[3・4年生]
今日は10月26日(土)。すっかり朝寝坊した朝。コーヒーを飲もうと思い、ポットをコンロにかけ、朝刊でも読もうと思い、ふと食卓を見るとバケットが。そこにはデカデカと「消費期限」が書かれています。
2013年10月24日
見事に2日過ぎています。しかし、見る限り何の問題もなさそう。焼きたてのときに比べたら「おいしさ」は落ちているのかもしれませんが、食べられない代物ではありません。ニンニクの欠片があったので、それを薄くカットしたバケットにすりこみ、オリーブオイルをぬってオーブントースターへ。北鎌倉にある最高に美味しいコーヒー店の豆をドリップして自ら入れた至高の一杯とともに、あっという間にカリカリの食感と風味抜群のガーリックトーストのできあがり。チーズをのせればそこそこのオードブル。なんともリッチなサタデーブランチのひとときです。
しかし、世界では、まだ食べられるにもかかわらず賞味期限や消費期限が切れてしまったからという理由で、廃棄処分に回されています。
農林水産省のデータによると、日本では年間1800万トンの食品廃棄物が排出されていて、そのうちの 500〜800万トンが本来食べられるのに捨ててしまっていると試算されています。
「うちは消費期限とか過ぎてたらどんどん捨てちゃってるよ」
「うちも食べなくて結局冷蔵庫の中で腐っちゃった肉とか野菜とか捨てるときがある」
例によって「食料廃棄」ということについての子どもたちの prior knowledge を探ることからスタートすると、真っ先にこんな発言が出てきました。
「車でわざわざたくさん買い込んだのに結局使わないで捨てたこともあった」
「バイキングのレストランでたくさん残ってる食べ物が捨てられるのを見たことがある」
テレビで見たという情報もありましたが、自分の直接経験としての語りがたくさんでてきました。食料廃棄は、子どもたちの日常として当たり前のように生じ、目の当たりにしていることが明らかになってきました。
「給食のときにこんなに残している人がいたよ」
上の写真は、そんな子どもの訴えがあったときに私が証拠写真として撮影しておいたものです。このときに子どもたちがショックを受けたのは、骨がなく、子どもたちがおいしい!と喜んで食べていたサーモンフライがメニューだったのにほぼ丸々残されていたからです。
平気で食べ残す……食べないでダメにする……食べられることなく、買われることなく捨てられる……
身近に存在する課題であり、子どもたちが「実体験」を既に持っていて、このままではよくない……という「問題意識」を抱いている課題について探究していくのが今回のテーマ学習の特徴です。子どもたちの関心をよびおこしやすい課題であることは間違いありませんが、だからといって楽な探究にはなりません。なぜなら、根本解決となるとしょせんキレイゴトを口にして終わりになってしまいがちなテーマだからです。この点をどう乗り越えてゆくかが今回の探究のカギになります。
ではどうするか……
まず、公表されているデータに基づいて実態を正確につかむこと。次に、問題を生じさせている背景や他へのつながりにまで意識を広げること。そして最後に、じゃあ自分たちが何をしたらよいか考え、実際にアクションを起こすことが求められます。
そのために、子どもたちには2つのプロジェクトを提示しました。ひとつは、自分たちが知ったこと、理解したこと、そこから考えた実行できる解決策を教科書としてまとめること。もうひとつは、実際に自分たちの考えた解決策を実行し、食品廃棄に対してどう取り組むかアピールするプレゼンテーションを行うことです。
この2つのプロジェクトを支えるミッションは「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということ。食料廃棄「を」知るだけの調べ学習では終わらず、食料廃棄という問題を通じて、この問題を引き起こす根本にあるライフスタイルを見直すことです。このミッションを提示した途端、ある男の子が、おばあちゃんから聞いた言葉を思い出しました。それは
吾唯足るを知る
おばあちゃんが京都に旅行に行ったときにこの言葉の刻まれた石があったと教えてくれて頭に残っていたそうだ。これだから子どもの prior knowledge をなめちゃあいけない。面白がって mining してゆけば思わぬ宝物に見事にぶつかるのです。
京都・龍安寺のつくばいに刻まれた言葉こそ、まさに今回の探究のミッションそのものではありませんか。ワレタダタルヲシルということを日々実感して生きてゆくのは我慢しなくても結構できるじゃないかという発想につながるアイデアを食料廃棄について追究してゆくことで構築してゆく旅の始まりです。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。