[6年生]
font size=”2″>
[6年生]
エキシビションとは、子どもたちがこれまで学んできた内容、方法を総動員して、興味・関心のあることを追究し、その成果を様々なメディアを活用して発表します。子どもたちが「自律的」に学ぶ力をどれだけ育んできたかを「評価」するのです。したがって、探究教師の役目は、子どもたちの追究のペースメーカーとなり、応援するだけ。いわゆる「指導」は一切しません。見守り、激励し、応援することが役目……というとかっこいいですが、結局、子どもたちが自ら探究しようという力をどれだけ培う機会を与えてきたか、探究教師としての力量を問われるわけです。
そのときの最大の難関がセントラルアイデアを子ども自ら決めるということです。これまでは、セントラルアイデアは、先生から与えられるものでした。子どもたちは、与えられたセントラルアイデアを基にして、実際に行う「プロジェクト」を「ミッション」化しました。しかし、エキシビションでは、自らセントラルアイデアをを決めるところからスタートです。
春から、やりたいテーマが見つかっていたし、夏休みのプロジェクトもそのテーマについて調べました。本も積極的に読んでいるし、ネットの情報も探している。この結果、知識量はそれなりのものになりました。しかし、いつまでたっても肝心要のセントラルアイデアが固まりません。
「神道の大らかさということを伝えたいということはよくわかるんだけど、それはなんのため?」
「イオンを超えた街っていうけど、なんでそんな街が必要なの?」
と問いかけ、語り合っても、沈黙……まとまらないまま、時だけが過ぎてゆきます。
ドキドキなのは、子どもたち以上に、これまで彼らの学びに付き添ってきた私の方です。
もし、しょぼいものになってしまったら……なんだテーマ学習を長年積み重ねてきてもこの程度かと思われてしまう……そうならないように介入しようか……
妙な「下心」が生まれますが、じっと我慢です。リソースを探したり、現人との出会いを助けたりというような「リサーチ」するうえでの下働きや、プランを立ててしっかり学びを進めているか確認するといった最低限のサポートに専念する!まさに「かわいい子には旅をさせよ」です。
TCSのテーマ学習は、ミッションにもとづいてプロジェクトに取り組みます。ミッションは天から降ってくるもの。子どもたちが選んだわけではない課題に取り組み、やらねばならぬことの中にある価値を見出してゆく学びです。そこで出てくる疑念は、所詮、与えられた課題にしか対処できなくしているのでは?つまり、自らミッションを見出すことはできないのではないかということです。この疑念を晴らすには、子どもたちが、これまでの学びの蓄積を通じて身につけた学習スタイルを駆使して、意義のあるセントラルアイデアをつくれないといけません。
社会とのつながり、そして自分とのつながりを明らかにするコンセプト。ただやりたいからやるのではなく、みんなと幸せに生きてゆくためにはこんなアイデアが必要だ……それがセントラルアイデアです。
そこで、セントラルアイデアと自らやりたい課題とをつなぐ「コンセプト」を投げかけます。
「エキシビション全体を貫くテーマは conflict 葛藤なんだよね。葛藤を解決するためにどんなことができるかっていう観点で考えてみるとどうだろう?」
それでもなかなかアイデアが出てきません。まあ、ここで妙にあせっても仕方ありません。どうせ一日中、エキシビションに没頭できるんだからのんびりいきましょうと腹をくくります。すると
「一神教の神様を信じることと、人が仲良くできないのは別だと思うんだよね」
おお、これはいいところに気がついた。その調子で考えを進めてみよう!と促すと
「神を尊重することと、人が仲良くすることを両立できるんじゃないかと思うんだよね」
それだ!それがセントラルアイデアだ!それぞれの宗教の神様のよいところはある。それを認めつつ、人々が仲良くする道を模索する。そのときに神道の大らかさが役立つのではないか。これはオモシロイ。ということで、彼女のエキシビションのセントラルアイデアは、「神と神は共存できないが、人と人は共存できる」となりました。
セントラルアイデアが固まれば、あとはキーコンセプトに基づいて「仮説」となる問いを挙げてゆく段階に入ります。そのあたりのところは次のお楽しみ!
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。