特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

東京コミュニティスクール

03-5989-1869

school@tokyocs.org

〒164-0001

東京都中野区中野1-62-10

東京コミュニティスクール

「日本フード記」4年生 テーマ学習〜レポート

 

 

【探究領域】万象究理
【セントラルアイディア】「フードの源は風土にあり。」

<テーマ学習> 〜 レポート 〜

私たちの食生活

「食」を題材に進めていく「日本フード記」。今回は「今日の朝ごはん、何食べた?」という問いからスタートしました。え、なんのテーマやるの…?と不思議そうな表情ではありながら、みんな少しずつ朝の記憶から何を食べてきたのか教えてくれました。

休日の朝ごはんだったらクリームパスタとか食べちゃう!、ご飯とパン、どっちも食べてきた!という強者もいる中、主食は、ご飯、パン、コーンフレークなど、様々な種類が出てきました。聞いていく中で一番朝ごはんに食べられていたのはヨーグルト。9人のうち、4人が毎朝のように食べていました。

へー、結構ヨーグルトみんな食べてるんだね、じゃあヨーグルトって何からできてるか知ってる?と聞くと「牛乳!」とすぐ反応が返ってきます。じゃあ牛乳ってどこで作られてるんだろう?と更に返すと「北海道じゃない?だって牛乳のパックに『北海道牛乳』って書いてあったよ!」とのこと。ふむふむ、結構パッケージも見てるんですね、面白い!

でも逆に、北海道以外のイメージって出てこない。あれ、じゃあ日本では北海道以外に作られてないのかな?なんで北海道では牛乳が作れるんだろう?

「牛乳は牛の乳でしょ!牛が育ちやすい場所が北海道にはあるんじゃない?」

「北海道には草原があるじゃん!そこで牛が育ってるんじゃない?」

じゃあ例えば東京じゃ牛が育つのって難しいのかな?

「難しいよ、だって草原がないもん」

「見渡す限りひろーーい草原とかで牛は育つんだよ」

「育つ場所が狭いのは動物にとってストレスだし」

「都会じゃ無理だけど、多摩だったらできるかもね」

子どもたちの話題が少しずつ土地の話になっていきます。そしてここで、テーマタイトルを発表。

「世界フード記じゃないの?!」と子どもたち。今回は、「日本」の「食」と「風土」をテーマに探究していくことを伝えました。

同じ年度に、同じセントラルアイディアで、空間領域を狭めて探究する今回のテーマ。5,6年生とはまた違ったプレゼンテーションを作っていくこと、ご当地フードマップの作成してプレゼンテーションをすることを伝えると「めっちゃ楽しそうー!」と、どんどん気合いが入っていくキッズたち。キッズたちの勢いが上がってきたところ、ちょうどコメタンの脱穀タイミングでお米の話をしていたこともあり、お米を題材としてスタートしていきました。

まずはみんなが普段食べているお米の産地とブランドを聞いてみると…。

 

北海道、新潟県、岩手県、富山県など、様々な産地・ブランドが出てくると、

「なんか寒い地域に多くない?」という声が聞こえてきます。確かに、食べられているお米の産地に何か共通点がありそうです。

そこで、グループに分かれて実際にどの地域でお米が作られているのかを調査し、その理由の仮説をそれぞれ立ててみることにしました。

都道府県の位置関係を学ぶのも兼ねて、白地図に自分たちで都道府県の名前を書いていき、日本地図を完成させてから生産地ランキングを見て色塗りをしていきました。すると、いろいろなことが見えてきたようです。

・お米は北の方で多く作られている

・いなかだからお米を作るところがたくさん作れるのかな

・涼しいところはお米が作りやすいのかも

などなど…。

少しずつお米の産地についてわかってきたところで、なぜ日本ではお米が主食になっていったんだろうね?と資料を見ながら一緒に考えてみると、日本の風土がお米を作るのに適していることがわかってきました。

 

・高温多湿な気候はお米を育てるのに適している

・夏の季節風が雨を降らせるから水がたくさん必要なお米に合っている

・山地が多いから水がいろんなところに水を行き渡らせることができる

・森林が多く、農地が少ない日本では、連作ができる田んぼが適している

・雪が多い地域の雪解け水はお米にとって栄養になる

また、お米は「食」の関連で見ても、小麦の収穫倍率が100倍程度であることに比べお米は1000倍以上あることから、「少ない農地でもたくさん収穫できるからお米いいじゃん!」「それにお米は保存もしやすいんだって。」と、お米が日本の風土に合っていることに気づいていくキッズたち。

