【探究領域】時空因縁
【セントラルアイディア】自分視点と俯瞰の往来が理解と判断を助ける。
<テーマ学習> 〜レポート
<自分視点と俯瞰の往来>
今回のテーマ学習は「ココドコ」。
「やったー!」
なんで、やったーなの?
「毎日出かけるテーマでしょ。」
「面白いものいっぱい見つけられそう。」
「まちを歩くから楽しそう。」
「マップつくるの?」
近年、2年生単学年テーマとして定着している「ココドコ」。去年の2年生たちの様子を覚えていたり、人気の高いテーマでもあるので、先輩たちからの声を耳にしていたりと、楽しそうなイメージがあるようです。ただ、楽しむための条件があることも、2年生なら、もうわかっています。
「まち」という言葉が出てきたので、中野のまちではどんなものが見つけられそうか、こんなものがあったら面白そうなものを聞いてみると、
公園100個、
アイスクリーム屋さん、
まっピンクの家、
木だけの家、
タワー、
へんな形のビル などなど
まちにありそうなものとして思い浮かぶものはあまりない感じ。でも、実際に目にしているものならもっとありそう。
今回のテーマ学習では、探検したものを地図で表現していくことが2年生に課せられたミッションです。そこで、今の時点で「地図」をどうイメージしているのか、下記のものを入れることを条件に地図なるものをかいてみました。(TCS・紅葉山・谷戸・城山・TAC・中野駅)
すると、まちにあるものがいろいろと登場してきます。
島忠、紅葉山公園下のバス停、中野サンプラザ、セブンイレブン、マルマンストア、中野ゼロ…
それらを地図に入れた理由を聞くと、
「島忠はお母さんがよく使ってる。記憶にある。大きい。」
「肉が好きだから、肉屋を入れた。」
「いいにく1129って看板あるよ。」
「いつも通ってるから、サンプラザと中野ゼロを入れた。」
「セブンイレブンはいっぱいあって、みんな知ってるから。」
記憶に残る、目に入る、よく知られている、こうしたものを入れることで、地図がわかりやすいものになること、まちの中で目にしているものなど、子どもたちの先行知識が見えてきました。
実際に中野駅を中心とした航空写真と地図を見せると、TCSを探し出します。
「TCSはここだ!」
「出っぱってるのはワークゾーンだ。」
Googleマップなどで見慣れているのかな。ただ、地図記号という言葉は出てきません。
「何これ、しゅりけんマークがいっぱい。」
「忍者の家?」
「忍者はもういないから忍者のお墓じゃない?」
「家紋みたい。」
前回のテーマ「サインを受信せよ!」が効いている様子。見知らぬマークが出てきて、そこに込められたメッセージを受信しようとしています。
「青いところは何?ちっちゃい海?」
ここって、みんながよく行く場所では・・?
「あ、紅葉山公園の池だ!」
言われると地図と現地が一致してくるようです。
「TCSの周りって、四角いんだね。」
周囲をみんなで回ったことはありません。それなら早速、行ってみようではありませんか。
これはお店?おうち?
こんなところに歯医者がある。
ここには家がない!
地図上でわかることもあれば、現地にいってみないとわからないことも。
今回体得したいセントラルアイディアは、
「自分視点と俯瞰の往来が理解と判断を助ける。」ということ。
その到達を目指して以下のことについて学びのアンテナを働かせていきます。
・地図情報と現地情報
・空間(位置・方向・距離)把握の方法
・地図による表現
TCSの周辺だけでも、いくつかの発見がありました。中野駅を中心として、東西南北を探検したらどんな情報が集まるでしょうか。
いざ、地図を持って出発です。
———
最初は、南東方面。中野駅からスタートすると、どっちに向かう?
まずは西に向かうことになるのですが、、、
ワークゾーンで確認してみると、指さしている方向がバラバラ。体の向きを変えると地図の向きも変わってしまいます。
あれ?どっちだ?
地図だけでは「ココドコ?」って迷ってしまいます。そんなときに必要なアイテム、方位磁石を使います。
先の赤い針を「北」に合わせると、玄関を出て左は南になります。
そして、信号を渡って西へ。3グループごとに、進む方向の決定権を交代していくことに。後方グループにはロードメジャーで距離測定の任務を割り当てました。
地図にあった建物が消えてる!ここも空き地がある!
