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「東京発見伝」3年生 テーマ学習 〜レポート

 

【探究領域】時空因縁
【セントラルアイディア】東京には都市の機能と魅力が密になっている。

 

<テーマ学習> 〜レポート

<東京といえば・・・>

「次のテーマって何?」「何やるの?」

テーマ学習の初回は、子どもたちのワクワク感が伝わってきます。

今回のテーマ学習の探究領域は「時空因縁」。

「時空因縁って、外を歩いて探検するイメージ。」

共通点が見えたところで、相違点も考えてみます。

「公園で気になるものを探したのが『「紅葉山」見っけ隊』。」

「『ココドコ』は、中野のまちを歩いていろんなとこ発見した。」

「ブロードウェイとか、桃園第二小とか、谷戸小とか。」

「警察のマークをプレゼンで話した。」

「マップ作った!」

ほかの人の話を聞くとそれぞれの記憶が蘇り、つながっていきます。

そうなると、今回3年生ではどうなるのか。先輩たちがどんなテーマをやっていたかを頼りに思い出し、「『東京発見伝』だ!」と瞬時に出てきました。

東京のイメージがどんどん出てきます。

第一声は、「都会でしょ」との言葉。人がいっぱい、マンションや建物、ビルが両脇にあって、車もいっぱい。都会じゃないところは?と聞くと、「田舎」と言います。

「でも、東京は、田舎と都会の半分だと思う。東京は大自然がいっぱいあるし。」

「コロナがなくなってきたから、公園に行けて開放感がある。」

公園は自然がいっぱい。大きな公園は大自然。公園に外出できることで「田舎」を感じることもできる。そんなイメージや認識であるようです。

一方で、「玉石混交」でのフィールドワーク先の奥多摩も、ムササビツアーで行った高尾山も東京であることは知っています。

「東京って何ていったらいいんだろう、中は都会で外は田舎って感じ。」

地理的な把握もなんとなくできている模様。でも、「お台場って東京かな?」「東京ディズニーランドは東京だけど、ディズニーシーは大阪?」「よみうりランドは東京だよ。」と、行ったことある場所の所在はちょっと曖昧。

「東京って首都。首都ってトップってこと。東京のトップは東京。」

「東京タワーと東京スカイツリーは東京にしかないでしょ。」

「東京といえばって、考えてみてもいいんじゃない?玉石のときにもやったし。」

実際には、そのような発問はなかったようなのですが、盛り上がってきたので「東京といえば何?」と聞いていくと、

「東京は、たいやきがおいしい。」

「私は、たこ焼きだと思う。」「たこ焼きって大阪じゃない?」

「大阪はお味噌汁。」

「マックがおいしい。」

「生卵かけたご飯。卵かけご飯!おいしいお店が中野にあるし。」

「アメリカじゃ食べないってお母さんが言ってたから、日本といえばになっちゃうかも。」

3年生9人の子どもたちの先行知識。行ったことのある場所、聞いたことのある言葉、食べたことのあるもの、それがどう東京と絡んでくるのか一生懸命繋げていこうと考えている様子です。その中で、疑問に思っていること、知りたいことを書き出してみました。

 

モヤモヤが増えるほど、テーマ学習へのワクワク感は増してきます。ここから、どう知識が再構築され、点と点が結びついていくのか楽しみです。


<東京の中心はどこ?>

「東京は中が都会で外が田舎。」

それなら、東京の真ん中はどこなんだろう?

まずは、自分の目で東京全体の様子を見てみることにしました。

机上で地図や写真、動画を見るのと、実際に足を運んで景色を眺めるのとでは、やはり温度差が異なります。そして、行き先や現在地を地図で確認することの必要性も感じたため、ココドコのふりかえりも兼ねて、コンパス(方位磁石)片手に新宿都庁展望室へ出かけました。

  

これから行く新宿の都庁はどこにあるのか。目で確かめるべく、島忠の駐車場へ。

方角は?

