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My Heroはスゴイ!

[3・4年生]

さあ、週が明けてついに全員の My Hero が固まりました。
週末もう一度悩んで悩んだ末に、先週とは違うヒーローを選んだ子
もいましたが、それも大事な学びの過程です。なぜなら、自分が心
から語りたくなる My Hero に感情移入して初めて、自ずと自分の
生き方と対比しようという気持ちが生じるからです。本気で My Hero
と思える存在を選べないとこの学びは中途半端なものになってしまい
ます。そこで、どこまで「本気」なのか確かめるために、My Hero
についてどんなことを調べてきたか、それぞれ語ってもらいました。

「調べてきたこと全部じゃなくて、一部でいいんだよ」

と言ったにもかかわらず、みな止まらない!止まらない!熱く、とめ
どなく語り続けます。

「おっちゃんの知っている昭和のときと平成になってからは全然違う
んだよ」

登場して既に40年近くたち、いまだ人気が衰えない、ある人気キャラ
クターを選んだ子は、キャラクターの人物像が昭和と平成では大きく
異なると主張しました。昭和の場合は、悪の組織に心ならずも「改造」
されてしまうという影を引きずりつつ、その組織と闘う正義の味方です。

しかし、平成では、そんな影は微塵も見せず、その子いわく……

“チャラい”

実際に You Tube で映像を見てみると本当にチャラい。筋肉マッチョ
ではなく、ジャニーズ系のヤサなイケメンです。しかし、そんな外見
やふるまいのチャラさとは似ても似つかぬバイオリンの名手で、遊興の
あげく30万円にも達したお店の勘定を、素晴らしい演奏を披露して
支払ってしまいます。

「それにね、毎朝、植物に対してバイオリンを弾いて聞かせることを
かかさないんだよ」

面白い! 昭和の「陰」「ニヒル」「やさぐれ」とは異なった、
平成の「軽さ」「優しさ」「自然志向」と言えるようなものが見事に
ヒーローの姿に現れているではありませんか。深ぼりしてゆけばこれ
までとはちょっと異なるヒーロー像が浮き彫りになってくるなあと
感じました。

「ぼくにも話させてよ!」

他の子も語りたくて、語りたくてうずうずしていました。ある有名な
コメディー俳優をこよなく尊敬し、ほぼ「同一化」しているのでは…
というほど心酔している子は、いつもの自信のなさなど微塵も見せず、
延々と語り続けます。中でも彼が特に伝えたかったポイントは、

いかに計算し、考え抜いた上で、笑いが構築されているか

ということでした。

「今の日本のお笑いって全然面白くないよね」

これは私のセリフではありません。彼が You Tube で紹介してくれた
そのコメディー俳優の演技をみんなで見て、おかしいし、スゴいし、
大感動し、それと比べて日本のTVお笑いがいかにしょぼいか痛感した
子どものつぶやきです。

子どもたちは「おバカさ」と「真剣さ」とが表裏一体になっている
ことを知ったのでした。

「他の子がヒーロー話しているの聞いてたら、自分もそのヒーロー
のこと好きになってきちゃった」

ここが低学年(小1・小2)の「探究」と、中学年(小3・小4)の
「探究」との大きな違いです。自分の話をしたい!したい!と思うだけ
でなく、相手の話に思わず引き込まれてしまい、その結果、これまで
意識したことのない新たな発見があることに気づくのです。

個別の追究対象を持っていても、目指す方向は一緒なので、他者の考え
と参照することで、自らの考えも深まってしまうことがわかり始める……

この感覚が、今後、協働して共通のアウトプットを求めてチームで立ち
向かうときの基盤となります。

それぞれの熱い語りに酔いしれているうちに、90分の授業が終わって
しまったどころか、10分も過ぎていました。

次のステップでは 、My Hero が「ヒーロー」の名に値する“スゴい”
ところを3つ選び出し、どのような過程を経て“スゴく”なっていったか
明らかにしてゆきました。

サッカー日本代表でもある著名なJリーガーを My Hero に選んだ子は、
オフェンスもディフェンスも両方こなせるところがいちばんスゴイと
指摘しました。そこで、

「なぜそんなスゴイ部分を見せられるんだろう?」

と問いかけると、

「普通の人は後半になると体力が落ちて、オフェンスできなくなって
しまうんだけど、○○は、後半になっても体力が落ちないんだって」

と答えました。

「じゃあ、次に考えることは、それだけ強い体力をどうやって身に
つけてきたかだね。それが成長・変化に目を向けるということだよ」

と促します。すると、集めてきた資料を読み直し始め、気になる部分
を見つけ出しました。

「小さい頃からとにかくケンカばかりしていたことが関係している
ような気がする……」

確かに、ケンカによって肉体的にも精神的にもタフになり、闘争心が
育ったという予測は成り立ちます。では、どんなケンカをしていた
のか、ケンカ以外に何か強靭な体力を養うことにつながったことは
ないのか、新たな問いがどんどん生まれてきます。

資料を集めて、ただ書いてあることを読んで、面白そうなところを
漠然と書き写すことが「調べる」ことではありません。自ら立てた
問いについて、集めた資料を読み込み、答えにつながるような部分
を探し出し、得た答えからさらに新たな問いを導き出す……

このサイクルを繰り返すことが「調べる」ことなのです。

引き続き来週も、自ら本質的な問いを出しては答え、さらに新たな
問いを投げかけ、発見と理解を深め、豊かな My Hero 像を創り出し
てゆきます。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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