まちの様子が変わる過渡期なのか、変わり続けるのがまちの姿なのか、中野駅周辺は、彼らがTCSに通っている間に様変わりしていきそうです。
「この近くは病院があるはず。行かなくてもわかるからこっちに行こうよ。」現在地の近くに地図記号があることは合っているのですが、その記号は病院ではありません。地図情報だけを頼りにするのではなく、ここは、現地情報を得るため、建物の中に入って確認してもらうことに。
「病院ぽくないな。中野保健所って書いてある。」
「ほけんじょって何?」
代表で聞きに行った3人が返ってきました。
「病院じゃなかった。」
「みんなの健康を守るための場所だった。」
ほかにも、地図情報ではわからない現地情報があちこちにあります。
そろそろスクールに戻る時間になってきました。
「あれ、そっちは違うんじゃない。」後方からつぶやきが。
「だって、あのビルに向かうと駅に行っちゃうよ。」
「確かに!あのビルじゃない方に行けばスクールに着く!」
地図ばかり見ていて迷ってしまうところでした。
「あ、あの尖った木は紅葉山公園の木だ。」
「くもの木だ。」
ビルの次は、紅葉山見っけ隊で名付けた「くもの木」が目印に。
「公園の中を通って近道しよう!」見慣れた場所に着いて一安心です。
フィールドワークのあとはふりかえり。現地情報を記録していきます。
そして、こうしておいてよかった、次はこうすればもっとよくなるといった、探検に必要な心得やアイテムをgood and betterで書いていきます。
「次は水筒忘れないようにしよう。」
「帽子持ってきてたのに、かぶるの忘れちゃった。」
「今度は、アタックザックを持ってこようと思う。」
「ロードメジャーって横にするとやりにくくなる。」
「自分で面白い道を選べてよかった。」
さて、このとき、みんなが向かった方向は?
俯瞰の視点でかかれた地図と自分視点の現地写真を見比べてみます。
「目印ビルが後ろにあったから、ん、どっちだ?」
「目印ビルから離れていくから、南だよ。」
「あー、そっか。」
点で考えるのではなく、自分たちの動きで考えるとわかりやすくなります。自分視点と俯瞰の往来が、理解と判断を助けています。
スクールは中野区中野一丁目。中野駅から見て南東方面は、中野二丁目にあたります。
南西は中野三丁目、北西は中野四丁目、北東は中野五丁目とぐるりと囲むように順番になっていて面白く感じます。
TCS周辺の練習を含めると5回探検に出かけます。
北東方面、中野五丁目エリアに向かいます。
「それじゃ北東に向かうの?」
TCSからだと北東ではなくなってしまいます。
北に向かって西へ進むのですが、先頭グループはスクールを出て左に。
おや?南と北のどちらに向かう?
方位磁石で確認します。
大きな通りに出てきました。
「はやいねどおり?」
通りの名前が書いてある看板を一緒に確認しました。ここは早稲田通り。名称で言うことで伝わりやすくなります。地図上でも太い道なので現在地がすぐに見つかります。
「西に向かうから、こっちだね。」
地図の通り交番があります。ずっと大通りではつまらない。細道に冒険に出たようです。
何度も曲がって行きながら西に向かいます。
「ここに行こうと思う。」
地図記号のある場所を指差しています。今回は、地図帳も教材としてひとり1冊貸し出して使っています。
神社の記号以外は何だろうといった様子だったので、どんな記号があるのか読んでいき、クイズにもチャレンジしてみました。みんなが間違えたのは、この問題。
「これは、小学校!」
丸で囲まれているかいないかにも注意が必要です。病院だと思っていた記号も、囲まれた形がちがうので病院ではなく保健所でした。
目指す記号は、十字が丸で囲まれた形。
「ここは病院?」「救急車が止まってる。」
中野共立病院と書いてあります。
「こっちに提灯がある。お祭りかな?」
地図から目的地を見つけて歩く場合もあれば、偶然何かに出くわすことも。フィールドワークは面白さはここにあります。
提灯を見上げると「商店街」の文字が。
「うちの近くの神楽坂にもある。」
昭和新道商店街は、地図上では細い線になっています。より細い道に行ってみると行き止まり。
「お店開いてない。」
「18時からって書いてある。」
「いざかやってお酒飲むところ?」
「開いてるお店もあったよ。お客さんがいた。」
「あ、真っ黄色の建物だ。」
真っピンクの家を予想していただけに、真っ黄色のお店を見つけて大喜びです。住宅街からお店エリアに雰囲気が一変しました。
サンモールやブロードウェイは、かなり賑やか。みんなが足を止めて動かなくなったのは、ペットショップとクレーンゲーム。ここは、誘惑がいっぱい。スクール帰りに寄り道はしないでね。
「中野サンモール店ってあるからほかにもあるんだね。」
中野のまちにしかない現地情報も見つけたいところです。
「ブロードウェイってほかにもあるのかな。」
中野ブロードウェイは中野の特徴ともいえる場所。1966年に開業した施設です。
3階は閉まっているお店がほとんど。12:00〜、15:00〜など、午後から開店するようです。では、地下はどうなってるかな。こちらは営業中のお店ばかり。
ここまで「疲れた」「あとどのくらい?」「休憩したい」といった弱音を全く言わなかった子どもたち。水分補給もタイミングよく取ることができています。たくさん歩いたので、休憩することにしました。
ここは、有名なお店なのですが誰も知らなかったので、味見調査。
「なんでこんなに種類があるのですか?」
「最初は1種類だったけど、だんだん増えてきちゃったんです。」
「いつからやってるんですか?」
「ブロードウェイが始まったときからって聞いてます。」
ということは、57年前からあるお店?!