ここで少し視点を変えていきます。「食料自給率」って知ってる?「限りある資源、限りなき欲求」で学んだ自給率の概念はしっかりキッズたちに入っていた様子。じゃあ日本はどのくらい自分たちで食料を作ることができているんだろう?予想を立ててみました。

 

小麦の方は少なそう…かといってお米も全部は自分たちで作られてるわけじゃないんじゃない?予想が出揃ったところで実際の自給率を見てみると…

お米も小麦も、みんなが立てた予想よりも高い!「小麦も意外と作ってるんだねー!」「じゃあ足りない分はどこから来てるんだろう?」「小麦はアメリカとかじゃない?」いいですねー、どんどんアンテナが動いていきます。実際の輸入先を見てみると…

 

「アメリカからこんなに輸入してるんだね」
「じゃあ今円安だから、お金たくさんかかっちゃう」
「ウクライナからも輸入してるよ、この分はどうなっちゃうんだろう」

日本では食料を作る農地がそもそも少ないことを理解したうえで食料自給率を見てみると、とにかく作ればいいという観点だけでは解決策にならないことに気づいたからこそ、子どもたちはぐるぐると考えます。

「じゃあ小麦がもらえなくなったらパンとか食べられなくなっちゃうんじゃない?」

我々の「食」は日本だけでなく、他の国からの輸入によって支えられていることを知ったうえで、日本で作られた小麦で自給自足はできるのかを考えてみることに。

スライドでまとめてきてくれたキッズのプレゼンテーションを元に、自分たちで調べてきた内容をシェアして、小麦の生産が日本の風土に適していているかを共有しました。

 

・小麦は寒さに弱い!

・湿度に弱いから品種改良(あやひかり、きぬあかり、きたほなみ)をして湿度に強い小麦を作った

・小麦が育ちやすいのは地中海性気候。日本の気候でも育たないことはないけど、あんまり美味しくないみたい

・連作もできないし、稲を収穫したあとに小麦を作る裏作っていう作り方をしてるから、生産量もそんなに増やせないんだよ

などなど、日本で小麦を自給自足することは難しいことがわかってきました。「小麦がもらえなくなってもお米は食べられるからまだいっか」なんて声も。

お米と小麦を調べて比較することで、それぞれの育ち方の違いや適した風土についてより理解が深まってきた様子。そして主食に使われる食材を調査してきたなかで「じゃあ他の食材も風土に合ったものが使われているのかな?」という疑問が湧いてきました。

その疑問のアンテナを使って、次は各地域に根付いてきた「郷土料理」を調べていきたいと思います。(2022.11.11更新)

地域の食文化

お米や小麦について調べていくことで、それぞれの食材に適している気候や土地の特徴があることがわかってきました。じゃあ各地域でたくさん穫れる食材や料理にも、実は風土が関わっている…?!そんな疑問を解決すべく、郷土料理について調べてみることに。すると、郷土料理とは、その土地ならではの伝統料理であると書いてあり、普段から食べられるものの他に、正月やお盆など、特別な日にごちそうとして食べられる料理があることがわかりました。

「じゃあ、その中でみんなお正月に食べてるお雑煮、何が入ってる?」

ということで教えてもらうと、バラエティ豊富なお雑煮の素材が出てきました!

 

「えっ味噌?出汁って醤油じゃないの?」

「魚とか入ってないんだけど!!」

当たり前のように毎年食べている「お雑煮」という料理がこんなにも種類があるなんて!とキッズたちはびっくり。実は丸餅と各餅の地域分布なんかもあるみたいだよ、と各地域のお雑煮のマップを見せると、更に種類豊富なお雑煮に大興奮。

 

同じタイミングで「お雑煮」として食べているのに、まるで別物みたいな料理になっているのが面白いです。じゃあこの各地で食べられているお雑煮の食材って、各地の風土となにか関係あったりするのかな…?ということで、グループに分かれて風土について調べることにしました。

 

山地や平野がなぜ出来たのか、それらの土地の特徴が気候にどう影響を与えているのか。調べてみると、それぞれに影響している山や川などがあることがわかります。それらの影響によって、育ちやすい食材が各地域にあることもわかってきました。

