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「お互いさま」1年2年生 テーマ学習 〜レポート

 

 【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】種は互いに影響し合って生きている。

<テーマ学習〜レポート>

このテーマ学習ではさまざまな生態系における自然のバランスを知るためにじっくりと種と種の影響関係や環境自体の特徴、また人間の関わりや課題についても考えていきます。

TCSから一番近い紅葉山公園の小さな池には真っ赤なザリガニが枯葉の奥にモゾモゾ動いていたり、大きな亀が数匹甲羅干しをしています。

何気ない日常の風景ですが、実はそれらの生き物たちはもともとこの公園に住んでいる生き物でも飼育している生き物でもありません。

このテーマ学習ではそのような身近な自然について一つずつ知ることから始めて少しずつ視野を広げていきます。

まず一週目には、「いきもの」と聞いて知っていること・連想することについてたくさん意見を語ってもらいました。

一人が考えを語ると触発されてまた次の子がひらめき、コメントがどんどん飛び出してきます。

子どもたちの多くは「いきもの」に関心が高く、詳しい情報で模造紙が埋め尽くされました。生物の種類だけではなく、「外来種」・「絶滅危惧種」・「特別天然記念物」などの概念も出てきました。

「土は生きていると思う。なんでかというとさ、種は土の中に入らないと種のままでしょ。でも土の中に入ると種が気になったり花になったりするでしょ。だから土って生きてると思う。」

「土だけじゃないよ!土と水があると種が育つんだよ!!」

「でも土って正体はなんなんだろう!?」

 

テーマ学習の3日目には、実際に平和の森公園を訪れて身近な公園の自然を観察してみました。

「前に来た時にザリガニがいたんだよ!今日も絶対いると思うよ〜。」
「あー!アメリカザリガニいたー!!あっ!でも逃げられちゃったよー!」

スクールからするめとタコ糸を持って行き、即席の釣り具を持ち上げて悔し顔。

釣り上げることはできなかったものの、目的であった外来種の存在は確認することができました。

「あ〜!ドバトだー!!」私たちがよく見かけるこのドバト(カワラバト)も外来種なのですね。

 

 

現地へ足を運び、現物を見て実感することこそ学びの真骨頂です。

1年生たちにとっては初めての電車に乗ってフィールドワークへ繰り出します。

目的地は井の頭公園です。井の頭公園には池があり、その池に暮らす水生生物たちについて詳しく学ことができる水生物園があります。

1・2年生たちはバディを組んで2チームに別れて吉祥寺を目指しました。

フィールドワークでは自分たちでルールを決めて意識し続けることも重要です。信号を渡る時や大勢の人が集まる場所での行動の仕方について事前に予想しておくことが求められます。

安全面やスケジュールを確認してからいざ出発!!

晴天に恵まれて絶好のフィールドワーク日和です◎

 

井の頭池には幾種類もの水鳥たちが泳ぎ、到着早々自然に釘付けのキッズたち。学びのアンテナは早速グルグル動いています笑
 

子どもたちの観察眼は素晴らしい。一人が気づくともちろん発見の連鎖が巻き起こるのも集団の力。いいフィールドワークになりそうです!!

なんと昼食を食べ終えて近くの水面を眺めていると冬にも拘らずウェットスーツを着込んで池の中にダイビングしている人を発見しました。
 

”これは何かテーマ学習と繋がりそうだ!!”とみんなのアンテナが反応します。ここでフットワーク軽く、そして感じよく話しかけられるところがTCSキッズたち最高です◎

作業をしている方のお話によると在来種の水草が外来種の水草に侵食されないように、冬のうちに外来種の水草を駆除しているところだとのことでした。そうすることで在来種の水草を餌にする水生生物たちの連鎖を育んでいけるとのことです。このような活動を継続している成果として水質も改善し、たくさんの水鳥が昔のように返ってきたり池の中にも在来種の水草が戻り、それらを食べる魚たちが豊かに暮らすことができるようになってきたそうです。

 

井の頭池の在来生物たちの水槽を見て進んでいくと、奥に外来生物の水槽もありました。なんとそこにはそれまで見てきた在来種の魚たちとは似つかない大きな口と鋭い歯を持ったオオクチバス(ブラックバス)やブルーギルが泳いでいました。これらの外来生物たちは誰かがペットとして飼っていたのに飼えなくなって池に捨てられてしまったそうです。

飼い主は池に放すのだから悪いことをしているつもりはないのかもしれません。しかしこれらの外来生物たちが増えてしまうと池の中の生態系はどのように変化することになるのでしょうか??

可愛らしいモツゴやフナのような在来種たちは太刀打ちすることができません。食べ物も奪われ、自身も食べられる危険があり、さらに住処まで奪われてしまいます。そのようにして元々その地にあった自然のバランスは崩れてしまい、自然の回復力だけでは元の生態系に戻ることは残念ながらできません。しかもなんとこの池にはアメリカ大陸に住んでいるはずのカミツキガメも生息していました。。。

 

井の頭池の自然のバランスが崩れてしまった原因は一つではありません。そもそも湧き水が枯れてしまった原因は都市化にあります。コンクリートだらけになってしまった大地には水が染み込んで溜まっていくシステムがありません。さらに人口が増えて憩いの場であるはずの公園の池にはとてつもなく多くのゴミが投げ捨てられ、水質をどんどん汚染していきました。さらに人々は飼えなくなったペットもこの池に放すようになりました。そうして気づいた頃にはもう手遅れな程に変わり果てた池となってしまったのです。

しかし、自然の回復力は凄まじいとも言えます。

池の水を全て抜き、底に溜まった泥をかき出してその中に残っている在来種の水草の種子を保存します。また水を抜いてあらわれた在来種と外来種の生物を分類します。そしてしっかりと池の底を乾かしてから綺麗な水を溜め、芽が生えた水草を植えて在来種を戻すことでゆっくりと時間をかけて池の自然のバランスは以前のように戻りつつあるのです。

この池の作業を「かいぼり」と言います。

このような人間の知恵と行動によって回復する力を自然は有しているということをただただ偉大に感じます。

このテーマ学習を始める以前は、目の前にある自然が実はさまざまなドラマを経て今の状態になっているとは考えもしなかったはずです。多くの登場人物たちの与え合う影響関係について頭がグルグルしているキッズたち。

スクールに戻ってさらにいくつかの自然に視点を移していきます!

 

—-

 

YI

 


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2024年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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