【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】私たちは水と共に生きている。
<テーマ学習> 〜レポート
先行知識の確認
まずは子どもたちが持っている「水」に対してのイメージや知識を共有していきました。
全体的に普段関わっている生活のシーンでのイメージや知識がほとんど。
「人間の体の70%は水でできている」「水がないと生きていけない」「水は形を変えることができる」「水を飲まないと怒りっぽくなる」など、身近な「水」に対するイメージが出てきました。
その中でも1人のキッズが海外の水はフィルターがないと飲めないし、そのまま飲めるところがほとんどない、という意見で「僕も家にはフィルターがついていてそのままは飲まない」と共感を呼ぶ意見もありました。
そして、海外の「水事情」も子どもたちにはほとんどないことが見えました。
ここから子どもたちが水に対しての価値観が、どう変わっていくのか楽しみなところではあります。
自分たちが普段、身近な場所でどのように水を使用しているか、調査を行う。
ということで、普段 飲み水として使っている「水」について飲んでみたい!という意見が多かったので、調査してみました。
スクール内の4箇所の水を飲み比べです。
・1階駐車場の水道水
・2階トイレの水道水
・2階カーテン裏の水道水
・3階給湯室の水道水
3階の給湯室は、いつもスタッフが使用していて美味しそう!と評判でしたが、果たして…
まずはチームごとに集めてきた「スクールの水道水」を見た目、色、匂いなど情報を集めてまとめてみました。
各箇所の「水」の違いを利き水をするかのようにチェックしていました。
若干のカルキ臭を感じるキッズもいれば、見た目の色で「これ少し黄色くない?」というキッズもいました。
チームの持ってきた「水の情報」も揃ったところで、「水の飲み比べ」をしてみました。
キッズからは「2階のトイレの水は絶対に飲みたくない!」と声を揃えて言う中、何人かは「飲んだことないから飲んでみたい!」と言う意見も。それを聞いて「2階のトイレの水飲めるの?飲んで大丈夫??」と心配する声も。
同じ水道なのにこんなにイメージや見た目に違いがあるんですね。
思い込み?もあるのかもしれません。
しかしスクールの水道はほとんど飲み水では使用していないことも見えてきました。
試飲してみた結果は、ほとんどのキッズが「これは甘くて美味しいから絶対3階の給湯室だよ!」と自信満々の声が。
でもその「水」は実は2階金カーテン裏の水。
結果に驚く子どもたちからは、「トイレの水じゃなくて良かった」と本音がポロリ。
子どもたちにとって、そもそも「水道水」は飲み水ではないと言うことが見えてきましたね。家でもフィルターがついていないと飲まないと言うことです。
普段持参している水筒の水は、大部分のキッズがミネラルウォーターでした。
スクールでの使用シーンを考えてみる
普段、スクールと家ではどのように「水」を使用しているかを考察してみました。まずはスクールでの使用シーン
※ 水量はあくまでも子どもたちの予想水量です。
よく使用しているスクールの6箇所に絞って調査してみました。
・キッチン掃除
・給食の食器洗い
・洗濯機の使用水量
・トイレで使用する水量(男子トイレ女子トイレともに)
・アートの後の使用水量
・登校時の手洗い
洗濯機の使用水量調査は、洗濯物の量によっても変わることに気づいていました。
洗剤も使うし、実際に使っている人に聞き込みをしていました。(実際に洗濯しています。洗濯機の使い方を知らないようです。)どんなふうに洗濯されるのか興味津々でした。
実際に雑巾を使った後に、きれいになるまでいつも通り洗って、水量を測りながら調査していました。
各チームで実際に水量を計算したり、実際に流している水量で、ペットボトルを使い計算していました。
一体どのくらいの水量がスクールでは使われているのでしょうか?
まだ子どもたちの思考は、スクール全体での使用水量まで意識は回っていないようです。
水はどこからきて、どこにいく?水の”循環”を知る。
では使った水は、一体どこへ行ってどうなっているのでしょう?