「東北は海流がぶつかってるんだけど、それによって魚が集まりやすくなってるんだって!だからお雑煮に魚が入ってるんじゃない?」

「おぉぉぉぉ」

学んできた一つひとつのことが線になっているようです。じゃあ私たちが住んでいる東京都の郷土料理ってなんだろう?そう考えると、あんまり風土の特徴とか東京ならではの食材って言われてもピンとこないな…。とキッズたち。そこで、いよいよテーマ外出について話をもちかけました。今回のテーマ外出では、

・東京の郷土料理

・東京で食べられる東京以外の地域の郷土料理

の2つについて学びたいということを伝えた上で、

「じゃあ、東京の郷土料理を食べに行ってみようか!」

と、月島のもんじゃ焼きを食べに行くことを伝えました。

「もんじゃ焼き、って食べたことないかも。」

「お好み焼きじゃないの?」

「なんでもんじゃ焼きって東京の郷土料理なんだろう?」

疑問やモヤモヤのアンテナでいっぱいのキッズたち。それらのアンテナを持って早速現地で確かめてみよう!


風土とフードの変化

もんじゃ焼きのお店に到着すると、すでに街の雰囲気と出汁のようないい香りに包まれてお腹がぺこぺこな一行。

 


お店の方にもんじゃ焼きの作り方を聞きながらまずは焼いてもらいました。プロの手際ってやっぱりすごい。

もんじゃ焼きって土手を作って作るんだけど、実は昔は大きな鉄板でいろんな人が一気に焼いてたから陣地取りの意味もあったりしてね、だから今は土手にする必要もないんだけど。昔ながらの作り方をこのお店ではしているんだ。と店長さん。お好み焼きと比べて液体もサラサラしているのでこぼれないようにという理由もあったそうです。

   

「美味しい!」とあっという間に平らげていくキッズたち。「ちょっと多いかもしれないですね…」と店長さんから言われていた量をぺろっと完食(笑)追加注文をすることになりました。さすがであります。

 

帰ってきて、ゆっくりする間もなく、ふりかえり。たくさん歩いてお疲れ気味のキッズたちですが、もんじゃ焼きの美味しさをふりかえると元気になっていきました(笑)

 ・もんじゃストリートが昔っぽくて、もんじゃ焼きのお店がいっぱいあった!

 ・前に食べた時のおいしくないイメージあったけど、本物は違うなって思った

 ・こぼれないように土手を作ったっていう発想がすごい!

そして、店長さんから聞いた話もここで改めて確認しました。

月島という街、戦後近くに造船所があり、そこに勤める人が多い労働者の街でした。だから貧しい人も多くて、当時お米も貴重で高かったからまだ手に入りやすい小麦を使ったもんじゃ焼きが多く作られていたみたいです。その中で、有楽町線が開通するタイミングでこの街の名物としてもんじゃ焼きを街の食べ物にしよう!ということになり、月島のもんじゃ焼きが有名になっていったんです。とのこと。

風土とは違うけれど、その土地の歴史が生んだ郷土料理ということがわかってきたところで、時代の流れによってどのように日本の食文化が変化してきたのかを振り返っていくことにしました。

 

明治時代から見ていくと、戦後の食糧難の時代に食べられてきたものが郷土料理にもつながっていることがわかります。

「ちょっとしか食べられなかったのかわいそう」

「もんじゃ焼き、ごはんっていうよりおやつって感じだったけど、食べるものがなかったんだね」

「戦後の給食とか少なくてお腹すいちゃうな」

日本の経済発展や戦争によって、変化してきた食文化。食文化の発展に大きく影響しているのが物流や貿易。そこで、東京で食べられる郷土料理を体験すべく、中野にある郷土料理のお店に行きました。

鹿児島の名産が並ぶメニューにキッズたちは「えーなに食べようー?!」と悩みまくっております。

「豚肉も鶏肉も牛肉も全部鹿児島産なのか…全部食べたい!」

「ご飯も鹿児島産だってよ!ひのひかりってブランドみたい」

悩みに悩んだキッズたち、待ちに待ったメニューに「おいしいーーーーーー!!!」の大合唱です。

  

手前にあるお味噌は「肉味噌」といい、豚肉とお味噌を混ぜた郷土料理なのですが、ご飯が何杯でも食べられる美味しさでありました…。

餃子に使われているお肉ももちろん鹿児島産。

スクールに戻ってきてからは、どの食材がどれ程美味しかったのか、食レポ合戦となりました。

「もつ鍋は、脂っこいんだけど、脂の周りを巻いてるお肉みたいなのがすごくおいしかった!」

「ステーキは油が飛んで大変だった!そのくらいお肉に脂がのってたんだよ!」

「肉味噌も豚の旨味がおいしかった」

「ごはんも釜炊きであっつあつだったよね。食べ方まであってさ!」

でも、なんでこんなに鹿児島の名産ってお肉が多いんだろうね。すると、

「確か鹿児島県って桜島あったよね?火山が噴火して火山灰が積もるから、食物が育ちづらい地域なんだよ」

おっ!またもや今までの学びが繋がりました!

