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「Borderless World」5年生 テーマ学習 〜レポート

 

【探究領域】共存共生

【セントラルアイディア】互いの人権の尊重が、自由・正義および平和の基礎となる。

<テーマ学習> 〜レポート

【人権とは何なのか?】

今回のセントラルアイディアは「互いの人権の尊重が、自由、正義、および平和の基礎となる」です。

「人権」という言葉を聞いたことはあっても、それがなんなのか?と尋ねてみるとみんな難しい顔で考え込んでいました。

そんな中から「価値」「優先順位」「意味」「理由」「値段」などの言葉が出てきました。

「モノのようにあつかわれているのを人権がないと言ったりするんじゃないかな?」

という発言とともに「人権がない」ってどういう状態なのか?を考えていくと、自然と差別の話へと展開していきました。

「アメリカでは黒人が差別されている」

「中国人だと思って差別された」

「アフリカには人権がないと思う」

どうやら人権という言葉を考えた時に、自ずと外国や外国との関係を想起するようです。

それでは「人権問題」と聞いたときにどんな問題を知っているでしょうか?

争い、LGBTQ、デモ、天皇、宗教、貧富、ホームレス、一票の格差、領土問題、結婚相手を決められないetc….

ここで出てきたものも含めて、これからさまざまな人権問題の実例を見ながら、「人権」についての学びを深めていきます。

 


人権について知るには、そのために活動している人たちに話を聞くのが一番!ということでさっそくテーマ外出を行いました。

今回訪れるのは「アムネスティ・インターナショナル・ジャパン」の東京事務所。アムネスティは人権のための活動をしている国際的な団体です。

移動中の電車の中で一人のキッズが吊り革広告を見て言いました。

「あれってなんで「女の転職」なんだろう?男の方はないのに」

 


言われてみたらたしかにそうですね。

なぜこのように女の人に限った広告があるのでしょうか?

アムネスティに到着すると、さっそく大きなテーブルに案内してもらい、理事長である阿部理恵子さんのお話をうかがうことになりました。

 

アムネスティ・インターナショナルはイギリスで作られた団体ですが、

そのきっかけになったのはポルトガルの若者が不当に逮捕されたことに対する抗議だったのだそうです。

当時、そのことに触れている新聞のコピーも見せてもらいました。

またアムネスティ・インターナショナルは冤罪被害者の救済に力を入れており、「袴田事件」という日本の冤罪事件についても話していただきました。

訪れた事務所の中には世界中から袴田さんに向けて送られてきた実際の手紙も保管されていました。

また団体としてノーベル平和賞も受賞したことがあるということで、その証書のコピーも見せていただきました。

 

アムネスティ訪問に先立ち、キッズには人権パスポートを配りました。

人権パスポートには「世界人権宣言」の条文が書かれているのですが、その成立の意義や条文に込められた思いなども伺いました。

 

阿部さんのお話の後は、世界人権宣言の条文に合わせたイラストを使い、気になった条文とイラストを組み合わせるワークショップも行いました。

イラストとともに人権に関わる条文に触れることで、人権の問題をより身近に感じることができました。

 

なぜこの条文でこのイラストなのか?

イラストに描かれていることがどういうことなのか?

世界人権宣言を読み進めていくことでわかることもきっとあるはず。

と同時に、そういった条文が示している具体的な人権問題とは何なのか?

アムネスティの訪問は、さらにいろんな疑問やもやもやを残したものでした。

というわけで、実際にどういう人権問題があるのかをリサーチしていくことになりました。

 

 

【映画で見る日本国内の人権問題】

まずは日本国内にある人権問題の一例として「マイ・スモール・ランド」という映画を観賞しました。

 

幼いころから長く日本で暮らしている高校生の「さっちゃん」は、日本にいるのが当たり前の生活をしているにも関わらず、実は「クルド人」であり、難民申請を却下されたことでアルバイトも大学進学もできなくなり、普通の生活することすら困難になっていきます。

さっちゃんは周りの子と同じように勉強したり、恋をしたりしたいだけなのに・・・

見慣れているハッピーエンドにおさまらないエンディングに「えーここで終わり?」「どうなるの?」の声。

いったいこの映画のどこに「人権問題」があるのか?

鑑賞後に質問してみると、けっこうさまざまな人権問題が見えました。

作品の大きなテーマとなっている「難民問題」「入管法の問題」だけにとどまらず、

・「未来の夫」を決められているということ、
・小学校のころは学校でいじめられていたということ、
・コンビニ客のおばさんに見た目だけで外国人扱いされること、
・同じトレーナーを買いに行こうと友人に同調圧力をかけられること、などなど、

キッズそれぞれから見えた人権問題はどれもなるほどと思わせてくれるものでした。

 

【国外の難民問題】

また、Rくんのお母さん(Yさん)が、世界で難民に関わる仕事をなさっているということで、日本以外の「難民問題」について話してくださるということで、お招きすることになりました。

先日もお仕事でバングラデシュを訪れたそう。ミャンマー(ビルマ)で迫害されて難民となっているロヒンギャ族の実情についてお話してくださいました。

 

