを見ながら「プレゼンに対してのふりかえり」と「セントラルアイディア『石ころから自然の不思議が見えてくる。』に対してのふりかえり」をおこないました。

プレゼンに対してのふりかえり(Good&Better)

・言いたいことを伝え切ることができた

・大きい声で伝えられた

・練習してきた内容を全部出せた

・お客さんの方を見ながら話せた

などなど、今回のプレゼンに対して自信を持って臨めたという意見が多く見られました。中には「今回のプレゼンが今までの中で一番楽しかった」というふりかえりをした子もいました。

・スライドをせっかく準備したのに、隠してしまった。見せれるようにしたらよかった

・スライドに被っている立ち位置にいるのに気づいたけど、動けなかった。気づいたら、動きたい

・映像で見たら、真顔だった、もっと笑顔にしたかった

などなど、総評で6年生のTさんからのふりかえりにもあった通り、自分たちの見つけた石を見せるためにもっとスライドを有効に使えたのではという意見が多く出ました。

これは、これからのプレゼンに向けての改善点になります。

また、セントラルアイディア「石ころから自然の不思議が見えてくる。」に対しては

・今ならめちゃくちゃ共感できる

・途中から意味がわかるようになった

といったふりかえりが多く、最初は「石ってただの石でしょと思っていた」「石は綺麗なのもある、それくらいしか思ってなかった」という考えだったものが、実は旅をしてできていること、日本のでき方も解き明かすことができてしまうことなどを知り、石ころの解像度が大きく変わったようでした。

何気なく転がっている石にも、その石ができた歴史が数千年、数万年、はたまた数億年分詰まっているのです。

その少しかもしれませんが、実際に拾って、観察して、理解していったことで、子ども達にとってかけがえのない石になったのでしょう。

また、それぞれの選んだ石1つについて、石ころ新聞としてまとめることにも挑戦しました。

こちらはラミネートして、スクールに掲載する予定です。子ども達のLoveが詰まった「石ころ新聞」をぜひ、スクールにお越しの際は見てみてください。

プレゼンでも言葉にしていた通り、まだまだ不思議がいっぱい詰まっている「石ころ」。テーマが終わってからもふと足元に目を向けて、不思議な石の背景について思いを馳せていって欲しいものです。

KO


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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