「そうか、だから食物の代わりに畜産に力を入れたんじゃない?!」

やはり、風土とフードには密接なつながりがあるのですね。

また、ここで鹿児島から東京までどうやって豚肉が運ばれてくるのかを調べました。トラックで運ばれて検査の後、お肉に加工されていくことを知ると、

「結構長い距離車に乗ってくるんだね…」

「豚とかストレス溜まりそうだなー」

と、キッズたち。じゃあ移動とかしないで加工されたお肉、すなわち現地で食べたらどうだろうね?と聞くと

「絶対東京で食べるよりおいしいじゃん!」

「東京で食べてもこんなにおいしかったのに、鹿児島で食べたらめちゃくちゃうまいんじゃない?!」

とのこと。(長期休暇で鹿児島県をリクエストされた際はぜひ…笑)

よし、じゃあ現地で食べてみたくなるような、そんなご当地フードマップを作りたいね!と最終アウトプットに向けて一層気合いを入れたキッズたちであります。

ご当地フードマップの制作

テーマ外出などを経て、いよいよ日本フード記のプレゼンテーションに向けて、ご当地フードマップの制作に取り掛かっていきました。

今回は4年生後半のテーマでもあるので、あえてプレゼンテーションのゴールイメージなど細かいことを決めない状態で、キッズたちに

「プレゼンテーションを終えた時に、聞いてくれた人たちにどんな状態になって欲しい?」

と問いかけて、一緒に考えてみました。すると、

・自分が旅行に行く時に「あそこ行きたい!」ってなって欲しい!

・いろんな地域のものをみんなにチャレンジしてもらいたい!

・地域の食べ物について一つは覚えて欲しい!

など、たくさん出てきました。このゴールイメージを頭に置きながら、風土とフードについて伝えていこう、そしてそれを後から見返せるようにマップも作っていこう、とみんなで決めて制作しています。

 

プレゼンテーションでは伝えることが限られるので、あんなこともこんなことも伝えたい!という思いがマップに書き添えられていきます。

プレゼンテーション後も掲示して年末年始や春休みに向けてみんなが見たくなるようなマップを目指していますので、プレゼンテーションをどうぞお楽しみに!(2022.12.1更新)

——

プレゼンテーション&ふりかえり

いよいよプレゼンテーション!6週間の学びを、ご当地フードマップとしてまとめ、各地方のフードと風土の特徴について発表しました。スライドのまとめ方にも個性が出ているプレゼンテーションとなりました。

ふりかえりの時間には、改めてセントラルアイディアである「フードの源は風土にあり。」についてふりかえりました。

・フードの作る場所は風土によって決まる

・例えばサトウキビは沖縄の気候にピッタリ!北海道ではうまく育たない!

・フードと風土は一心同体!

・風土がないとフードは存在しない

・スーパーで同じもの(食材)があったら、産地が違うと全然(味とか)違うと思ってた。でも、今は離れた場所で作られてても同じような気候なのかもって思うようになった

・九州の博多ラーメンと東京の博多ラーメンは違う!味の濃さとか、食材の鮮度も違うよね

・最初セントラルアイディア聞いた時は「なにそれ普通じゃん!」って思ってた。でも今はなんでそんなこと思ってたんだろって思う。その地形にしかないものとか、郷土料理とか頭に入ってなかった。フードの作る源は地形にありって感じ!

などなど。

普段当たり前に食べているものが、実は気候や地形などの風土や、その地方の文化によって生まれ、育まれていると知ったキッズたち。

「でも全然わかってない地方の方が多いよ!まだまだ調べられてない!!」

というキッズたちの言葉。いいんです、いいんです。まさにそれこそが「テーマの終わりが始まりである」ということ。知らないことを知ることで、より知りたくなる。それがTCSのテーマ学習なのであります。

「じゃあきっと、これから旅行に行くたびに美味しいものも、なんで美味しいのかも知りたくなっちゃうね!」

フードと風土について学び尽くした6週間。これからも探究を続けて欲しいと思います。

 

YH

——

(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

 

Comments are closed.
アーカイブ