「難民キャンプ」という言葉は聞いたことがあっても、それが実際にどういうところなのかはなかなか想像できません。

実際に難民キャンプを訪れたYさんのお話は、自分たちの想像していたものとは違っていて、また言語や宗教の問題が複雑に絡み合った問題であることが見えてきました。

最後にYさんの所属する会社が現地で行なっている難民支援についても伺い、果たして私たち自身ができることは何があるだろうということを考えました。

「募金をする」「服を贈る」というすぐにできそうなことから、

・「ボランティアを増やす」「「余った食品を送る」などの仕組み作りの話、さらには

・「総理大臣に会って話をする」「国連に話に行く」などの大きな話もでてきました。

何ができるかを考えることは、最終的なプレゼンテーションにも繋がってきます。

 

【人権問題について調べる】

新聞やネットニュースをのぞけば、必ず人権に関わるニュースがあります。

たとえばある日の朝刊には・・・

「性別変更後の子認めず」という見出しのLGBTQに関わる問題。

「ALS嘱託殺人医師に懲役23年」という見出しの「安楽死」に関わる問題。

そして「教員が水滴チェック」という見出しの学校の修学旅行における子どもの権利に関わる問題など。

見ようとすればいろんなところに人権問題が隠されていることがわかったところで、キッズそれぞれが気になる人権問題について調べてきて、それを発表してもらうことにしました。

各自が興味を持って調べた内容は、こちら。

LGBTQ/誹謗中傷/天皇/子どもの人権/死刑/冤罪/人種差別

それぞれに皆と共有してもらい、その後、スタッフのYIから「技能実習制度」の問題、インターンのFさんから「地域格差」についてプレゼンをしました。

 

 

【漫才という形式へと落とし込む】

Borderless Worldのプレゼンテーションは、漫才で人権問題を熱く語るというものです。

昨年のプレゼンでそれを知っていたG5キッズの半数はテーマの序盤からそのことに高いモチベーションを持っていました。

自分たちが学んできたさまざまな人権問題を、どのように漫才の中に落とし込んでいくか?

まずはプロのお笑い芸人の漫才を一緒に観賞してみるところから始めました。

 

そもそもコントと漫才の違いがわからなかったキッズもいたところから、

漫才の特徴を考えました。

・ボケとツッコミの2人で、立って話している
・何かしらのテーマがあって、それについて進めている
・同じようなボケを繰り返すだけじゃなく、展開がある

などなど、いろいろな特徴があることがわかってきました。

そして今回は7人を2、2、3人に分け、まずは何について語るかを決めます。

自分たちが学んできた中で、とくに語りたい人権問題は何か?

実際に話していく中で、やりたいことがかぶったチームもありましたが、だったらこっちはこれをやろうかな、という感じでわりとすんなり収まりました。

Aチーム・・・誹謗中傷

Bチーム・・・死刑と冤罪

Cチーム・・・子どもの人権

ということでさっそく扱うテーマが決まり、台本を作り始めます。

その際にInquiry Keysを使って考えていきました。

 

 

そして最終週になり、なんとインフルエンザ発症の子が!

プレゼンの日も参加できないことが確定してしまったため、急遽チームを移籍したり、新しいコンビを組んだりと急な対応に追われました。

プレゼンまで残り4日!

1組のコンビはほとんど1から台本を書き直していくことになり、一人抜けたチームも3人で考えていた台本を2人用に書き換え。

最後の三日間は、他の授業も使わせてもらい、ひたすら台本を考え、暗記し、練習・・・

スタッフが見て、一緒にブラッシュアップしていきながら、あっという間に本番を迎えました。

そうして完成した漫才がこちらです↓↓↓
(*HPでは映像を視聴していただけず申し訳ありません)

 

 

【自由、正義、そして平和とは?〜ふりかえり〜】

今回はキッズとスタッフのみだった会場ですが、どのコンビの漫才もたくさんの笑いが起こっていました!

・「いちはやくー」とみんなが答えていた

・冒頭のれんの条文暗記とあみのツッコミに沸いた

・そして死刑をめぐる激しい掛け合いがすごかった

本人たちにはそれぞれ「あそこがあまりウケなかった」「あそこを間違えた」などの反省があったものの、こんな短期間でしっかり漫才ができていました。

プレゼン後のふりかえりでは、【自由】、【正義】、【平和】の3つの言葉から一つを選んで、今回の学びをふりかえってもらいました。

Hくん・・・【自由】
人権に一番つながっている。難民、奴隷のところでとくに感じた。

Aさん・・・【平和】(自由と迷った)
世界が平和じゃないからこそ人権問題が起こる。

Rくん・・・【自由】
誹謗中傷を扱ったせいもあるし、自由権は憲法で認められている。北朝鮮はいろいろ自由に制限があるが、誹謗中傷はあまりなさそう。自由があるからこそ誹謗中傷のような問題が生まれる。自由は必要だけど、使い方を間違えると悪い方に転がってしまう。

Yさん・・・【正義】
黒人白人の差別は、どちらもどちらかを下に見ている。片方から見たら、自分たちのためにやっている。正義がぶつかりあっている。

Kさん・・・【正義】
死刑をしたほうがいいのか、どうなのか。日本も終身刑があればいいのに。何もしてない人にとっての正義を優先すべきなのか、罪を犯した人の人権を考えるべきなのか、悩む。

Hさん・・・【平和】虐待とか児童労働とか、嫌な思いをさせたりとか殺しちゃってるから、そういう子どものためにも平和が必要。

それぞれが人権問題について深く考え、たくさん議論を重ねた6週間でした。

 

YII


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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