南。北。西?と様々。

見ればコンパスの使い方がバラバラ。赤いところと北を合わせて、もう一度。

「あ、東南だ。」
 

高層ビルが集中しているあの場所(新宿)へ、地下鉄に乗って向かいますよー。

 

地下に入ってしまうと方角がわからなくなりがち。

どこに向かえばいいのか、地図で確認します。

大人に連れて行かれるのではなく、自ら進む方向や目的地を把握していけるかどうか。今回伸ばしていきたいスピリットでありスキルであります。

向かう先がわかると、数人がどんどん先に行ってしまい、「待った!」をかけました。フィールドワークは、自分の足で歩くからこそ見えてくるものがあります。目的地に行くことが目的になってしまうと、とたんに見えるものが激減してしまいます。

たわいないおしゃべりをしながらスタッフの後をただ歩く「歩行」になるのか、学びのアンテナを立てて歩く「フィールドワーク」になるか。この先、2回の外出でも大きな課題となっていきます。

見渡せば、「全国の観光パンフレットあります」の看板。

「行ってみたい。」

帰りに寄ることになりました。

「あの人は警察?」
「きっとそうだよ。」

ところどころに立っている人がいることに気づき、自分たちで納得。でも、本当は聞いてみないとわかりません。あとでネットで調べるより、直接本人に聞いてみればすぐにわかります。「チャンスは今だけ」と、背中を押してみます。

「あの、警察の人ですか。」
「いえ、警備員ですよ。」

警察官ではありませんでした。インタビューできればわかることも広がります。

45階の展望室へ。
 

ボランティアガイドさんがあちこちに。疑問を聞ける大チャンス!

「あの森がいっぱいあって、緑のところってなんですか?」
「代々木公園だよ。茶色い屋根のところは明治神宮ですよ。」

 

「中野発見!サンプラザがあった!」
「どこ?」
「あのサンドイッチみたいな形してる建物だよ。」

「島忠は見えないね。」

確かに島忠の駐車場からも都庁の建物は見えませんでした。サンプラザからなら見えるのかも。

 

「なんだこれ?」

帰りがけ、ひとつのモニターに引き寄せられます。

「東京の宣伝かな。」
「ねぇ、金色のルービックキューブすごくない?」

モニターの後ろのオブジェに着目。よく見ると金色のキューブはいくつも上まで続いています。

都庁駅内のトイレ前にも置物が。学びのアンテナ、働いてます!

~~~~~~
東京全体を見てどう感じたのか、振り返って意見を出し合います。

 

「日本人より外国人の方が多かった。人がいっぱいいるところだと思った。」

周囲の人の観察。いい視点です。

「観光客がいっぱいだと思った。」

「旅行じゃなくて、写真撮るのが好きな人が来てたのかもしれないよ。」

「ピアノを弾きに遊びに来ていたかも。」

外国人観光客と見られる人、大きなカメラを構えている人、誰でも自由に弾けるピアノの列に並んでいる人、ボランティアの人、お店の人と、人に着目するとたくさんの人がいました。

「建物が多くて道路が見えない。」

「普通の道路が見えない。高速は見えた。」

「ビルがいっぱいあって都会って思った。」

「住宅街もあった。ビルと住宅地と木の3種類だった。」

「モード学園、三角のビル、形が箱じゃないと目立つ。」

サンプラザもサンドイッチの形をしていたことで、遠く小さくても見つけることができました。

人、建物、見た目からだけでも違いが見えてきます。

 

「やっぱり都会と田舎が半分ずつって感じだった。」

まちの様子を鳥瞰してみると、気になるのは、目立つ建物と森になっている部分。

「あの森は、明治神宮なんだって。」
「え、代々木公園って言ってたよ。」

グーグルマップで確認すると、明治神宮と代々木公園はくっついて緑の一帯になっていることがわかります。

 

森があれば田舎なのか。「読む」の時間に扱っている『半パンデイズ』でも、都会と田舎を話題になったと言います。言葉の意味なら、辞書にはどう書いてあるのか、確かめてみました。

 
「行が変わるとどこ読めばいいの?」

ちょうど下段に改行されていた場所に書かれていたことで辞書の読み方に触れることができました。

「森があれば田舎」という認識が変わるきっかけとなり、そして、この「森」が人工的に作られた自然であることはもう少し後で知ることになります。

ここで着目していったのは、都会の類語として出てきた「都市」という言葉。

「東京都の都っていうのは知ってたけど、都市って聞いたことなかったから何?って思ってたんだ。」

今回のテーマ学習は、

「東京には都市の機能と魅力が密になっている。」をセントラルアイディアにしています。

「このテーマのセントラルアイディアは何?」という質問を受け、提示はしていました。

この質問に対して、逆に「セントラルアイディアって何?」と質問してみると、

「テーマで学んでいくこと。」

「仮説って聞いたことがある。」

なかなか的を射た発言で、さすがテーマ学習14回目だけのことはあります。

さぁ、ここで出合うことのできた「都市」という言葉。セントラルアイディアを提示したときには、まちのことではないかという仮説は出ていました。どんなまちを都市というのか、踏み込んでいけば見えてきそうです。

とはいっても、商業、工業、政治、経済、文化と、よくわからない言葉が連続で出現。

「『半パンデイズ』では、田舎でもデパートがあって都会って話になった。」

商業は物を売ること、工業が物をつくることなら、理解できます。でも、政治・経済って?

ここは映像資料で確かめてみます。

 

東京の中心部?!

「東京の真ん中」についての情報が得られることにつながっていきました。

政治や行政の重要な機関がおかれ、日本銀行、東京証券取引所などが経済の中心地となっている場所がいわゆる「都心」であり、日本の中枢となるから「首都」なのであります。

流れる音声の内容は難しくても、出てくる写真からわかることを読み取っていきます。

「スクランブル交差点!」
「何それ?」
「どうしてスクランブル?」

「これ(国会議事堂)、見たことあるよ。」
「岸田さん?」

「新宿は副都心なんだ。」

「池袋知ってる。」

国会議事堂は見たことがあっても、「省庁」は耳慣れない言葉でつながっていきません。岸田首相の名前が出てきたので、首相官邸きっずのホームページを見て、省庁の名称とその役割を読んでいきました。

 

日本のことを決める会議や、暮らしやすくするにはどうしたらいいか問題解決する仕事が、ここ東京で行われているという、東京という場の機能について触れていきました。内容について、もっと詳しく探っていくのは、高学年になってからになります。ちょうど今、5・6年生たちがテーマ学習「治の力」に取り組んでいるところであります。

都庁は新宿、副都心。では、都心はどんなところなのか。実際に足を運んでみることに。

 