インタビューも物怖じせずにできるようになっています。
駅の近くは、お店だけではありません。区役所や税務署もあります。
税務署の中に入って、どんな場所なのか聞いてみると、
「税金を集めてるって。」
「税金って何?」
「知ってる、国におさめるお金だよ。」
ただ、公共のものに使われていることまでは知らず。道路や看板など、税金が使われているものをまわりを見て確認していきました。
区役所には、事前に問い合わせしたところ、引っ越し作業で多忙期のため、中の見学は叶いませんでした。
「ここも引っ越すのか。」
となりのサンプラザが閉鎖されたことは、「サインを受信せよ!」で知っていました。この一体も工事中が多く、変わっている最中であります。
「渋谷にも区役所あるよ。」
「北区は、北区役所?」
「じゃあ、お父さんに聞いてみる。」
区役所に勤めているお父さんにインタビューするとのこと。翌日、みんなに紹介してくれました。
「区役所は、その区に住んでいる人のためにお仕事をしていて、ごみを管理したりしてる。」
まちに欠かせない機能のひとつです。
さて、向かうは北西方面。方位磁石で北西を確認して進んでいます。
でも、道なりに進んでいたら、いつのまにか南へ歩いています。
そんなときに偶然現れた案内板。まちにある地図は、現在地がわかるので便利です。
「あ、逆に進んでた。」
地図記号の老人ホームは、名前に高円寺が入っています。
「もう高円寺なんだ。」
「この点線って、杉並区と中野区の境目なんだ。」
現地にいたからこそ、地図情報が見えることもあるのですね。
「消化器だ。」
これもまちには欠かせません。
「こんな森みたいなところもあるんだ。」
5回の探検とその都度のふりかえり。毎回、気持ちよく実行できたのは、一人一人がハーモニーやプレイフルネスを発揮していたからであります。1年間の目覚ましい成長っぷりを見ることができました。「ココドコ」が2年生だから成立するテーマ学習であることを改めて実感した次第です。よくがんばりました!
<地図で表現する>
発見してきたことをいよいよ地図で表現していきます。これまで地図と方位磁石を頼りに探検をしてきました。地図をつくるにあたって、地図のよさを聞いてみると次のことがあがってきました。
・迷子のとき、役立つ
・行きたい場所に行ける
・今、ここにいるよってことがわかる
・中野駅はここだよってわかる
・目じるしがあるとわかりやすい、地図記号とかはそこに何があるかわかる
「目の前が学校だとわかりやすい。」
地図と現地を行き来していたからこそ、出てくる発言に思えます。
そこで、地図があったら、自分の家をどう案内する?と聞いてみました。
「四ツ谷駅の番町小学校の前」
「すぐ歩いたところに柏公園がある。」
「となりにすごいちっちゃい公園がある。」
「不動通り入口ってバス停のうら。」
「1、2分歩いたところに三宮橋駅がある。」
方角がわかるともっといいよね。
「でも、コンパスがないからわからない。」
やはり地図と方位磁石はセットで必要です。こんな話の流れから、自宅周辺の地図をかいてみたいと思った人に方位磁石を貸し出しました。
中野駅周辺を探検してきて、「ここは紹介したい!」と思ったスポットは、なんと40箇所以上出てきました。すべて記載できるかは、残された時間次第になりますが、その中でも、ここは外せないというものを9箇所に絞っていきました。
その9箇所を案内するための地図をつくっていきます。
まずは、説明するのにわかりやすいものを入れていきます。
「地図記号の場所は入れたい。」
「大通りもあるといい。」
「行くための細い道もないと。」
自分たちが通った道や目じるしになったものを入れるべく、まずは既存の地図で必要な道に色をつけていきました。
既存の地図のコピーでは情報が多すぎて返ってわかりにくくなってしまいます。探検した道すべてではなく、主要な道はどこかを考えていきます。2、3人でグループになり進めていくと、一緒に考えたり、分担したりとそれぞれ違った方法をとっています。
地図と並行して、お勧めスポットのコメントも考えていきます。
行きたくなるような一言ってなんだろう?
