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「Dear Editor」5年生 テーマ学習 レポート2

【探究領域】意思表現
【セントラルアイディア】編集によって情報の価値は変わる。

<テーマ学習> レポート week 2

今回のテーマでは、「書く」の時間で執筆したクリエイティブ作文を自分たちで編集し、一冊の本(文集)として仕上げていくことを目指していきます。

すると、とあるキッズが「本って、小説と絵本、漫画の3つにわかれると思うんだよね」と一言。

「え、そうなの?じゃそれぞれ特徴は?」と聞いてみると、
「絵本は全部のページに絵があるけど、小説は挿絵があったりして、漫画はマス目や吹き出しがある」とのこと。

それを聞いた他のキッズが、
「それだったら図鑑は?地図帳は?辞典とか新聞も本っていえるんじゃない?」
「いや、新聞は違うでしょ」
「なんで?」
「だって、紙がつながってないじゃん。重ねてあるけどバラバラに分かれるよ」
「う〜ん、じゃあ本ってどこまでが本っていうんだろう?」

Form(特性・構造)で考えていくと、紙が重なってつながっていて、読めるようになっていれば「本」といえるのか?

考えれば考えるほど、モヤモヤが募ってくる5年生たちであります。

では、そんな本ってどうやって、どんな工程でつくられているの?どんな人が関わってつくっているの?

みんなに聞いてメタメタマップにしてみた結果が、こちら!

 

おぉ!結構いろんな角度から工程や関係者が浮かび上がってきましたよ。

しかし、
「国会図書館がOK出さないと本は販売できないって、本当!?」
「本の最終チェックは誰がやるの?」

どうやら、まだまだ不確かな情報も混ざっています。

中でも一番みんなで盛り上がったのは、”担当さん”という謎の存在。
「作家から原稿もらったり連絡したりする人は、担当さんでしょ。」
「え、担当さんと編集者って一緒じゃないの?」
「いや、作家と直接連絡してるのは、担当さんだと思うんだけど」

担当さんというネーミングの可愛さに思わず笑ってしまいました(笑)

作家と一番近い距離でやりとりをしている存在は、担当さんなのか、それとも編集者なのか、そもそも担当さんと編集者は同じなのか。これから自分たちが取り組んでいく「編集」を考えるうえで、なんともいいモヤモヤが生まれました。

同時に、

「あれだけの工程を、自分たちがやっていくんだよね。。。?」
「本をつくるってさ、相当大変だね」

みんなからこんな意見が出てきたのも事実。先が見えない状況を思えば思うほど、気が遠くなりそうになるのもよくわかります。だからこそ、ここからは自分たちの手を動かして、いざ実践!

5年生による「TCSこども編集部」を立ち上げ、全員で全体の流れを確認し、これからどんなスケジュール、段取りで進めていくかを把握するところからスタートします。

なぜなら、本のような制作物は「締め切り」を前提として動いているものであり、特に新聞や雑誌のような発行物は、発売日も決まっています。

「じゃ、最初が遅れるとどんどん遅れていくってことか!これは責任重大だ!」と、とあるキッズがハッとします。そのとおり!

 

ということで、まずは全校生徒から「各作家さんがおすすめする渾身の1作品」を預かってくるミッションに着手。

初めて「編集者」として作家さんたちに話す機会、どんなふうに声をかけたのでしょうか? 

・「Dear Editorやってるんだけど、おすすめの作品くれるかな?」
・「あさって締め切りだから、作文ちょうだい」

こんな声かけをした編集者たちが数名いたことが判明しました。

「Dear Editorやってるって、どういうこと?やってるからなんなの?」
「明日締め切りなのはこちら側の都合であって、作家さんに言うべきことじゃないでしょ」

他の編集者たちから奇譚なき声があがってきます。

作品を預かる目的は?主旨はなんなのか? 
もし自分がそういうふうに声をかけられたらどう思うんだろう?

このテーマは、意思表現の探究領域であり、
「私たちの思いをいかにして表現して、相手の心に届け、分かり合えるのか」について探究する学びでもあるわけです。

さぁ、それを踏まえてもう一度作家さんの元へ向かい、トライし直し!
こうやって、編集者としての一歩が始まりました。

 

では、実際に作品を編集してみよう!
スタッフが用意した原稿に、それぞれが思う「編集」の観点で赤入れをしていきました。

※赤入れ:原稿やデザインなど、他者の制作物に対して修正してほしい箇所を赤字で書き加えることを「赤入れ」といいます。

それぞれどんなところに赤入れした? みんなにシェアしていきます。

 

・文字や漢字、送り仮名の間違えがかなりあった
・名前のあとに「ちゃん」がついているのとついていないのがあったから統一した
・「〜を」より「〜が」のほうが意味が伝わると思った
・句読点の入れ忘れがめちゃくちゃあった
・「!」なのか「?」なのか「!?」なのか、どの記号を使うかで伝わる印象が変わると思う
・最初は数字で「5」と書いてあったのに、途中から漢字の「五」になっていて、数字と漢字が混ざっていた

などなど、様々な視点で赤入れをしていたことがわかりました。

しかし実はこれ、全部「校正・校閲」という観点でまとめることができるのです。

「なんか、テストの採点してるみたいな気持ちになるよね」
「わかる〜」

と子どもたちから声があがってきたように、
校正・校閲とは、文章を正しく整えることと言えるわけです。

「編集って、大変だけど思っていたより楽しい!」
5年生たちがいま思っている、素直な気持ちのようです。

さて、今回は5年生7人で全校生徒48人の作品を編集するということもあり、編集者一人あたり6〜7作品を担当するという、なかなかのボリューム感。

その際、パソコンに打ち込んでいくのではなく、作文用紙をコピーして、そこに赤入れをしていくスタイルをとりました。

 

「うわ〜、この字読めない!」
「句読点が全然ないなぁ、そう考えたら僕もそうだなぁ」
「これ、一体どういう意味なんだろう・・・」

他者の作文をこれほどまでにじっくりと読み込む経験は、きっと初めてといってもいいでしょう。頭を悩ませ試行錯誤している編集者たち。

ただ、原稿用紙に直接書き込むとなると十分な余白があるわけでもないし、だからといって上から書きこみすぎても、読めなくなってしまう。

間違っているところは正しいものを示しつつ、わからないところはメッセージとして書き込んでいく。といっても自分だけが読めるメモ書きのような文字だと、はたして作家さんに伝わるでしょうか。

ここでも、なんのために校正・校閲をしているのか。
その目的や主旨を考えると、どうやって書けばいいか工夫がみえてきます。

なんとも、想像以上に相当骨の折れる作業、、、。

 

冬休みまでに担当分の作品すべてに目を通し、「校正・校閲」を行なった状態にして、作家さんにお戻し。その際に、疑問点やこうしたほうがいいのでは?という点を、作家さんと対話をしながらすり合わせをしていきました。

         

冬休みのホームワークとして、それぞれの作家さんたちが清書をしてきます。

5年生も、編集者としてのホームワークもありつつ、自分も作家として清書をするホームワークもあります。

2週間ほどの冬休みをうまく使いながら、年明けからは加速させていきます!

MK

(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2021年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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