~~~~~~

<東京の特徴とは?>

今回は一日かけての外出。

その目的を確認するために出発前にプリントで確認しました。

 

新中野から東京メトロ丸の内線に乗って国会議事堂駅へ移動。

駅から地上に出るなり、首相官邸が見えてきますが、そこには独特な雰囲気があります。

「警察官がいっぱいいるけど何してるんだろう?」

「バスみたいな大きい車があるのはなんでなんだろう?」

スタッフとそんな疑問を話しているので、なら聞いてみたらいいんじゃない?と提案。

さっそく近くにいる警察官にインタビューを試みます。

 

どうやら首相官邸を守っていることはわかった様子。

尋ねることに必死で、何を聞いていいのやらおろおろしているようでした。

首相官邸の周りには高い木と塀で守られていて、監視カメラもたくさん。近づいても中の様子を見ることはできませんでした。

首相官邸から坂を下っていって、官庁が立ち並ぶ霞ヶ関へと歩いていきます。

 

最初に見えてきた「特許庁」と看板のかかったビル。
 

「特許ってなんだろう?何をしているところなんだろう?」

気になって外で警備をしていた方にインタビューをしてみますが、仕事中で忙しいようで… 
 

詳しいことは中で聞いてくださいと言われてしまいました。

みんなでまとまってインタビューに行ったのもよくなかったのかも…

「お仕事の邪魔にならないようにしないとね」とインタビューをするときの学びにもなりました。

 

「普通のビルと雰囲気が違う」
「「愛してミルク」って書いてある。どこの省庁?」
「食べ物のことだから、農林水産省だよ。」

文部科学省、経済産業省、国土交通省、農林水産省…

前日の学習で覚えた省庁が次から次へと続いていきます。

 

そしてその並びに見えてきたのが、他の建物とはまるで違う建物。

これは昔の庁舎を復元した旧法務省。ここで中の展示室を見学し、法務省の歴史についての説明を聞きました。

 

昼食は日本水準原点のある公園で。

日本の海水面の高さを決める基準がこの場所になっています。

海水面の高さを決める基準も東京にある。ということは?