子どもたちの意識は流すまではありますが、その後どうなると思うか、の問いにほとんどのキッズはよくわからないようでした。
そこで、東京水道局の「水」はまずいと言っていたのですが、実際に行ってみてみよう!と言うことで「落合水再生センター」へと足を運んでみました。
まずは水再生センターの働きを知ることで、自分たちと深い関わりがあることを学びました。
水が蛇口から出てまた蛇口に戻ってくるまでの「水の循環」を知ったことで自分ごととして考えるきっかけになったようです。そして日本の水環境の良さもこれから実感していくための良いきっかけになりました。
再生センターのそれぞれの工程を見ることで、水が浄化されて海に戻っていることがわかりました。現地を見ることで実感値が上がりますね。
「水の中に微生物がいるんだ?!」と水を浄化する上で欠かせない微生物に驚くキッズたち。
中には知っている微生物もいて、水の浄化のメカニズムも学ぶことができました。
リサイクルされる中での廃棄物も、無駄にしていないことに驚きもありました。
マンホールには東京都水道局のマークがあって、そのマークにも意味があることを知り、今まで見たことがなかったマンホールにも視点が向くようになっていました。
東京都の水道の歴史を知るために「東京都水道歴史館」を訪問する
神田川のすぐ横を通って東京都水道歴史館へ
水の循環がわかった上で、今度はその歴史となぜ日本の水環境が世界でもトップクラスになれたのかを知るために、歴史から見ていきました。
理科的な水道の機能や物理的な構造を学ぶ実験もあり、子どもたちも「これ、理科でやってみたい!」と話していました。
玉川上水ができた歴史的背景や現在の神田川への水の流れや水路を学びました。
玉川上水から東京湾までの水路
日本の水環境を学んできたキッズたち。これからは世界の水事情にも目を向けていきます。
日本と違う世界の水環境を子どもたちはどのように捉えどのように考えていくのでしょうか。いよいよ子どもたちが自分ごととして、「水」を考えるターンです。
水の使われ方・資源としての有限性と、そこにからむ問題点を知る。
この映画を見たことによって子どもたちは世界で起きている水の問題や水の価値観について、今まで考えたことがなかったような認識になりました。
「水は誰のものでもない、みんなのものでしょ?」という価値観が世界では変わりつつあって、そこからさまざまな問題が巻き起こり、今自分たちにもその影響が及び始めていることに気づいていました。
水はあって当たり前ではなくなってきました。
その価値観の変化が自分ごととして考えるいいきっかけになっていきました。
映像を見終わった後のふりかえりでは、信じられないことがたくさんありすぎて、ショックを受けているキッズも。
でもこの発見が次のステップの大切な思考に繋がっていきます。
水は限りある資源か?限りない資源か?
身の回りにある水。無意識の中で使用しているところから、今は意識して考えるようになった水です。
そして水が日本ではどのようにして自分たちのもとに来て、またどのようにして巡り「循環」しているのかが見えてきたところで、これからな世界に視点を変えて探究していきます。
そして今回の探究をしていく中で取り組みたかったことが、ディスカッションスキルを上げていくこと!
探究を2学年で行っていく中で、磨けるスキルがあります。多人数で行うディスカッションスキル。
チームで行ったり少人数で行ったりすることもありますが、今回のテーマ「Be water」では全員でのディスカッションを仕掛けとして入れています。
このタイミングでディスカッションすることで、水に対する個々の価値観の確認と意識、そして考えていることをシェアすることができますね。
まずはディスカッションしていく上でのコツをみんなで共有して、そのポイントを押さえながら何度も行いました。
今回のディスカッションのテーマは「世界の水事情と自分たちに及ぼす影響」です。
ディスカッション
・人の目を見て聴く・話したい時は手を挙げてから・話を被せないないなど、ディスカッションのコツを活かして行った結果、円滑に出てきた意見に対して複数のキッズの意見が飛び交いました。がまだまだ全員が参加してのディスカッションには程遠い印象。考えがあるのかないのかわからない、決まったキッズしか発言していない、など、会話のキャッチボールも磨きどころがたくさんあるというふりかえりでした。
世界の水事情と自分たちに及ぼす影響
世界の水事情はわかったが、その問題に対して自分たちはどんなことができ、どのような価値観で水とともに生きていけるのか、そんな視点で考える準備はできたようです。
水の重要性とともに、これから自分たちの価値観と考えをまとめていくターンです。
生き続けるために、私たちができることはなにか
チームによるディスカッションで世界と日本の水事情(問題、歴史、現状)を比較して、自チームによる考察を出していく。
節水(リデュース)、再利用(リユース)、再生利用(リサイクル)
オルタナティブ利用(別のもので代用 など、いくつかの観点が出てきました。
探究の流れを再確認し、考え方をもとに考察していく
水と自身の関わりについて省察し発表内容をまとめて磨いていく
使用するスライド用の写真にもこだわっています。
プレゼンテーションでは、『賢い水との付き合い方』を提案しました。
探究のふりかえり
後記
今回の「Be water」は視点を海外と自身の身近な日本の水事情に向けて探究してきました。
探究当初は子どもたちの水に対する認識は、無意識の代物。そして生きていく上でなくてもいいものでした。
しかし、探究していく中で大きく変わったのが水に対する価値観でした。人間だけでなく生き物が生きていく上で欠かせない「水」。
そんな世界における水の現状を知っていく上で、自分たちがどれだけ恵まれているのか、当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったことなど、無意識の代物から未来へ向けて考え取り組んでいかなくてはいけないという思考に変わっていったことが大きな学びでした。
日本の優れた上下水道の仕組みや、今の日本が問題としているバーチャルウォーター(仮想水)の輸入など、見えていなかった日本の問題点も知ることができ、今後の水への価値観が180°変わったことが、学びを深めていくごとに感じられました。
発表に関しては、伝えるための文章力や語彙に、まだまだ課題が多かったことも、今後の3、4年生の学びの糧となっていくと考えます。
真剣な気持ちと考えを伝えるときだからこその緊張もあったと思います。
ふりかえりの中でも、「伝えたいことが上手に伝えられなかった」と次回こそはという決意を持ったキッズも多くいました。
3、4年生が中心になって、「スクールや家での賢い水との付き合い方」に取り組んでいく姿に期待したいと思います。
HM
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)