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「Borderless World」5年生 テーマ学習 レポート3

【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】互いの人権の尊重が、自由・正義および平和の基礎となる。

<テーマ学習> レポート  week 3 <ディスカッション編>

テレビの映像として目の当たりにした世界の様々な事件。
しかし、それらは実際に起こったこととはいえ、5年生たちにしてみれば、自分たちがまだ生まれてもいない時代の話だったりするわけです。

だったら、今自分たちがいる身の回りに、”人権の脅威に関わっていること”、”人権を侵害しているようなタネ”はあるのでしょうか? 
一度、視点をブレークダウンさせて考えてみることにしました。

すると・・・

・保育園の頃、自分の意見がコロコロ変わることについて、「変だ」と言われた。
(これは、第18条の侵害に当たるんじゃない?だって、考えるのは自由じゃん)
(それを言うのも自由だよね。でもそう考えたら、「変だ」っていう人にも考える自由があるってことになるのか・・・・)

・TCSで、好きな人を勝手にバラされてしまった。
 でも自分も人の好きな人をバラしてしまったこと、ある。
(これは、まさに第12条の”ないしょの話”を侵害してるでしょ。秘密を勝手に言われて傷つけられちゃうんだからさ。)


・オンラインの対戦ゲームで、暴言を吐かれたことがある。
(いくら第19条で”言いたい、知りたい、伝えたい”が守られているとしても、これはちょっとどうかと思う。これで個人情報を聞きだそうとしている人とかもいるみたいだし)

・昔今よりちょっとぽっちゃりしていたとき、傷つくことを言われた。

・TCSでは、同性と仲良くしていると同性愛とからかわれる。厳しくない?
(これって、第2条の差別はいやだ、に当てはまるんじゃない?) 

などなど・・・なるほど、いろいろ出てきましたね。

 

でもそこでちょっと引っかかることが。

「誰かの考えが変」だとか、「同性同士が仲良すぎるのは変」だとか、こういうのって一体誰が決めたんでしょう?

「それは世間が決めたんじゃない?」と子どもたち。
「じゃ、世間ってなに?」という私の質問に、「人数的に多いほうが権力を持って決めていく。多数決みたいなこと。これが世間ってことになるんじゃない?」と、心希が語ってくれました。

TCSでは、あまり多数決で物事を決めることをスタンダードにしていませんが、国会なんかを見てみても、人数が多いほうの意見が通ってしまうのが世の常。
だとしたら、仮に人数が多い方が偏った意見を持っていたとしても、それがあたかも正しいことのように判断されてしまう、ということ。それは、TCS内や、自分たち自身にも同じことが言えるはずです。

子どもたちが無意識に感じているこの違和感に、人権問題の本質や葛藤の本質が隠れているように感じます。

では、ここから再び視点をスケールアウトさせ、「人権が脅かされている」と感じる日本や世界のニュース、時事問題に注目し、自分たちで集めてきたものをシェア。

その際、大切になるのはどこからこの情報を集めてきたのか!?ということ。ウィキペディアで情報を集めてきたキッズがいたのですが、ウィキペディアの性質を考えると、誰もが編集できる情報源である=フェイクニュースが紛れているかもしれないということ。だからこそ、情報源や執筆者名が明記されている情報を選択する必要性があります。ひとつ前のテーマ「Dear Editor」で、”情報は編集によっていとも簡単に変わってしまう”ことを体感している5年生たち、そこは十分にわかっているはずです。

では、ここから一人ひとりがジャーナリストとして目線を養うべく、実際のニュースを議題にディスカッションを行うことにしました!

ひとまず、それぞれが調べて気になると思ったニュースはこちら。

 

意外と似たようなトピックが、ちらほらあがってきました。
だったら、ここにあがってきていない=まだ子どもたちが知りえていないトピックを扱うのも、スタッフの役割。そこで今回は3つのトピックを議題に、背景を紐解いたあと、それぞれの考えを主張していくことにしました。

1、元ミャンマー代表サッカー選手の難民申請について(生存権)

2、トランプ前米大統領のSNSアカウント凍結について(表現の自由)

3、今、渦中のロシアvsウクライナ問題(国同士の対立)

 

その中で、子どもたちからあがった意見をご紹介します。

<1、選手の判断についてどう感じる?自分ならどうする?>

帰国ギリギリのところで決断を翻し、ミャンマーに帰らず、日本に残ることにしたピエ・リアン・アウン選手。しかし日本に残ることは、つまりサッカー選手の地位を捨て、難民になることを意味します。

自分の命がまず何より大事だから、日本に残ることにした決断は納得する。という5年生たち。
「でも僕だったら、家族が何より大事だから国に帰った後、もう一度日本に来て家族みんなで難民になる

「いや、僕だったらみんなでどうしようと迷うより、家族に迷惑かけないように自分一人だけが難民になることを選ぶな」

「日本で難民になるという選択肢はどうかなと思う。だったら文化圏や言葉が近い国で難民申請したほうがいいかもしれない

帰国すれば自分の命は保証されないかもしれないが、家族や友達は助かるかもしれない。一方、帰国しなければ自分の命は保証されるが、家族や友達の命が逆に危ないかもしれない。この「命の狭間」で、揺れに揺れた子どもたちであります。


<2、トランプ元大統領に表現の自由があるはずなのに、民間の一企業がアカウントを勝手に凍結してもいいの?>

議会襲撃事件を助長したとして、twitter社から個人アカウントを永久凍結難されたトランプ氏。その他のSNSやアプリでも投稿を削除されたりという措置を受けたことにより、訴えを起こしている。

「表現すること自体は自由だけど、犯罪に関与するものはダメでしょ」

「表現を奪われること自体はたしかにどうかと思う。でも、暴動をよくやった!ていうのは間接的に自分がその暴動をやってることと一緒でしょ」

twitter社のルールに則って発信してるんだから当たり前。同意して使ってるわけでしょ。それに一部のツールであってトランプさんの表現全部を奪われたわけじゃないじゃん

「だったらさ、他にも同じように死ねとか暴言吐いてる匿名の人ってどうなるの?なんでその人たちは凍結されなくて、なんでトランプさんだけが凍結されるの?それって不平等じゃない?

「それはやっぱりトランプさんが有名だからじゃない?それで止めなかった自分たちにも責任が問われると思って、twitter社は凍結したんじゃない?」

影響力がある大きな声・表現は、市井の人たちの小さな声や表現より目立つことは明白ですよね。でも、一人ひとりに表現の自由があるはずなのに、それを有名無名、影響力だけでジャッジしていいのでしょうか?ここでは、そんな「倫理観の間」で揺れに揺れた子どもたちです。


人権パスポートに照らしたとき、一人ひとりに生きる権利や自由はあるけれど、それが行使されない現実がある。そのことを知って、子どもたちの中で葛藤が渦巻いている、そんな様子が伝わってきます。

 

MK

(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2021年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

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