昼食後は国会議事堂と、その隣の国会図書館を見ながら永田町駅へ。
 

有楽町線に乗って有楽町駅に移動しました。

 

有楽町駅を出ると東京国際フォーラムの中でした。

さまざまな会議や催し物を行うこの施設にも、いろいろな発見が。

セキュリティロボット、雷門のレプリカ。

実は昔の都庁はここにあったという情報や江戸城を築城した太田道灌の説明がありました。

 

東京駅の駅舎も見ながら日本橋に向けて歩いていきました。

「旧法務省の建物に似てる」
「ていうことはこれも昔の復元なの?」

「外国人がいっぱいいて、写真撮ってる」

「駅なのにホテルもあるの?」

 

日本橋に行く途中の道沿いには新しいビルを作っている場所や、

古いビルが閉められたり、解体している場所がたくさんありました。

「ここに閉館ってなってる」
「ビルの中が真っ暗だけど中にショベルカーがあるよ」

「こんな大きいビルをどうやって壊していくんだろう?」
 

「そんなに古くなさそうなのになんで壊しちゃうんだろう?」

  

たしかに高層ビルが解体されていくのってなかなか想像つかないですよね。

一方でどんどん新しいビルが建っていくために古いものは壊されているはず。

 

そして日本橋に到着しました。

1911年に完成した石造の橋には目を惹く装飾があります。

 

「すごいこのドラゴン、リアルだな」

橋の真ん中には日本の道路の起点となる「道路元標」があります。

アーチの形をしていると聞いて上から覗き込んでいたキッズも。見えたかな?
 

日本橋から地下鉄の駅へと歩いていると、見慣れない乗り物を発見。
 

なんだろう?と気になったのでこれも話しかけて聞いてみることに。
 

「ロデム」という観光用に開発された乗り物だということでした。

これも東京だけの特徴なんでしょうか?

東京メトロ日本橋駅の改札の近くにはステンドグラスのパブリックアートがありました。(「日本橋南詰盛況乃園」)

パブリックアートとは誰でも見られる街の中のアート作品。

この作品は昔と今の日本橋付近の風景が同時に見られる絵になっています。

 

いくらでも眺めていられそうですが、帰る時間になってしまいました。

 

翌日の学習では、さっそく一日外出してきたことをワークシートを使ってふりかえりました。

外出の目的と経路、行ったところ、聞いたことなどを一緒にまとめながら、東京の特徴とは何か。見たものから、見えないものを引き出すのは、思考として簡単なことではありません。

