タイトル: ココドコ
探究領域: 時空因縁
セントラルアイディア:俯瞰と抽象化が理解を深める。
[2年生]
これは ↓ みなさんよくご存知の国土地理院発行の2万5千分の1の地図。今回、2年生の子どもたちと探究する「ココドコ」というテーマ学習でフィールドワークする「範囲」がココです。
ははあ、なるほど、地図を読む学び、そして地図を見てどこかに行けるようになる学びをするのだな……とお思いの方も多いでしょうが、それだけならTCS流の「探究」としては物足りません。では、どんなことを行うのか。それは、モノの見方・とらえ方・あらわし方を学ぶのです。
つまり、既存の「地図」を読めて、使えるようになることにフォーカスするよりも、まずは、ある決まった範囲内を歩いて、歩いて、歩きつくして、「地図」で表すことを「感覚」でつかみ、自分の頭の中に「地図」を描けるようになることを目指します。
子どもたちに示したミッションは、
アリの目とトリの目を持って「犬囲い」のあった「範囲」を歩きつくし、オモシロイ発見のあった場所を書き込んだ「オリジナル地図」をつくること!
でした。
まちたんけんしまくりで、ほとんど外に出っぱなしだ!と告げた途端、もちろん子どもたちは大喜び。「地図」をつくるということにも興味津々。でも、アリの目とトリの目になって歩き回ることと自分たちなりの「略図」をつくることとがどうつながるかについてははっきりしません。そこである子に i-pad を持ってきてもらい、グーグルアースでスクールの場所を見てみよう!と告げます。
子どもはグーグルアースで航空写真を見るのが好き。自分の家や友達の家、自分が行ってみたいと思った場所を休み時間に友達と一緒に調べていました。だからも操作方法も覚えています。これがデジタルエイジの学び方。スクールの住所を口に出して、「音声認識」させれば、宇宙からぐんぐん下に降りていきます。トリの目どころか、人工衛星の目です。でも、おかげで実際にトリの目になって、上空から眺めるとはどういうことか実感できます。そして、トリの目になって眺めて見えたまちの姿を、線や記号を用いて正確に表したのが地図だということもよくわかりました。
「地図」が、トリの目で「俯瞰する」視点でつくられているのをつかんだところで、「地図」で表されている範囲を実際に歩いてみて、「地図」と「自分の体感」とをつなげるフィールドワークにでかけます。「縮尺」という言葉をまだ子ども達は知りませんが、地図は実際の「きょり」を縮めて表現していることは了解しています。ただ、「地図」の「縮尺」と「自分の体感」とがつながっていないのです。
地図上の「長さ」は実際だとどれぐらいの「きょり」なのか、その「きょり」をどれぐらいの「じかん」で歩けるのか……「実感」するには、実際に測定してみるしかない!そこで、今回の学びのために秘密兵器をゲット。タイヤをころころ転がすと「メーター」が10cm刻みで距離を表示してくれる「ロードカウンター」を手に入れました。この「ロードカウンター」と「ストップウォッチ」を持って、早速、フィールドワークに出ます。
「500mおきに交代だよ」
ちょうど今の中野駅をほぼ中心として、南は大久保通り、西は環七、北は早稲田通り、東は、スクールの前を走っているもみじ山通りに囲まれた広大な範囲が、生類憐れみの令で集められた野良犬が収容されていた「犬屋敷」だったのです。それがいったいどれぐらいの「広さ」なのか、しっかり「きょり」と「じかん」を測定しながら実感します。500mおきに交代しながら子どもたちは、計測してゆきます。
「もう1000だよ!」
「3000が近い!」
「今、何分?」
「45分になるよ!」
ただ歩いていると、まだ着かないの?となるのに、面白い器具を持って測定しながら歩いていると、休むことなくどんどん歩いてゆくから不思議です。
ぐるりと一周して再びスクール到着!子どもたちは疲れた様子は皆無です。さあ注目の「メーター」の数値は……5213……ということは約 5.2km。時間は74分。スゴイ1km 15分以内のペースで歩き通しているじゃないですか。小2なのになかなかの脚力です。
部屋に戻って、地図を眺めてふりかえり。グーグルアースの「ストリートビュー」で確かめながら、どのルートを歩いたか地図で確認します。
「目盛りが1000まで行くと1kmなんだけど、地図でどのぐらいまで歩いたかわかる?」
「えっと1000ということは○○ちゃんと交代したところだから、あああの辺りか……」
なんとなく「地図」の「長さ」と歩いた「きょり」の「実感」とがつながり始めました。でも、まだまだ不十分。そりゃあ、まだ1回歩いただけですものね。さあ、これから、何度も、この範囲をあちこち歩き回りますよ。その度に、「きょり」「時間」「方角」をいろいろな器具や方法を用いて調べ、毎度、毎度、地図で確認してゆきます。
自分の「感覚」と「地図表現」とのつながりが確かなものになっていけば、頭の中に「地図」ができ、その結果、行きたいところを的確に伝えることのできる「略図」ができるはず。そんな「仮説」を確かめるべく次週も「距離感覚・時間感覚」を研ぎ澄ますフィールドワークに出ます。
RI
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