【探究領域】万象究理
【セントラルアイディア】見れば見るほど見えてくる。
<テーマ学習> 〜レポート
前回のテーマ「I am Special, YOU are special」では自分や同級生の持ち味などを見つけてきた1年生。静かなともだち、と聞いて、「静かに話を聞く、聞くぞうができるともだち?」「話さないってこと?」「でもともだちなら話をするんじゃない?」
「ともだち」というと思い浮かべるのは一緒に学んでいる同級生だったり、TCSの上級生や、保育園のころのともだち。けれど、このテーマでは身近にありながら、もっと静かな存在「植物」に焦点を当てていきます。
植物について、どんなことを知ってる?と聞いてみました。
土から出てくるもの、食虫植物を知ってる、オリーブオイルを育ててるからよくみてる!
などなど、身近な事例も挙げながら、中には枯れて茶色になるなど「変化するもの」という発言もありました。
この時期は秋。秋になると「紅葉」で葉っぱがさまざまな色に変わる季節ですね。なんて話をすると、11月はもう冬じゃない?冬なら植物はいない!なんて声も。冬になると、周りの植物は全て枯れてしまうのでしょうか?どうだったかな、とモヤモヤしている子もいました。
考えを広げた後は、それぞれが思う「葉っぱ」を絵にしていきます。
まずどんなことを考えているのか、どんなイメージがあるのかを絵で表現してもらいました。
絵を描いたところで、実際に植物の葉っぱを探してみることに。
TCSにも葉っぱってあるのかな?まずはTCSの周りを散策です。
こっち葉っぱはトゲトゲだ!
ツルツルしてる葉っぱもあるよ!
など、TCSの周りだけでもさまざまな葉っぱがあることを発見しました。まずは自分のイメージを明確にし、そして実物をみてみる、ここからテーマ「静かなともだち」のスタートです!
紅葉山公園にある葉っぱ探し
TCSから飛び出して、1年生キッズにとって通い慣れた紅葉山公園に向かいます。
紅葉山見っけ隊で何度も訪れた公園ですが、今回のターゲットは植物!
到着して、改めてみてみると紅葉山公園には草木が多く生えていることに気づきます。
お気に入りを見つけるために、各々が紅葉山公園を散策し、葉っぱを見比べ、触り比べてみました。
この葉っぱとこの葉っぱは同じかも。同じ葉っぱでも模様が違うのもある。どれがいいかなぁ。
TCSにもどってきたら、それぞれが見つけた葉っぱの「おきにいりポイント」を語ってもらいました。形、触りごこち、色、さまざまな観点で葉っぱを見ることができますね。
それぞれの持ち寄った葉っぱをよーくみてみると、表面に模様があることも見えてきました。
このテーマ学習のセントラルアイディアは「見れば見るほど見えてくる。」葉っぱをよーく、よーく、いろんな角度からみていきますよ!
葉っぱのスケッチ
持ち帰った葉っぱをスケッチしてみました。自分で語ったポイントだけでなく、他の子の観点も参考にしながら、よーくみて、描いてみます。
アートにて「フロッタージュ」
葉っぱを紙の下に置き、上から鉛筆で擦ると、葉っぱの表面の形がはっきりと浮き出てきます。アートの時間を使って、その技法を練習し、テーマでは実際にその技法を使って葉っぱをフロッタージュしてみました。
なかなかうまくいかず、苦戦する子もいましたが、挑戦して周りのやり方を見て、もう一度挑戦。繰り返してスキルを高めていきます!
葉っぱの採集と管理
このテーマでは紅葉山公園をフィールドとして、葉っぱから植物の「調査」を行なっていきます!
「調査ってなに?」とキッズから疑問。「調」という字の他の読み方から「しらべる」ということでしっくりきた子も多く、詳しく調べるためには、調べるものを集めてくる必要があります。
ただ、集めてきても葉っぱはどんどん色が変わるし、置いておくと丸まってしまうものもありました。
そこで「押し葉」をして「ラミネート加工」をすることを伝えました。
ここからはみんなで協力して採集と管理に挑戦します。
集めてきた葉っぱを並べてみました。
これは同じ?大きさが違うだけ?意見を出しながら、ちょっとだけ整理してみました。
これらを押し葉にしてラミネート加工。
葉っぱがみやすくなりましたね。実際に整理しながらも特徴をどんどん見つけていった子ども達。けれど、その葉っぱってなんていう名前なんでしょう?
ともだち、なら名前で呼んで欲しいはず!どうやって名前を調べようか。Google?Siri?人に聞く?そんな中で図鑑という声もあがりました。
キッズには1人1冊、樹木の葉っぱについて図鑑を配布しました。
これからはこの図鑑と共に、さらに植物について調査を進めていきます!
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ディスカッション:フィールドワークの約束
1回目のフィールドワークを振り返ってみると、紅葉山公園への往復でも危険がいっぱい。
車通りももちろんですが、みんなの歩き方も。ふらふらしてたり、よそ見してたり、走ったり。
どうやったら安全にフィールドワークができるのだろう?
