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「Dear Editor」5年6年生 テーマ学習 レポート2

【探究領域】意思表現
【セントラルアイディア】編集によって情報の価値は変わる。

<テーマ学習>レポート

 心の底から楽しめて、どんどん読み進めたくなる本
 どの作品を読んでも思っている以上に面白い本
 そんな文集をつくりたい。

TCSキッズのクリエイティブ・ライティングには、その要素が詰まっている。そう自信をもっていえる5・6年生たち。それは、これまでの自分たちの「書く」クラスの成果ともいえます。学年を重ねるごとに、表現の仕方、ストーリーラインの作り方も変わってきています。様々なジャンルへの挑戦、好きな本・作家の言い回しや技を真似てみることも。そのような実績があり、これまでに互いの作品を読み合い、評価し合ってきているからこそ、自信があるのだと思いました。

では、実際に作家さんたちとご対面。どんな物語を書いてきたのか、その中での自信作を聞くなどして、文集に載せる作品を一緒に決めていきました。

以下、取材記録より、1年生との対話です。
「どの作品があるの?」
「「れんあい」と「空のたび」と「ハロウィンのできごと」がある。」
「Iさんの出したい作品は?」
「「空のたび」」
「なんで、「空のたび」がいいの?」
「1年生9人が登場するから。他は登場しない。」
「なんで、「れんあい」と「ハロウィンのできごと」が嫌なの?」
「1年生9人が登場しないから。」
「じゃあ、「ハロウィンのできごと」に1年生9人が登場したら、出したいの?」
「それでも、やだ。ハロウィンが嫌いだから。」
「物語を描くときに一番大事なのは「1年生の9人が登場する」こと?」
「うん。」
「なら、「空のたび」にしよう。」
「うん。」
即決するのではなく、自分自身が納得できるまで、疑問に思ったことを聞いている様子が伝わってきます。

自分の作品に興味を持ってもらえることは、自分に興味をもらっていることにも繋がります。うれしいことでもあり、ちょっと恥ずかしいと思う子もいるようです。

「なんか、話しても聞いてないし、聞いてもすぐに答えてくれなかった。」

顔合わせのあとに、発見や疑問、モヤモヤを共有していきました。
「恥ずかしいのかな?」「ほかの人に聞かれるのが嫌なんじゃない?」

相手の気持ちを考えながら、気持ちを言葉で確認すること、そして、こちらがなぜ聞きたいのか意図を説明する必要もありそうです。

今回のテーマ学習では、考え・悩み、どうしたらいいのか探っていく要点を次の3つにしています。
・編集されている情報(Causation)
・対話と推敲の技法(Perspective)
・情報の価値を高める編集(Change)

作品が決まったら、推敲していきます。読んでいてわからないところがあれば、本人に聞く。「きっと、こういうことだろう」と自分の解釈を入れてしまうと、内容(情報)は変わってしまいます。けれども、そのままにしては、面白さが読者に伝わりにくいことは変わりません。伝わりやすく的確に編集するためには、どんどん質問をして、内容理解を深めていきたいところであります。

それぞれの対話の一部分を紹介します。

「今どのぐらいの歳?」
「高校三年の探偵。」

「コンパスを手に乗せるって、「つまむ」のではないの?」
「つまむ?」
「だって、持って回すでしょ。」
「針は勝手に回るよ。位置を示すでしょ。」
「え?」「コンパスって磁石のこと?」
「そう。方位磁針。」
「文房具屋さんにあるコンパスだから、円をかくコンパスかと思ってた。」

「バイバイってなんで?」
「家にいるから。」
「それなら、いってきますの方がよくない?」
「そうだね。」

読んでみると、聞かないとわからないことが結構たくさん出てきます。聞くことで情報量が増えていき、その場で、提案もできます。

「国氏って誰?」
「国民のこと」
意味がわからないときは、表記ミスもあり得るわけですね。

「かぎかっこはわざと改行してない?」
「改行するの知らなかった。」

「このスラッシュみたいなのって何?」
「あ、それノだ。字汚くてごめん。」
人の作品だから見えてくるものがあり、お互いにスキルアップしていける場面であります。

でも、聞いてばかりいては指摘されているように思われてしまいがち。
そこで、編集者たちには、作品のgoodを見つけて伝えることを意識してやるように伝えました。

「間違いはすぐに見つけられるんだけどね。」
「らしさが出てると思うところは、いいところだけど、それを言うのってちょっと恥ずかしい。」

よい作品だからこそ、文集に載せて多くの人にそのよさを伝えたい。文集づくりの根本にある、自分たちの気もちを作家にわかってもらうことが、一緒に推敲していく上で大切になってきます。

対話をする時間を多くとるほど、お互いの距離も近くなり、編集もしやすくなっていきます。顔合わせの時間はこちらで設定しましたが、それ以降は編集者に委ねました。時間をつくるのも編集者の仕事です。放課後や昼休みなど合間を縫って、声をかけています。

AN

(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2020年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

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