特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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東京コミュニティスクール

「お客様の笑顔を獲得せよ」5年6年生テーマ学習 〜レポート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【探究領域】社会寄与
【セントラルアイディア】
事業の目的は顧客の創造である。

<テーマ学習> 〜レポート

<駄菓子屋体験>

駄菓子は食べたことはあっても「駄菓子屋」は行ったことがない。

「おかしのまちおかは駄菓子屋?」「業務スーパーのこと?」

まずは、昔ながらの駄菓子屋を体験してみることに。

新井薬師前駅近くにある「ぎふ屋」さんに調査協力を依頼したところ、快く受け入れていただきました。

 

食べたことのあるお菓子を買ってしまうと調査にはならず、経費を減らさないように見ているだけではお客様の気分は味わえません。経営者と購入者、両者の視点でじっくり駄菓子屋を視察しました。

「ゲームって始めるともう一回やりたくなる。」

「メタルが当たると駄菓子がもらえるっていいね。」

「自分でつくったゲームをお店に出そうかな。」

「スクラッチって削るときは楽しいけど外れると悔しい。」

「暑い日は冷たいものが食べたくなるね。」

自分のお店にどんな商品をどのようにおこうか、構想が膨らみます。

 

スクールに戻り、現金出納帳に残高を記録。購入商品についても味や購入に至った決め手などを分析していきました。


<顧客を絞る>

たくさんの人に買ってもらいたいけれど、万人向けにするとかえって誰にも売れない結果になってしまう。「この人にこれを売りたい」そういった商品を見つけ出すためにも、まずは、スクール周辺にどんな人がいて、どんな駄菓子を求めているのか、調査項目を考え、調査に繰り出しました。

 

「笑顔で話しかけたら笑顔になってくれてた。」

「あー、自分たちはちょっと硬くなっちゃったかも。」

「決めてたことより、駄菓子のことでたくさん話ができると親しくなった感じになれた。」

「信号待ちの人は忙しい感じで聞いてもらえなかったから、次から忙しそうかどうか見てから話しかけた。」

見知らぬ人との対話は今後の接客に活きてくることでしょう。調査結果をもとに、顧客を絞り、商品を選定し、お店のコンセプトを決めていきます。


<事業計画書を作成>

事業を始めるにあたり、どんなことをやりたいのか、どのくらいの売上、費用を見込んでいるのか、より具体的に計画を立てていきます。出資者となる保護者・スクールに説明できるよう、ITで学習したフォーマットを元にして書類を作成。つくっては、フィードバックを受け、磨くを繰り返し、完成を目指します。

 


<計画を形にしていく>

3人1組、5店舗の事業計画書が認められ、出店できることになりました。それぞれに、こんな駄菓子屋にしたいとい思いが込められています。その実現に向けて、商品を選び、仕入れ先を決め、価格設定をしていきます。どうしたら買いたいと思ってもらえるか、売り方を模索します。

「うまい棒はコンビニじゃ12円だけど、ぎふ屋は子どもは10円、大人は12円だった。」

「10円で売りたいけど、それじゃ利益率が低くなってしまう。」

「12円でもゲームができれば買ってくれるかな。」

いよいよ営業初日を迎えます。

実際にやってみると気づきが出てきます。

「目線を合わせたら買ってくれるようになった。」

「途中でアンケートを読んだら、声が出てないってわかった。」

「明るく話しかけるようにしてたら、やさしくしてくれたって書いてあったから伝わったと思う。」

「お釣り用意してなくて、お客様に申し訳なかった。」

「ほかの店みたいに、目立つ値段を次は作ろうと思う。」

「レジやお店の違いがわかるように改善したい。」

「もっと宣伝しないと。」

 
アンケートでお客様の声を聞き、次回に活かします。

 

在庫数、売上金、金庫の現金が合うか確認。

「あれ、在庫が1個少ない?」

「現金がなぜか多い。」

3人の目で確かめていきます。当たりの分を入れてなかった、数え直したら違ってた、レジ表に書かないで売ってた分があった、などズレの原因が見えてきたものもあれば、解明できない部分も。これ以上、誤差が出ないよう何を改善すればいいのかを考えていきます。

 

アートの時間に、目に止まる色使いや文字の形について見聞きしたことをチラシや商品のポップづくりで実践。できることは、どんどんやっていこうと動いていきます。

 

営業2回目。初心を忘れないよう、お店のコンセプト、その実現に向けて自身が意識して勤めていくことをみんなの前で一人ずつ宣言してから、開店に挑みます。

 

5店舗全体のレイアウトを変え、全店舗を回ってもらえるようスタンプラリーカードを導入。経費で景品用の飴を購入し、全店舗で按分することに。そのほか、氷菓子を買ってもらえるよう、演出のための風鈴を置いたり、その場で食べられるようお湯を用意したりと、スクールの物を使う場合は「物品借用書」を提出。駐車場を借りるための賃料を分割払いにしている店舗は、支払いを忘れずに。 