みんなが「これが安全に外出するためのポイントだ!」と思うものを挙げていきました。
近くに人が通っていても広がって歩いていませんか?これは安全?
たくさん出てきたアイディアですが、全部だと覚えられない。
そうだ、3つの約束みたいに3つにしてみよう!
どれが本当に大事なのかな?お互いに想いを語ってみました。
これも入れたい、これも入れたいとバラバラな意見。そこで隆佑くんが混ぜられないかな、と発言。混ぜるってどういうこと?
合わせる、ってこと。そっか、違うものを合わせることができる!
一列になるってことと、そのために声をかけることは一緒かも!
そんなやりとりもあって以下の3つの約束が決定。
・右左をよく見る。
・白い線をはみ出さない。
・みんな一列になって、声をかける
この約束を大切にして、テーマの調査を続けていきます!
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特徴をつかって葉っぱを探そう!
ただ好きな葉っぱを探すだけだと、「なんとなくいいと思った」「パッと目に留まった」など、第一印象で判断して採集してくる子もいました。
もちろん、持ち帰った葉っぱをじっくり観察して、調べたりスケッチしたりすることには意味がありますが、現地だからこそ観察して感じ取れることも多いものです。
実際にフィールドワークに出た時にも葉っぱを見分ける練習として、あえてこちらから探してくる葉っぱを指定してみました。
指定した葉っぱはそれぞれ
・葉っぱ全体の形で判断できるもの
・鋸歯の形で判断できるもの
・葉脈の形で判断できるもの
・葉柄で判断できるもの
を選定し、これまでに得た知識を使って葉っぱを探してみます。
持ち帰った葉っぱを分類する時に使った視点を、現地で採集することにも使ってみよう!と話すと、見つけるぞー!と乗り気なキッズたち。チームに分かれて紅葉山公園を歩き回りました。
ふと立ち止まって見回すと、紅葉が進んできていることがわかりました。
すると、「あれ?木の上の方だけ赤くなってる」という発見がありました。他の木を見ても、確かに上の方が色づいています。
ということは、木の紅葉は上の方から変わってくる、と言えそうですね。葉っぱを探しながらも、キッズのアンテナはいろんな方向に働いています。
持ち帰ったら他のチームと比べながら、合っているか確かめました。
間違った!というチームもありましたが、そこからが本番!間違ったのはどうして?どこで判断したの?正しいものとどう違うの?という疑問を投げかけ、似ている葉っぱの見分け方を考え、調べていきます。
イロハモミジとハウチワカエデ、よーくみると違う2枚ですが、実際に現地だと比べることができないので、その特徴を知っておく必要がありますね。
こうした「見つけ方」は自分たちで体験したものほど根強く残っていきます。みんなに伝えられるように、ラミネートした葉っぱと共に特徴を整理しました。
もう押し葉はお手の物!?
持ち帰った葉っぱをしっかり「管理する」意識が広まってきました。
でも、本を積み上げすぎじゃないだろうか…
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「軸」を使った葉っぱの分類
さまざまな種類の葉っぱを集め、管理する方法を学び、少しずつ葉っぱを見分けられるようになってきた子ども達。
ここからは採集した葉っぱを一つ一つ見ていくだけでなく、全体としてどう言った傾向があるのか、どんな違いがあるのかを探るために軸を使って分類していくことに挑戦します。
でも、軸ってなんだろう?
まずはそれを体感するために、大きさに着目して順番に並べてみることにしました。
並べようとすると、必然的に葉っぱ同士を重ねて見比べていく必要があります。でも、自分がいいと思った箇所を、他の人がさっと並び替えて言い合いになることも。
よくよく話してみると、大きさを比べる場所が違いました。
葉身の大きさで比べるのか、葉柄までを加えた大きさで比べるのかで大きさは全然違います。
今一度みんなで話し合い、葉柄までを含めた大きさで比べることに。
無事に一列に並べることができました!枚数を数えたらなんと97枚!
他にも押し葉をしたままの葉っぱもあるので、全部で100枚超えていることを発見しました。
そしてこの並びのもとである「大きさ」が今回の軸となります。小さい方からだんだん大きいものへと並んでいくようにそろえるという作業が大切になりますね。
ではここで、この葉っぱの大きさ順は変えることなく、鋸歯ありとなしで分けるにはどうしたらいいだろう?
鋸歯ありとなしの線引きをして、順番を変えることなくずらせばいい!との声があがり、みんなで真似してずらしてみました。
鋸歯があるかどうかなんてもうわかるよ!
そんな声も上がっただけあって、こちらの分類はサクサク進めていました。早く終わったら他の人がやった内容も確認!誰にだってちょっとした間違いは起きるものなので、それを減らすためにも他の人が再確認していきます。
このように、あり/なしであればどこかに線引きをして分けると出来上がり。なのですが、「大きさ」のような順番に並べる軸を2つ使いたい時はどうしたらいいんだろう?
