タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている
[5・6年生]
今週は、中野区国際交流協会の方々のご厚意で、日本語講座に通っている外国人居住者の方がTCSを訪問してくださいました。お店に訪問したときは男性の方ばかりでしたが、今回は女性の方ばかりです。
まずは粗茶でおもてなし。しかし、どうもみなさまのお口にはあまりあわなかった様子。まさに「ほろ苦い」スタートになりました。
しかし、子どもたちは、インタビューの雰囲気をつくるのがとても上手になっています。笑顔で、相手の顔を見て、失礼にならないように気をつけながら問いかけます。小学生からのインタビューということで2〜3問たずねられて終わりかなと思っていたら、子どもたちは、質問をきっかけにさらに話を広げようとするし、真剣に聞きとろうとする姿勢にとても好感を持ってくれたようです。
インタビューがうまくいくかどうかは、インタビューされる側が、インタビュアーに好感を持つかどうかにかかっています。子どもたちを気にいってくれた方たちは、次第にプライベートに関することも話してくださいます。
中国、韓国、フィリピンをそれぞれお母国とする方達。3つの国と日本との間には歴史的にも、現在の状況においてもさまざまな葛藤があります。
「日本に連れて来られた私のおじいさんたちは、韓国に戻るときにもし別の船に乗っていたら爆弾に当たって沈没して死んでいたのよ」
太平洋戦争のさなか強制労働させるために日本に連れて来られた韓国人の子孫だと明かされます。インタビューしている子どもたちに直接責任はないのは明らかでも、なんとなく気まずい感じがします。ではどうして韓国に戻ったのに再び日本に来ることになるのか……それは、日本の敗戦後わずか5年後、同じ民族どうしでの戦いが勃発してしまいました。朝鮮戦争です。なんとなく社会で聞いたことのある知識が、現実の重みをもって迫ってきます。
「韓国は軍事政権で自由が限られていたからということと、戦後も日本に帰らなかった李方子さんという、日本の皇族から朝鮮王朝に嫁いだお姫様にあこがれていたことがあって日本に来て、日本に住んでいた在日韓国人の人と結婚したよ」
子どもたちは話にどんどん引き込まれてゆきました。
たくさんのお話をうかがい、無事、インタビューは終わりました。でも、本番はこれからです。インタビューした内容をしっかりふりかえり、どんなことがわかったのか、どんなことがまだわからないのか、そして、さらにどんな疑問がわいてきたのか、明らかにする必要があります。
そのためにまずボイスレコーダーに録音したことを聞き直します。
話してくれた事実を「メモ」しながら聞いていきますが……そうしながらも、あれ?いったいどういうことだろう?という新たな「疑問」がわいてきます。
「フィリピンの言葉ってタガログ語だと言っていたけど、どんな言葉なんだろう?」
「中国と言っても香港なんだよね。香港は昔イギリスだったって言われたんだけど……」
インタビューして聞いた事実からわいた疑問を調べる必要が出てきました。
「もしかして日本に住みたいと思っているけど、日本が『いい』というより『まし』ってことなのかな……」
「なんとなく感じたんだけど、日本に来た人の方が、いる人よりがんばっている気がする」
さらに知りたくて、調べたい疑問とともに、インタビューの結果、「もしかしたら……かも」というひらめきも生まれてきました。単に「知った」ではなく、そこをスタートにしてさらに「気づく」。これが探究です。
インタビューした相手のことをとことん魅力的に語ってみよう。そしてそこから見えてくる相手の国と日本との違いを明らかにしてみよう。さらには、異なるバックグラウンドを持つものどうしが同じ場所に暮らすことの意味を考えてみよう。
いよいよセントラルアイデアの理解の核心に迫る内容について考えるフェイズに入りました。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。