【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】互いの人権の尊重が、自由・正義および平和の基礎となる。
<テーマ学習> 〜概要
2023年は長引くウクライナでの戦争に加え、パレスチナとイスラエルの間での紛争が再び激化し、日々多くの尊い命が奪われてしまいました。亡くなった人たちだけでなく、生き残った人たちも住居を奪われ、大切な人を失い、職業や教育の機会、情報や適切なサービスを受ける機会を奪われることとなりました。
また紛争地域からやむなく国外に避難する人々は、避難した先々の国で「難民問題」に直面します。自分の国にいられなくなった人々が、逃れた先でも不当に扱われたり、その国の国民との間で衝突を起こしてしまうという問題は、ヨーロッパを中心に大きな問題になっています。
日本で難民の問題が大きく取り上げられていないように見えるのは、日本が難民と無関係だからではありません。日本で難民が大きな社会問題にならないのは、日本という国の政策として難民を積極的に受け入れていないからです。しかし、そういった政策は国連の報告書でも指摘され、国際的に批判されています。難民を入れなければそれで済むというのは、グローバル化が進む現代においては通じない理屈になっています。
このような問題はすべて「人権」という言葉に集約され、その観点で世界を見渡したとき、すでにそこに「Border(境界線)」は存在しません。
上記の難民問題だけでなく、たとえば日々口にする食材、チョコレートやコーヒーがどのように生産され輸入されているのか、という部分にも人権は大いに関わってきます。また身につける衣類や自分たちの住居に使われている木材も海外から来たものが多く含まれ、逆に日常生活から出てくるゴミは海外まで運ばれて処理されています。世界中の労働や政治情勢が私たちの日常生活に関係しているからこそ、そこに関わっている人権について目を向ける責任があります。
また国外だけの問題ではなく、日本国内にも人権に関わるたくさんの問題があります。労働環境の問題や貧困の問題、性別や出生による差別の問題、あるいは2023年は芸能人が関わる性加害の問題も大きくメディアで取り上げられました。2024年の年始に起こった能登半島地震に関連しても、被災地での人権が問われています。その意味では、国と国の間にある「Border」がなくなっても、私たち一人一人の間にはさまざまな「Border」が存在すると言えるかもしれません。
このテーマでは「人権」というものを軸に世界や日本国内の情報に触れ、さまざまな状況に置かれた人々の現実を知るとともに、これから自分たちの人生を生きる上でどういうことが必要かを考えていきます。まずは「世界人権宣言」を読みながら、人権を考える切り口を知っていきます。幸いなことに、私たちには世界中で起こっていることを知るためのさまざまな手段があります。インターネットの世界に入っていけば、日本語で書かれたたくさんの情報に触れることができます。言葉で書かれた記事だけでなく、映像や写真、または音声コンテンツなども活用しながら、さまざまな情報を集約し、噛み砕き、自分の言葉で伝えることを目指します。
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(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)