「大きさ」の他にも「色」や「太さ」「明るさ」「ツルツルさ」などで並べた子ども達だからこそ、1つずつではない整理の仕方もしてみたいところです。
行き詰まったところでTCSに貼ってある「思考ツール」を紹介
2軸でのまとめ方をここで知っていきました。
まずは1軸で横にならべ、そこから2軸にそって縦にずらしていきます。
「なんだ、鋸歯のときと似てるね!」
その通り!ちがう軸だけれども、その軸にそって順番に並べるという作業自体は変わりません。
だけれど、言うは易く行うは難し。1軸目はすんなり並んでも縦も合わせて見ると本当に合っているのかな?
みんなで一列に並んで確認もしっかり行うことに挑戦!
2軸を使って整理したマップはこのテーマ学習のアウトプットになります。
みんなで集めた葉っぱを伝えるためにはどのような2軸に設定したらいいのか、ここからはじっくり話し合うことに。
「〇〇にしたらいいと思う」「私は〜がいいと思う」とどんどん自分の意見を提案していきます!アイディアが出てくるのは軸を少しずつ理解してきた証拠!
ただ、最初のうちにたくさんアイディアが出るのはとても素晴らしいことですが、今回は1つを「決める」必要があります。
決める段階になると平行線の提案が続くばかりではいけません。では、どうしたらいいのでしょうか?
みんなが「読む」でやったスイミーでは、どうやってマグロを追い払うことができたのかな?そんな視点から考えてみると、
「めっちゃ考えたから」
「スイミーがみんなに言ったんだよ」
「大きな魚になっておいはらった」
そうそう、みんなでまとまって大きな魚になったんだよね。そのためにスイミーはみんなに呼びかけたんだよね。
みんなでまとまるためには、巻き込む、呼びかけるということが大切になります。自分の意見がいい、なら他の人にも「それいいね」と思ってもらうためにはその良さを伝えて「これでやってみようよ」と巻き込まないといけません。
スイミーを思い出しつつ、何人か提案から呼びかけに変わりました。すると「それいいかも」と声が上がり、話した方も「だよね!」と嬉しくなりました。聴く側がこうやって反応してくれると、そこから次の動きが生まれてきます。
もし「こっちがいい」と思うものがあったら、それはしっかりと伝える。これも立派な反応になります。うまく巻き込めるかな?
色の濃さって虹色の軸でも表現できるんじゃない?
こんなふうに掛け合わせるという発想も出てきました。
少しずつ、みんなの意見がまとまり、最終的に発表するマップの軸が決まりました。
ここからはマップを作りつつ、お気に入りの一枚をスケッチしながらアウトプットしていきます。
子ども達が作成したマップとスケッチを手に、プレゼンではそれらの特徴を自分たちの言葉で説明することに挑戦します。
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プレゼンテーション当日の様子
【プレゼンを終えてふりかえり】
プレゼンを終えた午後は2コマを使ってじっくり「ふりかえり」の時間。今回のプレゼンでは、これまでのテーマと違ってみんなで作り上げた一つの「作品」を語る場面がありました。
まずはこの部分を動画を見て振り返っていきました。
できた!と思っていたことも、動画を見てみると、あれ?ずっと模造紙の方を見てるぞ?ふらふらしてしまっているぞ?
それぞれが感じたことをGood&Betterで語っていきます。
自分のパートは語れたけど、他の人が話している時フラフラしちゃってた!
挨拶が大きな声でいえた!けど「姿勢」がちょっと。フラフラしないようにしたい。
自分の意見をはっきり言えた。けど、人が話している時に話しちゃった。間違っていることを気づいたから言っちゃったから、我慢して待つ。
子ども達はみんなで話す練習をしていただけに、他の人のパートもしっかり覚えていたようです。
だからこそ他の人の言い間違いにも気づいてしまい、それをどうしても指摘したくなってしまいました。
もちろん、それを伝えてあげることは一見ハーモニーを発揮しているように感じます。ただ、過剰に周りが反応してしまうと当の本人は話しにくくなってしまうもの。今回のプレゼンでも「話しにくくなった」という声もありました。
どうしたらいいのでしょう。
そこで出てきたアイディアが「ちょっと待つ」。
本当に困っているのか、本当に本人が気づけないのか、止めてしまったら困らないか。と言いたい気持ちを抑えてちょっと待ってみると見えてくるものがあります。
「パッと見ただけではわからないものがある」
これはこのテーマを通じて出てきた言葉ですが、何も葉っぱをみることだけに当てはまるものではありません。
他の人とのコミュニケーションでももちろん、相手のことを見て話す必要があります。すぐに反応するだけでなく、時には相手をしっかり見て反応する、そんな使い分けができたら素晴らしいですね。
「見れば見るほど見えてくる。」
このセントラルアイディアについての考え方も変わってきたようです。
パッと見て得られている情報だけでなく、そこからさらに踏み込んでみること、色々な視点で見ること、そうすることで新しい発見や自分の思い込みに気づくこともあります。
ぜひ、これからもアンテナを張り巡らせて、さまざまなものを見て楽しんでいって欲しいと思います。
KO
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)