タイトル:Orderless World
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:「文明の歴史から私たちの現在と未来が見える。」
[5・6年生]
「今回のテーマのタイトルは”Orderless World”です。」
私の第一声にざわつく教室。
「あれっ、”Borderless World”のBの文字が無くなってる!」
「手紙やメールを出して、切手とか集めるんじゃないの?」
先輩達の活動を覚えていて、てっきりそれを踏襲するものとばかり思っていた子ども達。
想定外のことに、彼らの頭の上にクエスチョンマークが飛び交うのが見えるようです。
テーマの内容を一新するに至った経緯と今回のミッションを告げると、チャレンジングな課題であることは何となく伝わったものの、今後の展開についてはまだまだイメージが湧かない様子。
まずは、今回のキーワードとなる「文明」を切り口に子ども達のprior knowledgeを探ることにしました。
「マヤ文明って聞いたことあるよ。前に世界遺産の番組で特集されてた。」
普段からいろんなことに興味関心を持っている6年生の女の子が口火を切ります。
「ほお、ちなみにマヤ文明ってどこで発展したの?」と私が問い返すと、
「うーん、インドかな?よくわかんないなあ・・・」と途端に声が小さくなります。
見聞きした情報は多いものの、少し掘り下げて聞いてみると、まだまだ知識はあやふやのようで。
「言葉を話せるっていうのはあるんじゃない。あと、手を使ってものを作れるとか、建物や武器みたいな。」
今度は6年生の男の子が発言します。
(おっ、早速、「文明」を構成する要素に関することが出てきたな。)
そう心の中で思っていると、間髪入れずに別の男の子が意見をかぶせてきます。
「そうなのかなあ。この前テレビで観たんだけど、言葉を持たずに踊りで思いや感情を伝える部族がいるんだって。だから部外者には意味がわからないらしい。だけど、あれも文明に含まれると思うんだよなあ。」
さすが、高学年!このやりとりには唸らざるを得ません。
言葉を話さないからといって、「文明」がないと言い切れるのか。
そもそも人間社会を単純に「文明」と「未開」の対立概念で捉えること自体が危険なのではないか。
早くもテーマの核心に迫る問いが浮かび上がってきます。
そんなやりとりが続く中、今度は文明が滅ぶ/滅ばないの話題に。
「文明って、ものじゃないから無くならないよね。じゃあ、文明が滅ぶってどういうことなの?って感じ。」
「うーん、それはその文明のことを信じる人がいなくなることなんじゃないかな。」
「僕は新しい文明が始まることが前の文明の終わりだと思う。」
「文明」という捉えどころのない言葉について質問したところで、全然意見が出て来ないんじゃないか。
正直、授業が始まる前まではそんな心配をしていましたが、それは杞憂でした。
子ども達が持つ豊かなprior knowledgeでみるみる模造紙が埋め尽くされていきます。
「でも、やっぱり『文明』の言葉の意味がよくわからないんだよなあ」というつぶやきが聞こえてきます。
「似た言葉に『文化』ってのがあるけど、その違いは何だと思う?」と視点を変えて問いかけると、それには
「『文化』はそれぞれの国の暮らし方ってことじゃないの」と即答が。
「そっか、きっと『文明』って『文化』と『発明』のそれぞれ一字を取ったものなんじゃないかな。」
なぜ、こんなシャープな意見が出てくるんだろう。
他の意見に刺激を受け、新しく生まれた考えが連鎖していく感覚。
これだから子ども達との議論は楽しくて止められません。
あっと言う間に時間が過ぎていき、最終的に「文明に発生条件はあるのか?」という疑問に行き着くことに。
そこで、ジャレド・ダイアモンド博士の大ベストセラー『銃・病原菌・鉄』を参考資料に、「文明とは何ぞや?」を紐解いていくことにしました。
HY
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