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遺伝ってなんだ? イメージマップ作成

[5・6年生]

宇宙紙芝居以来、数ヶ月ぶりに5年生、6年生とテーマ学習を行います。

「遺伝やるんだよね?」

もう、どんな内容かなんとなく知っている子もいます。

「そう、でも『遺伝』を知ることは入口で、学びのゴールじゃない!」

私のこの返しにも、みな「当然」という顔をしています。長年、一緒に
やってきているんだからそんなことはわかっているよという顔つきです。

「まず、イメージマップ作るんでしょ!」

彼らは“学びの流儀”を熟知しています。壁にはってある模造紙を使って
これから何をするかということはもとより、「何のために」イメージ
マップを作るのかも分かっています。

ちょっと話が脱線してしまいますが、私がテーマ学習の最初に必ず子ども
たちと作る「イメージマップ」について一言付け加えておきましょう。
「イメージマップ」とは、アイデアを外在化するために、思い浮かんだ
言葉をまず書きとめる手法です。これは、トニー・ブザンの手法として
有名な「マインドマップ」と似ています。にもかかわら、なぜ「マインド
マップ」と呼ばずに、「イメージマップ」と呼んでいるかというと、

「マインドマップ」がアイデアの階層構造を意識して、整理しながら作成
を進めてゆくのに対して、私が子どもたちと作っている「イメージマップ」
は頭に思い浮かんだものをとにかく書き写してゆくことを優先している

からです。

子どもたちの頭の中に、これから「探究」を進めたい「テーマ」について
どんな考えが渦巻いているのか、率直に吐き出してもらう……子どもたち
がどんな先行体験をしていて、どんな既有知識やイメージを抱いているか
あぶり出すためのマップ作りなのです。このマップを得ることで、探究
教師は、子どもたちがどんな興味・関心を持ち、どんな違和感、困惑を
抱いているか把握し、「追究」のゴールに向けて、どんな学びを構築して
ゆけばよいか考えることができるのです。

さらに、「イメージマップ」は、探究教師がモデレータになり、子ども
たちみんなでイメージを語り合って作り上げることにも大きな意義があり
ます。自分がもともと持っていた知識・イメージだけでなく、他者の意見
に“刺激”されて思わぬ考えが飛び出して、よりイメージが広がり、深まっ
てゆくからです。みんなで語り合うことで、マップはどんどん豊かになり、
共同追究に向けての一体感も次第に醸成されてゆきます。

さて、話を授業に戻して……

今回の「イメージマップ」は、やはり「遺伝」について創ってもらいました。
いつも通り、一人ひとり順番に、「遺伝」について知っていること、思って
いることをどんどん出してもらいます。一巡目は、「伝える」「受け継ぐ」
「DNA」といった基本的な言葉が出てきます。しかし、TCSでテーマ学習を
積み重ねた子どもたちの「本領」はこの後、次第に発揮されます。

こんなバカなことを……とひらめいたアイデアを逡巡して語らないことも
ないし、だからといって受け狙いのチャラけた回答もない。そして何より
「立派!」なのは、相手のどんな意見も、「発想の種」と心得て、“そんな
ことあるわけない”と否定することがありません!だから、マップが豊かに
なってゆきます。

「基本的に親とそっくり」

(おっ!面白い「言い方」をしてきたぞ!)

こういう意見を子どもが出したとき、探究教師の腕が問われます。

「イメージマップ」を作成する目的は、子どものイメージ&思考をしっかり
つかみとることです。したがって、教師が子どもの言葉を「整理」したり、
「まとめて」記述したりすることは御法度!そんなことをしてしまっては
「イメージマップ」の価値が台無しです。なるべく子どもの言葉を正確に
記してこそ、子どもたちのリアルなイメージがあらわになるのです。

「“基本的に”親とそっくりなんだね。面白いね。それどういうこと?」

とさらに深ぼりする質問を子どもに返しつつ「マップ」には、「基本的に
親とそっくり」と書きとります。

すると……

「だって、ただ同じじゃなくて、たとえば、一部のパーツだけ似たりする
じゃん」

この意見をきっかけに、遺伝には、「同じ」部分を受け渡すという特徴だけ
でなく、少し「違って」受け渡すという特徴があることに子どもたちの目が
向きます。こうして、発言の連鎖は続き、発展し、1つの視点に固まって
滞ることはありません。子どもたちは大いに盛り上がって、アイデアを出し
続けます。それどころか、初回の学びであるにもかかわらず、遺伝を「運命」
ととらえるべきか、さらには、「変化」こそ「遺伝」の大事な役割なのでは
ないか、という、“自主自律”という探究領域で追究したい本質的な話題が
出てきてしまいました。

子どもたちの持つ「先行知識」をあらわにする素晴らしい「イメージマップ」
ができあがり、子どもたちの学びへの意欲も高まってきました。

続いて、遺伝と進化についての論争的な話題について子どもたちに提示し、
ディスカッションしながら理解を深めつつ、新たな概念づくりに挑戦です。 

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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