行ったからこそ知ることができた現地情報は?
そんな問いかけをヒントに現地を思い出しながら書いていきます。
つくっていく地図の大きさは模造紙4枚分。A3用紙で見てきた地図が模造紙1枚分の大きさになります。
「あれ、細い道と大通りが同じ太さになっちゃった。」
まっすぐな道は定規で、地図記号の丸みはコンパスを使って。
「コンパスなら上手く使えるようになったからやりたい!」
前回のテーマ学習で練習してきたことが活かされます。
紹介したい2つの神社があります。
地図上では近くに位置しているのですが、同じ日に探検していないため、案内することができません。線路を挟んでいるため、歩道橋を渡れば近いのですが、、。
「歩道橋なんてあったっけ?」
「知らない。」
「うーん、あったかも。」
百聞は一見にしかず。現地に行ってみて、どのくらい近いかを実感することに。
歩道橋、ありました!どのくらい近い?(遠い?)
「700mくらいかな?」
「地図で見れば400mくらいかな。」
端に記されているスケールバーを見て当てはめてみています。実際には440mほどでした。
「地図って結構正確なんだね。」
「地図作った人ってすごいね。」
江戸時代、日本中を歩いて測量して地図をつくった伊能忠敬は本当にすごい。
探検したときには、歩道橋を背にして歩いていたので気づきませんでした。方向を変えて歩くと同じ場所でも違う発見があります。
「歩道橋ってこんなに近くにあったんだ。」
「ここからは、クランキーがたくさん見える。」
「目じるしビルの上にもクランキーがいる!」
いつしか、クレーン車が「クランキー」の愛称で呼ばれるようになっていました。きかんしゃトーマスのキャラクターからきています。
交番も西に60m移動していることが確認できました。せっかくなので、工事が終わったらまた引っ越すのか聞いてみました。
「この交番もどこかわからないけど、また引っ越すんだって。」
一時的に移動していることがわかりました。
案内の仕方も考えていきます。
「あれ、駐車場をまっすぐ北に進んだら神社じゃなかったっけ?」
紹介しようとしたら、地図上での位置が違っていることを発見することができました。写真で現在地を調べてみるとその通り。その場の記憶が残っているのは大きな強みになります。
明日はプレゼン。どんな地図と案内に仕上がるでしょうか。できることを精一杯やっています。
<プレゼン&ふりかえり>
9箇所に絞ったオススメスポット。紹介しやすい順番を考えた結果、スクールをスタートにして、中野一丁目、二丁目〜五丁目と住所に沿っていくことになりました。すると、実際に歩いた方角とは逆に説明する難しさも出てきました。
目の前の地図と頭の中で想起される現地を照らし合わせながら話していきます。
「4なし駐車場」は、おや?遠回りでは?との声もありましたが、大きな一軒家が立ち並ぶ三丁目エリアを通ったあとで発見した場所だったこともあり、実際に通った五叉路ルートの方がスムーズに話ができたためであります。
自分たちで順番を決め、声を揃える場面は現場で起きたことだったので自然に決まっていきました。それぞれ担当になったパートを責任もって語り、次につなげていく。ほかの人が忘れてしまってもみんなで補うこともでき、探検中に発揮していたプレイフルネスとハーモニーがそのまま表現されていたと思います。
目指したのは、その場に行ったようになるプレゼン。オーディエンスからのリフレクションシートに、「行った気分になった。」と書いてくれていた人が何人かいて、みんなで喜び合っていました。
質疑応答で曖昧になってしまった、合計の道のりも計算しました。12km696m。歩いた時間は8時間28分でした。
また、「中野駅からTCSまでの通学路がちょっと違うように見える」との声もあり、早速、手直し。フェスタでは修正版をお見せすることができました。
セントラルアイディア「自分視点と俯瞰の往来が理解と判断を助ける。」について、今思うことを出し合っていくと、自分視点は自分中心的な見方で、俯瞰は他の人の意見や周りを見ること、やるべきことだという意見でまとまっていました。
「行ったり来たり往来するから、「あ、いけない。」「やめよ。」「あ、またやっちゃった。」ってなってよくなっていくんだと思う。」
自分視点ってない方がいいの?と聞いてみると、それは違うと言います。
「自分視点で納得すると理解できて、俯瞰して周りを見るから判断できるんだと思う。」
「自分視点ばっかりだとわがままになっちゃうけど、俯瞰ばっかりしていても自分の意見がないから何も決められないし、理解できない。」
自分視点と俯瞰に着目し、その往来をしてきたからこそ、どちらも必要であると各々が力強くいっているのが印象的でした。
探検やフィールドワークの面白さや奥深さに触れることができ、時空の範囲を広げていく糧になったことと思います。
AN
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)