特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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フードロスの現実をデータで理解

[3・4年生]

「おっちゃん!規格外みかんを持ってきたよ!」

ある子がキズのついたミカンを持ってきました。形が一定の大きさを超えていたり、見栄えのあまりよくない果物や野菜は、味や品質になんの問題もないのに捨てられてしまうことに衝撃を受けた子どもたち。そんな規格外品が、「ワケあり」と称して安く売られていることを知った子が、家で購入した規格外みかんの味をみんなで確かめるためにスクールに持ってきました。

確かに表面にキズみたいなものがついていますし、色もまだらになっていて美しくありません。ところが皮をむいてみると、まったく問題のない中味があらわれました。みんなに一房ずつ分けて食べてみると「うめえ〜」「甘〜い」どうしてこれが廃棄されてしまうのかわからないほど美味でした。

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映画を通じて、世界&日本のフードロスと食料廃棄の実態について強烈な「イメージ」を目に焼きつけました。そして、自分たちの給食の食べ残しを調べ、近所のスーパーやコンビニでも食料廃棄が行われていることを知り、自分たちが知らず知らず関与している重大問題なのだ!という「意識」が高まりました。

次の段階は、「イメージ」や「意識」を「データ」で裏づけることです。今年になって政府を始め、フードロスへの意識を高めようという動きが活発化しています。大手広告代理店の主導でフードロスチャレンジプロジェクトが立ち上がり、いろいろなイベントが開催されています。農林水産省や食糧庁のウェブページでは、フードロスと食品廃棄についてのデータと対策についての資料がたくさん公開されています。その資料をしっかり読み解くことに取り組みました。

「もったいない」の映画を見て、日本の食品廃棄が約1700万トンだという数字が子どもたちの頭の中に刷り込まれたのですが、いったいこの数字の意味するところは?とちょっとつきつめてみると……???

農林水産省の作成した資料には、「食品由来の廃棄物約1700万トン、うち可食部分は500〜800万トン」と図示されています。

「そうか食べられないゴミと食べられるのに捨ててゴミにしちゃってる場合があるんだね」

おお鋭い子が現れましたぞ。とはいえ、500〜800万トンとは言ってもその数字がどのぐらいスゴイのかピンと来ません。そんなときにはこのような資料では必ず何かと比較してイメージしやすくする工夫をしています。すると「> 世界全体の食料援助量 400万トン」」と書いてあるじゃあないですか。これはどういうことなのか……

「>って開いている方が大きいって意味だよ!算数で習った」

つまり、日本において食べられるのに捨てている量は、世界全体に対してなされている食料援助量よりずっと多いぞ!ということを示しているわけです。

「2倍も多いじゃん」
「わけわかんない!」

アフリカなど貧しい国で飢餓にあえぐ人たちを救おうというキャンペーンCMやポスターをよく目にするわけで、だったらフードロスの分を全部寄付すればいいじゃないか!と子どもたちは思ったのです。いやあ本当にその通り。しかし、世の中はそんな矛盾を放置したままでなんとも奇妙な状況にあります。

事業系と家庭系……そうか事業って会社。ということは食品会社やスーパー、コンビニ、レストランとかで出るフードロスってことだな。事業系の場合、規格外品だけじゃなくて「返品・売れ残り」もある……返品?売れ残り?……あっそうか、お店で売れそうもないからメーカーに戻ってきたやつだな……それって捨てられちゃうんだ……えっ?まだ賞味期限が2ヶ月も残っているのに、そういう製品は買われないから「返品」されて後はゴミ箱行き……オー・マイ・ゴッド!1

A41枚の資料に山盛りのデータと情報を読み解いてゆくことに子どもたちは没頭していきます。あっという間に90分の学びの時間は過ぎ去り、いつもながらみんなびっくり。

「どうしていつもテーマの時間はこんなに速く過ぎるんだろう……」

問題の実態を強烈にイメージできた後だからこそ、裏付けとなるデータを知る作業に没入できるのです。知識を教えて、考えるのではなく、まず、問題意識を持ち、追究する。当たり前と言えば当たり前ですが、教えたいペースにはめこむのではなく、子どもの探究の道筋に沿って学びをデザインしてゆけば、どんどん子どもが動いてゆく学びが発展してゆくのです。

「こんなにフードロスのデータが頭に入っている小学3年生はいないよね!」

いやいや小学3年生どころか大人だってそうそういませんよ。食品廃棄&フードロス探究へのドライブはいよいよ増すばかりです。

RI

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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