「ぜんぶのお店回りたい!」

「まだ帰りたくない。」など、うれしい声が聞こえてきます。

 

「3本セットでゲームができるっておまけ付きにしたら売れた。」

「アンケートでチョコが溶けてたってあったから、保冷剤を敷いた。」

「売上金を上げるために値段を上げたけど買ってくれた。」

「お湯をこぼしちゃった。布巾の用意に気づいた。」

「呼び込みの宣伝で、小さい子に“怖い”って言われて逃げられちゃった。」

「お菓子好き?じゃあ一緒に行こうか。って、怪しいよ。」

「小さい子に直接じゃなくて、親に話しかけた方がいいよ。」

「駄菓子屋やってますじゃなくて、東京コミュニティスクールって知ってます?って聞いて、学校で駄菓子屋やってるって話すと来てくれるよ。」

前回できなかったことができるようになり、新たに改善したいことが出てきます。営業できるのは、あと2回。提供する価値と方法を引き続き試行錯誤していきます。

 

「当日に来てもらう声かけだけじゃなくて、事前に知っててもらうことも大事だと思う。」

お店の前に看板を作りたいという構想が出たものの、なかなか実現せず。当日に出す看板より、デザインにこだわらずに大きな文字で知らせる広告なら、すぐにできると動き出しました。

道ゆく人の目に触れている様子です。

 

呼び込みのときに渡すチラシも作成。スーパーのチラシを参考にして、商品の写真を撮り、値段を表示。

 

店頭のポップも必要に応じて書き換え、キャッチフレーズや見せ方が改善されていっています。

営業日に予定が入って参加できない。そこで、事前にCMづくり。宣伝の仕方はいろいろあります。

同じ店舗のメンバーとの連携も徐々に取れるようになっていき、店舗に関係なく、一緒に売っている一体感が出てきた感じです。

 

3回目土曜日営業は、酷暑の中、TCS内外に関わらず多くのお客様が来てくださいました。次々に買い求めてくれる人たちに追われぎみ。

 

売り切れ続出。嬉しい悲鳴でありながら、売るものがなければ、お客様に喜んでいただくことはできません。途中で買い出しに行ったり、他店を手伝ったりと臨機応変に動くことが求められます。

「もっと仕入れておけばよかった。」

「レジ表もっと印刷してもらえばよかった。」

そうした振り返りをしながら、次の営業に向けて戦略を立てていきます。売り切りたいけど、商品の数が少ないのは寂しい。どのくらい仕入れて、割引も視野に入れていきます。値段が違うゲームやくじ引きをつくり、5円でも買える商品をつくることに。

 

最後の営業日。土曜日ほどの混雑はないものの、一度来てくださったお客様、通りがかりに足を止めてくださる方、チラシを持参してくださる方など、暑い中、多くの方がご来店。無事に4回の営業を終えることができました。さぁ、最後は事業報告に向けて、集計をして結果をまとめていきます。


<事業報告>

 

積極的に仕入れ、売るための宣伝にも徐々に力が入ってきた成果が売上金に現れたように思います。全店舗黒字という結果を出せたことは見事です。集計と残金が合わず、レシート、レジ表を見直したり、現金を何度も数え直したりと、頭を抱え込む姿も見られました。金額が合わないことに悩むことも学びのひとつです。管理を徹底することの意識と実行の難しさを身を持って感じている様子は、彼らの必死さから十分に伝わってきました。


<ふりかえり>

「事業の目的は顧客の創造である。」

事業の目的ってお金でしょ、儲けるためにやってるんじゃないの?

セントラルアイディアについて、1週目では上記のような意見が多かったのですが、6週間経ち、どう感じているか聞いてみると、

「お金が目的って思ってたけど、その前にお客様がいないと事業ってできないんだって思った。」

「事業の目的って種類によって違うんじゃないのって思ってたけど、どの事業もお客様が必要だから、顧客の創造って今は納得できる。」

「お客様って簡単に来てくれると思ってたけど、全然違った。」

「声かけたら、一回行ったからって断られた。もう一度行きたいって思って、常連さんになってもらうのって難しいんだなって。だから、顧客の創造って思っていた以上に大変だった。」

「お客さん増やせばいいんでしょって感じだったけど、そうするためには、声かけたり、チラシ作ったり、調査したり、アンケートつくって読んだり、ゲーム盛り上げたり、サービスしたりってたくさんやることがあって、こういうことをやらないと顧客は創造できないってことなんだよね。」

彼らが今回の事業を通して、お客様をつくることに尽力するようになっていった変化が、このような意見につながったのではと感じました。このあと、利益をプレゼンで語った通りに使い、事業報告書を出し、出資金の返金をもって事業は解散します。

「過去一大変なテーマだったよー。」との声が聞こえるくらい、

残業もあり、盛りだくさんのテーマ学習でしたが、その分、収穫も大きかったです。

 

AN


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2024年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

 

 

 

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