彼らの中で、見つけた点と点をどうつなげていけるか、今後の学びのポイントとなっていきます。

~~~~~~

<情報を取り入れ消化していく>

霞ヶ関周辺、東京駅周辺を歩き、自分が思った特徴を出していきます。

・人がどこからでも入れるように、地下鉄に入れる場所がいくつもある
・路線が多い、駅が多い
・高いビルが多い
・ビルが集まってる

それはどうしてなのか、その役割について問いかけてみます。

「人が多いから。」
「人がたくさん集まってくるから。」

歩いている人が多くいたわけではありませんが、行きの電車の中では仕事に行く感じの人たちでいっぱいでした。建物の中には多くの人がいることは想像できます。

・代表の人が会議をすることが多いから警備ががんじょう

こうした特徴は、さらに人が増える理由になりますね。

・昔のものを残す

旧法務省、桜田門など、昔からのものがあり、東京駅は復元されて建てられていました。また、ステンドグラス「日本橋南詰盛況乃園」から、昔と今と未来が描かれていることからも、こうした時空を行き来しているのが東京の特徴ではないかと。

・建物と植物どっちもある

お昼を食べたところは国会前庭でした。公園はなくてもビルの上を見ると木が植えてられていたり、道路にも。でも、東京だけでもなさそうな。もっと情報がほしいところです。

・景色が見やすい

国会前庭から、ビルが固まって建てられている様子を発見。「ビルが密になってる!」といった声も出てきました。坂の上からの景色だけでなく、都庁展望室など、ビルの高いところからも景色が見える、ガラス貼りになっているビルが多いという点をつなげて特徴ではないかと、

・日本橋はこだわってつくっている

これだと、特徴にはならないのですが、ここからほかの人の意見で特徴を出していきます。

「(レプリカの)雷門もこだわってつくってる。」
「それなら、パブリックアートもそうでしょ。」

こだわってつくっている物が多いという仮説が出てきました。

 

こんな疑問も。

「岸田さんが東京にいるって特徴かな?大阪とかでもいいのになんで東京にしたんだ?」

徳川家康が江戸にやってきたことから始まった都市開発。江戸幕府から明治政府へ移行しても、日本のことを決める場所が同じ場所であったこと、そんな歴史的背景に触れるきっかけになりました。実は、外出前にも触れていて、旧法務省でも説明はありました。折に触れて同じ話をすることで、見たもの、感じたことと一致していくのでしょう。

「まだ使えそうなのに壊している建物があるんだろう。」

昔を残すものもあれば、復元するもの、古くないのに壊すもの、工事中で作られ途中の建物が多いことも目の当たりにしてきました。これはモヤモヤします。

1回目のフィールドワークで考え出した特徴がその通りなのか、検証するためにも2度目のフィールドワークが必要になります。ただし、行けるのはあと1回。どこに出向いても発見はあり、特徴を見い出すことはできます。大切なのは、「行ってみたい!」と思う気持ち。

その思いを膨らませるために、学習の中に以下の3つを取り入れました。

・地図帳から、他県と東京の違いを見つける
・まちの人に、東京の特徴を尋ねてみる
・選択肢の中から、フィールドワークに相応しいと思う場所を選ぶ

 
地図の見方や地図記号については「ココドコ」で学習済み。振り返りながら読み方を確認し、他県と比べることで東京の特徴を探してみることに。3人組になって同じページを見て、思ったことを共有していきました。

「ほかの県より小さいかも。」

地図帳には、いちばん面積が小さいのかがわかる統計資料のページがあることを伝えます。

 
「香川と大阪の方が小さいんだ。」

「密度って書いてある!」

東京が人口密度の高さが1位であることを発見。下水道普及率も1位。下水が普及していることが当たり前ではないことがわかります。

「北海道は密度が少ないから平和って感じがする。」

「密といえば、東京はビルが密集している。」

仮説だったことが、確証へ変わります。

 

「ヴィルタス*はどこだ?」静岡県と比べてみます。
(*フィルタス… TCSホースキャンプ地@御殿場)

「東京にも山はあるのに温泉がないよ。」

「東京って市街地が多くて果樹園が少ない。」

「あれ、読売ランドって東京じゃない!」

他県よりも人が多いこと、ビルが多く市街地が多いことがはっきりとしてきました。

そして、街頭インタビューに挑戦。

前回の外出でインタビューできたのは4人。しかもスタッフに促されてのこと。

インタビューは、Communication skills を磨くチャンス。

話す力も、聞く・反応する力も求められます。どちらかと言えば後者の方が大事。

なぜ自分から行こうとしないのか、促されても足が進まないのか、その理由を聞いてみると、「恥ずかしいから」「メモするのに気を取られていたから」「緊張しちゃったから」といいます。

インタビューのよさはその場で聞けること、返してもらえたことをその場で確認したり、さらなる疑問を投げかけ、会話ができること。ただ、突然のアポ無しインタビューは断られても当然。相手の都合や様子を見て伺う行為は、相手優先にしないとできません。

特許庁でのインタビューの失敗も同じことが原因であったことを振り返りました。

「今、質問してもいいですか?」

「今、東京のことを学習しているのですが、・・」

「お時間いただきありがとうございます。」

相手視点で考えないとこうした言葉は出てきません。今回インタビューできた4人にもお礼の言葉はありませんでした。

3年生たちにとっては逃げずに向き合ういいチャンス。

人が行き交う中野駅北口改札前の広場に行ってみました。

 
最初のうちはウロウロ。周りの人も「どうしたんだ?」といった様子ではありましたが、本人たちからしたら、「応えてくれそうな人はいないかな?」と探っている様子。

椅子に座って休んでいる人、待ち合わせをしてる感じの人、ティッシュを配っている人など、観察して、いざチャレンジ!

聞き手と書記、バディを組んで挑みました。

 

東京の特徴と思うこと、行ってみるといい場所を聞いてみました。結果、意外にも重なる回答が。

・人が多いのが特徴。スクランブル交差点は人がいっぱいいる。

・東京スカイツリー。東京のシンボルだから。

・どこでもいい

・浅草。昔の日本を体験できる。

 
一度、話しかけることができ、成功体験を得られると、インタビューが楽しくなってきた模様です。

 
ここ中野サンプラザは、あと9日で閉館に。50年で老朽化。立て直しが行われます。上に上がって外の景色を見てみると、

「あ、都庁があった。」
「工事中だ。」
「工事のあとは、きれいになるのかな。」

この光景も東京と特徴といえそうです。

 

以上のことを踏まえて、いなびーと私からフィールドワーク先の候補地を紹介しました。

①人の多いスクランブル交差点
②都庁から見たとき森に見えた明治神宮
③海に面している東京。さまざまな人が出かけ、やってくる羽田空港
④昔と今、アメリカと飴、多くの人がまざっているアメヤ横丁
⑤銀座で新しい建物の特徴を見る
⑥アートの発信地、上野
⑦ゆりかもめに乗って埋立地を観察

 

子どもたちが選んだものは、①〜⑤の5カ所でした。

人気があったのは、アメ横とスクランブル交差点。地図帳、街頭インタビュー、そして仮説から見つけた「人が多い」という特徴を実際に味わってみたいという気持ちが高まったようです。③は場所が遠いこと、行きたい理由が外国人に会って話しかけたいということだったので、ほかでもできることから、外すことに。

具体的にどんなルートになるか、3つのルートを紹介。

 

新しい建物の特徴は銀座でなく渋谷でも観察できることを伝えると、3つ目のルートに満場一致。自分たちで決めたことで行き先がはっきりし、ワクワク感も募ってきました。

