特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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真実を追究する努力


真実を追究する努力_01
地上18F。
ほとんど窓のないこのビルの中に
150以上の法廷があるそうです。

先週、模擬裁判を行ったこの場所を
再び訪れたのは
「本物」の裁判を傍聴するためです。

手荷物チェックを終えてビルの中に入ると、子どもたちは「勝手知ったる様子」で
今日の裁判予定が書かれたリストの置かれたテーブルへと向かいます。
覚せい剤使用、道路交通法違反、殺人未遂、傷害、恐喝……
罪状、公判開始時刻、法廷番号をメモし、どの裁判を傍聴するか決めます。
先週の模擬裁判&ふりかえりでどのように審理が進むか
「ばっちり」頭に入っているので、子どもたちの関心は、裁判の各ステップで
実際にどんなやりとりがなされるのか確かめたい!という一点に集中しています。

「次は713法廷だよ!」
書き写したリストを見ながら、速やかに裁判所内を歩き回り、
おもむろに法廷の扉を開けて静かに傍聴席に着き、しばらく傍聴した後、
また別の法廷へ……
「新件」「審理」「判決」――それぞれのステップを「傍聴」することができました。

翌日以降の「ふりかえり」も、先週同様、子どもたちが鋭く観察したことを
徹底的に洗い出してゆく作業です。

真実を追究する努力_02  真実を追究する努力_03

「裁判長はぼくたちのために判決を読むのをやめて
そのうえわかりやすい言葉に言い換えて話してくれたよね!」

「検察官が調書を読み上げたときはすごく悪い人だと思ったけど
最後に被告人が話すのを聞いていたらそんなに悪い人とは思えなかった」

「弁護人は最初に被告人の謝罪文から読み始めたから
無罪を主張するんじゃなくて刑を軽くさせたいと考えたのかな」

子どもたちの言葉を紡いでゆくだけで、裁判官、検察官、弁護人が
自らの「役割」を果たすために、具体的にどのように行動しているか
次第に明らかになります。
私たちの姿を認めて、わざわざ判決の主文を読む場面から再開した裁判長は
傍聴人としてやってきた子どもたちへの「教育効果」も考えていました。
無免許運転やスピード違反を繰り返しても反省の色がなく
1審での「実刑判決」を不服とし、控訴した被告人の態度は
今、目の前にいる「子どもたち」には、絶対に真似てもらいたくない!
という思いが込められていました。

「ムカついたからやったではまた捕まっちゃうよ」

「傷害事件」を扱った別の法廷では、裁判官が、一見、なれなれしく感じられる
ような話し方で被告を諭したことに子どもたちは驚きました。
裁判官はただ「断罪」するのではなく、社会への影響を考え
さらには、被告の「更生」も考慮して判断していることを子どもたちは実感しました。

証拠物件を丹念に挙げながら淡々と立証する検察官に対して
「迫力があるよね。ああいう言い方練習してるのかな」
という感想を抱いた子。
「明らかに犯罪してる人を弁護しようとする気になるのは大変かも」
テレビと異なり、決して派手な姿を見せるわけではない
弁護人の真の姿に触れて、複雑な思いを抱いた子。

「刑事裁判」は、社会の安全を脅かす「犯罪」を「法」に基づいて裁きます。
それは、決して楽でも、楽しいことでもなく、よりよい社会創りのために
誰かがやらなければならない大変な仕事だ……という思いがさらに強くなりました。
裁判官は、模擬裁判のように「量刑を言い渡せばいい」というものではないんだ!
検察は自分たちが起訴した以上は「有罪である」という「自信」を持っているはずだ!
弁護人は、追い込まれた立場にある被告人を守るために全力を尽くさねばならない!

「真相・真実」を明らかにするために、どんな意識で判断しようとしているか
「実感」を伴って理解し始めた子どもたち。
「わたしたちにもできるだろうか……」
いよいよ「テーマ」が「課題化」されてきました。

「自分たちが裁判官の立場に置かれたとしたら、どのように裁判を進めるか」

単に「面白そう!」ではなく、実際の裁判官の気持ちを想像しながら
自分たちの判断力をいかに磨いてゆくか?
「追究すべき課題」が見えてきたところで、テーマ学習の「前半」は終了。
「後半」は、「裁判」で行われているような「判断」を自分たちも行ってみる活動に入ります。

RI

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