特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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25年後にタイムスリップ

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
セントラルアイディア: 私たちは私たちのために生きている

[5・6年生]

何度も書き直して、いろいろなパターンの「人生楽ありゃ苦もあるさ年表」ができあがりました。これをもとに、早速、25年後の自分になりきっての「即興劇」を開始します。

私の葬儀の後、相模湾への「散骨」を済ませ、仲間の一人の経営する店に集まるというシチュエーション。私のつくった「年表」と「遺言」と、子どものつくった「年表」とを合わせて、自然にできあがりました。

まず、店に集まっているのは、実際に海に出て散骨してきたメンバー。そこへ続々、海外から帰ってきたメンバーが加わります。

「やあ、久しぶり!今どうしているの?」
「うん、ちょっと海外でスポーツ用品のビジネスやってるんだ」

シナリオがないのに、淀みなく話し始めます。

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いきなり完全に25年後の自分になりきるなんて当然できません。まずは、自分の年表で描かれた「自分」の近況報告からスタートします。劇としての演出は無視。ひとりひとりがみんなの前で、どんなふうに人生を歩んできて、今、どんなことをしているか語ります。

「私は洋服のデザイナーからスタートして今は、自分のブランドをつくって売ってるの?」
「なんていうブランド?」
「◯◯」
「ああ聞いたことあるよ。それに女優もやってるんでしょ。あのドラマ見たよ」

というような感じで、絶妙に合いの手が入りながら、それぞれが「25年後の自分」を語ってゆきます。

みんな語り終わると、次の話題に移らなければなりませんが、近況報告の後も、だらだらとした話し合いが続いてしまいます。これはまずいなあと子どもたちも気づき始めます。「劇」として面白くまとめるには「観客」にどんな「自分たち」を見せたいか考えなければなりません。こういう気持ちに自然にさせてしまうのが、即興劇の特徴です。「だらだら」しているのは「話題」にリアリティがない証拠。それを演じている側がすぐ気づけるのです。

私は将来こんな人になりたいです!とただ「夢」を語るだけでなく、本気で目指し、実現するのだ!という「思い」を観客と共有したい。それは大声で感情的に叫んだり、連呼することとは違う。即興劇でのふるまいにリアリティがあり、「ああ、確かにこうなっていそうだね」という感じを出さないといけないのです。

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なんとなくしまりがない……リアリティがない……それは「語っている内容」が浅いから……では、どんなことを語るか……

いったん劇を中止して、作戦会議です。

黒板に劇をふくらませるために必要な要素を書き出してゆきます。

昔の思い出……今の社会状況……これからどうしたいか……これまで苦労したこと……

すぐに大事な要素が出てきます。

「この劇がおふざけで終わってしまうか、それとも感動を呼ぶかの境目は、ひたすらリアリティにある。ただそのリアリティは、ああこのくらいだったら実現するよね!というような無難なリアリティじゃない。そこに理想と夢があるんだ!」

なんとなくお楽しみで劇をやっていた子どもたちがぴりっとします。おふざけの面白さから真剣勝負の面白さに子どものスイッチをチェンジさせるのが Generator の腕の見せどころであり、存在理由です。

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ただ「たなからぼたもち」で待っていれば自動的に実現しちゃう!とか、あまりにも荒唐無稽だったりとかすると、ああおふざけね!となってしまう。大胆に夢を語るのはいいが、そこに到達するまでのプロセスで出会う困難を予想し、それをいかに乗り越えたか、そのために自分の『弱さ』とどう立ち向かってきたか、そこが共感を呼ぶポイントなのです。

個の尊厳とは、自分のよいところもわるいところも丸ごと受け止めながら、逃げずに、どう生きてゆくか真面目に考え続けることです。改めて「To Be or Not To Be」で行った「宣言」や、「My Hero Story」で語った人の生き方を思い起こしてみます。

「おっちゃん、ちょっとひらめいた!」

年表に書いた事実の背後に起こったであろう「プロセス」について思いつくことがあったようです。

「劇」で演じつつ「リアリティ」と「理想」を行ったりきたりすると「ファンタジー」が生まれます。「ファンタジー」とはただのウソではありません。こうなりたいという「もうひとつ」のリアルです。そういう像を持たずして、個の尊厳を存分に発揮した人生など歩めないでしょう。まさにこれからの世の光は彼らにあり。現状に甘んじることなく、未来をたくましく切りひらいてゆくマインドの基盤がこうして耕されてゆくのです。

RI

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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