~~~~~~

<東京の特徴を味わう>

さて、いよいよ2回目のフィールドワークです。

1回目のときに考えた特徴を確認しつつ、東京の魅力を発見していきます。

まずは中野駅からJRで原宿駅へ。

都庁展望台で見たときから気になっていた「大きい森」明治神宮を訪れます。

 

原宿駅を出るとさっそく目につく灯篭、そして大鳥居。

大鳥居の向こうには森の中に一本の砂利道が続いています。

 

と、鳥居に近づいてみると、なぜか柵に囲まれています。
 

注意書きを読んでみたところ、誰かが鳥居に傷をつけたために柵が設けられたということでした。

そんなことがなければ触ることもできたのに…

人がたくさん行き来すると、こういうことも起こるんですね。

 

大鳥居をくぐって進んでいくと、東京とは思えない緑が広がっています。
 

たくさんの外国人がいますが、道幅が広いので「密」な感じがしませんね。

「この木々がみんな全国から送られてきたもんなんだよね」

事前に伝えていたことを確認しながら「人工の森」を体感しました。

ぐんぐん歩いて進んでいくと見慣れない光景が現れました。

 

「これなんだかわかる?」
「あ、「読む」ででてきた油揚が入ってたやつじゃない?」

去年「読む」* であつかった「白いぼうし」で出てきた米俵だと考えたようですが、これは酒樽。日本全国から納められた酒樽が並べられています。
*「読む」… TCS日本語クラスの一つ

木々だけでなく、こういうものも全国から集められてきているんですね。

本殿まで来ると、平日でもたくさんの観光客が写真を撮ったりしていますが、この場所が正月になると日本で最多の初詣客で溢れかえることを想像してみます。

 

帰りは西参道を通って参宮橋方面へと抜けます。

森を抜けると、目の前に新宿の高層ビル群がぱっと目に飛び込んできます。と同時に、一気に暑くなったことに気づきました。
 

森があるおかげで涼しい中を歩けていたのですね。


次の目的地は代々木公園のすぐ脇にある「はるのおがわプレーパーク」。

実はここにある「トイレ」に来ることをみんな楽しみにしていました。いわゆる公衆トイレの常識を覆すデザインのこのトイレ、なかが丸見えです。

 

しかし、人が入って中から鍵を閉めると…曇って中が見えなくなるのです。

実際にトイレを利用してみながら出たり入ったりして曇るガラスの不思議さを体験しました。

こういう先進的なデザインのトイレがあるのは東京の特徴と言えるのでは?

予定では原宿駅から電車に乗る予定でしたが、暑いので代々木公園駅から地下鉄に乗ることに。

状況に応じて電車に乗るという選択ができるのも、交通網が整備されているから。

これも都市の「機能」の一つと言えるのではないでしょうか。

「これに乗れば国会議事堂駅も一本で行けるんだね」

ホームの表示板を見て前回の外出で使った国会議事堂駅を発見していました。

 

さて原宿駅を経由して今度は渋谷駅へ移動。

渋谷駅にはその名も「ハチ公口」というのがあります。

「なんかダサい名前だから、もっとかっこいい名前にすればいいのに」

「でもなんでこんな名前にしてるんだろうね?」

ということでハチ公口を出ると、スクランブル交差点の近くに人だかりが見えます。

そこにあるのがハチ公像。

昔は待ち合わせ場所になっていたということですが、今では観光名所になっています。

 

そしてテーマのはじめのころから話題になっていた「渋谷スクランブル交差点」へ。

こんなにたくさんの人がいる中で、人にぶつからずに渡ることができるのでしょうか?

 

平日だったので人は意外と少なく、難なく渡れることができました。

ここもハロウィンなどのときには人で溢れかえり「DJポリス」も出動する場所。

スクランブル交差点から眺めると、新しくて高いビルがたくさんあります。渋谷は古いものが取り壊され、どんどん新しくなっている街のようです。

今度はそんな新しいものの一つ「宮下パーク」に行ってみました。

 

ここも最近まで宮下公園という公園でしたが、宮下パークはショッピングができて屋上ではいろんなスポーツができるおしゃれな場所になっています。

昼食を食べた屋上はスポーツができるだけじゃなく、パブリックアートもたくさん。

暑い日だったので水筒の水もなくなってしまっていましたが、ちゃんと水道もありました。

 


実は宮下パークの近くには昔の姿の名残も発見できました。

 

落書きがたくさんあるトンネル、長屋になっている小さなお店が並ぶ区画。

どんなお店なのかわからなかったので、お店の人にインタビューもしてみました。

 

このお店は夜だけやっている店なので、お昼の時間帯だけ借りてジュースを売っている人でした。


さて渋谷から山手線で上野に移動。渋谷から上野に移動する場合はちょうど山手線を半周することになります。


上野に行った大きな目的は「アメ横」に行くことでした。

アメ横に行く前にまずは上野公園の中にある西郷隆盛像を見に行きました。

 

この日は回る時間がありませんでしたが、上野公園はたくさんの博物館、美術館が密になっていて、

やはり人がたくさん訪れる場所です。

公園にも上野駅周辺にもやはりたくさんの外国人がいました。

「なんで大きい荷物を持ってる人が多いんだろう?」

「ほら、成田空港って書いてある。成田空港にここから行けるんだよ」

今回の外出の候補だった羽田空港は行けませんでしたが、上野もいろんな場所から東京にやってくる場所ということがわかりました。

そして今日の外出の最後の目的地であるアメヤ横丁に入っていきました。

狭い道の両側にはお店がずらっと並んでいますし、いろんな人がいるようです。

 

「ここでインタビューしようと思ってたんだ」と意気込んでいるキッズもいました。

「お客さん、何人いるの?小籠包どうですか?」ふと外国人っぽいお姉さんにお店から声をかけられました。

しかしみんなポカンという表情。

インタビューしてみたら?と声をかけても一歩を踏み出せませんでした。

魚、フルーツ、おみやげ、洋服…ご飯を食べられるお店もたくさんあります。

そういう店を眺めてはいるのですが、どうしたらいいのか戸惑っている子どもたち。

 

東京の特徴や魅力に繋がる発見はできないか…ひとまずもう一周してみることに。

ナイフや銃を売っているお店、昆虫食の自動販売機、革製品…

高架下のお店はかなりディープな感じでした。

 

ようやくインタビューをしてみるキッズも出てきました。

果たして東京の特徴や魅力の発見につながる質問はできたかな?

~~~~~~

<東京の魅力ってなんだろう?>

さぁ、いよいよインプットしてきたことをアウトプットする段階に入ってきました。

2回のフィールドワークを経て、発見から特徴を見つけ出します。

ふりかえりシートにそれぞれが書いたことを共有していきました。

1回目のふりかえりよりも、特徴が探し出せるようになってきています。

 

インタビューはできたりできなかったり。どんな返答が返ってきたのかを全員が知ることでMy DiscoveryからOur DiscoveryにできたらOK。今回できなくても、チャンスはサマプロや次のテーマでもたくさんやってきます。「次はやるぞ!」という気持ちが持てれば、十分学びになっています。

 

ITの時間には、1枚のスライドに写真とコメントで記録する方法を学習。スタッフが撮った写真から選び貼り付け、必要に応じてトリミングも。色をつけたり、写真に枠をつけたり、工夫できるようになっていきました。テーマ学習の中では、言葉を推敲していくことに。

 

特徴となる見出しをつけるにはどうしたらいいか。ふりかえりシートで書いたことをもう一度確かめながら、今度は紙媒体で書いてみます。

見出しは、リフレクション作文のように書いてみることを伝えると本領発揮。こうしたところで日頃の成果が出るとうれしいものです。

 

どんどん出てきた東京の特徴。25枚も書くことができました。(掲載は一部。1枚はコメントなしではありますが)

ここから、自分が魅力だと感じた「東京」を選びプレゼンすることになります。プレゼンではひとり1つずつ語るので、9つの魅力を伝えることができます。まずは、自分なりのベスト9を選んでみることに。

「やっぱり1位はこれだな。」

「25位まで決めたよ。」

 

それぞれのベスト9位を聞くと結構バラバラ。2位まで絞ってみると重なりもありつつ、10枚程度に。

「でも、あれも捨てがたいんだよね。」

「これって、つなげて話せるかも。」

プレゼンで提示する写真は1人につき1枚、スピーチは1分という制限をつけています。写真は1枚でも、時間内であればほかのこともつなげて語れることにすでに気づいています。

 

1位と2位が全く同じ。どちらにしようか迷ってしまったので、2人に2回ずつプレゼンしてみない?と無茶振り。断るかなと思いきや、「うん、わかった。やってみる。」との返事。

 

磨きがいはありますが、筋は通っていて、話したいことの内容がしっかり自分の中に落とし込めています。

「話してみたら、こっちの方が話しやすかった。」

「聞いてみたら、こっちの方が楽しそうに語ってた。」

自他の評価を経て、それぞれが納得いく魅力を選ぶことができました。

これまでインプットしてきたことがこうして身になっていく、子どもたちのすごさを目の当たりにした時間でした。

 

つながりを見つけて順序を決めていくことにも、そう時間はかかりませんでした。あとは、磨いていくのみ。どんなプレゼンになるでしょうか。お楽しみに。

 

———

<プレゼン&ふりかえり>

質疑応答の中で出てきた、繋げて話すことの難しさ。「これが魅力!」と思ったことを自信を持って語ることがゴールだと1年生のテーマ学習う『「紅葉山」見っけ隊』と同じ。次の段階として、9人がひとつのプレゼンとして「東京の魅力」を語ることを課題としたとき、他者の語りが一気に自分ごとになっていきました。繋がりを見つることは容易で発表順はすぐに決まったのですが、自分の言葉で繋いでいくこと、それが今回のハードルとなったようです。

聴衆の方からのリフレクションシートに、全体でまとまっていたこと、プレゼンに流れがあったこと、そこにハーモニーを感じたなど、好評価をいただき、それを聞いて子どもたちの達成感も一入でした。

彼らにとって、東京の魅力は、名所があるから、人が多いからといった視点ではありませんでした。人口密度が全国で1位であることを知り、1位であるすごさは感じたものの、魅力に繋がるかというとそうではなく、人が多いから生まれるアイディアや技術、人工で森を造ってしまうハーモニーに魅力を感じていました。

また、セントラルアイディアの文言から、東京駅の「機能性」に着目したり、地図帳から農林水産の産地が東京以外で盛んであることを知り、「これが美味しいってものはなくて、いろんな美味しいものが集まる場所」と思うようになったりと、子ども視点というよりは、今の彼らが日常の学びの中で獲得してきた「成果」そのものが反影された「東京の魅力」だったと感じました。

6週間の学びのふりかえりでは、セントラルアイディア「東京には都市の機能と魅力が密になっている」について思い思いに語っていきました。人口密度が多いから、機能も魅力もたくさんあるという話になりました。

「東京は人生を便利にするものが多いと思う。」

「人が多いから、いろんな人がいるから便利にするものが作れちゃうんだと思う。」

「地下鉄とか、路線が多くてほんと便利便利。」

暑い中、代々木公園前で地下鉄利用できたときの心地よさは全員が感じました。

「水もあって便利だった。」

「建物の中とか涼しいから、たくさん室外機が都庁から見えたんだよね。」

水道、電気、鉄道と、インフラについても触れるきっかけに。

「インフラってなんかの略?インスタもインスタグラムの略だから。」

インフラストラクチャー。今後どこかで耳にしたとき、このテーマを思い出してくれるといいです。

「便利だけじゃなくて、人生を楽しくするものも多い。お店とか公園とか。」

「ロデムも楽しそうって思った。」

「人が多いと車も多くて、日本橋は排気ガス臭かった。」

「明治神宮は空気がよかった。」

「だから、宮下パークとか木を植えて環境のことも考えてる。」

都会か田舎か、自然かビル街かといった話をしていた6週間前。どちらという話ではなく、多くの人が密集している街では、さまざまなものが密になっていることが体験できたと思っています。今回、フィールドワークしたのは東京のほんの一部分です。都内で訪れる街が増えるたびに、東京の魅力が増えていくかもしれません。

 

AN and YII


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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