[5・6年生]
今回のテーマ発表のスタイルは、「歌」です。それも往年のあの名曲に
乗せた「替え歌」を作ります。その曲とは、We are the world です。
なぜ発表スタイルが「歌」?それも「We are the world」?と思うかも
しれません。しかし……自らの人生への「認識」を豊かにしてゆく学びが
自主自律という探究領域なので、調べたこと、学んだことをただ発表する
というやり方では、ちょっとインパクトに欠けます。そこで、選んだメデ
ィアが「歌」だったわけです。
DNAという先天的・生物学的要因に強い影響を受けながらも、自らの努力、
そして周囲の人々との支え合いによってわたしたちは変われる!
というコンセプトをどこまで“わがこと”として受けとめたか。さらには、
その思いをみんなにどう伝えるか……それを We are the world の替え歌で
示すのです。
替え歌を作るには、まず本歌を知らなければなりません。早速、You Tube
で視聴します。
「あっ、この歌、聴いたことある!」
大半の子は、サビの部分をどこかで耳にしたことがありました。
「マイケル=ジャクソンが突然入ってきた」
なんとかマイケルだけは分かっても、ライオネル=リッチー、レイ=チャー
ルズ、ブルース=スプリングスティーンといったスター達を子どもたちは
知りません。ところが……スターのオーラがすべての人々にあふれていて、
子どもたちは「タダ者」ではないことを肌で感じとり、画面に釘づけです。
「この人、好きなように歌ってる!」
「なんか個性的だよね」
We are the world は、単純な曲なのに、いや、単純な曲ゆえに、それぞれの
歌い手の思いがストレートに伝わってきます。ただうまく歌おう、音程を
合わそうなどという歌手は一人たりとも現れません。ほんのわずかなフレー
ズでありながら、自分のスタイルを前面に出して、自らの思いをダイナミッ
クに表現しています。
「We are DNA ……っいう感じかな?」
この画像の迫力に触発されたのか、早速、サビの部分の替え歌を歌い始める
子が現れます。いいですねえ、このノリのよさ。
ただ詩を作るだけではない、ただ歌うだけでもない。ほんのわずかな歌詞の
中に自分たちの思いをどう凝縮し、表現するか……
子どもたちの探究がスタートしました。
個人パートの部分は、それぞれの思いを自由にぶつけるとして、問題は、
何度も繰り返し出てくるサビの部分の歌詞です。この部分をみんなで意見を
出し合いながら、一つのメッセージとしてまとめることができるか……
ただ発散するだけではなく、思考を収束させて、意義のあるアイデアとして
まとめあげられるか……いよいよこの学びのクライマックスです。
大事なことは reflective & thinkers
これまでの学びをふりかえり、いったいどんなことを理解したか。これから
どう行動すればよいか。それを実感できているか。個人的な見解ではなく
聴衆の共感を呼ぶメッセージとなるか。そんな評価基準を明確にし、歌詞の
アイデアを煮つめてゆきました。
「DNAがないと生きられないからDNAに縛られているというのはちょっと
言い過ぎだな」
「うん、そうだね。タンパク質を作るからぼくたちは生きられるもんね」
「それにね、DNAが異なるから、個性が生まれて、個性が違うから、みんな
が豊かになると思う」
「それいいねえ」
「私たちは異なる。異なるからこそ変われる!ってどう?」
「あっそれ私も考えてた!」
「えっ?おれも同じこと思ったんだけど」
「スゴイ!一緒になった!」
これまで発散することは得意でも、それぞれの意見を出発点にして、建設的
に融合し、一つの意見に収束してゆくことができなかった彼らが、今回の
テーマで一つ壁を乗り越えました。
「うそみたい。ちゃんと歌詞ができた!」
予定調和でもなく、誰かに合わせたのでもなく、コミュニケーションの連鎖
によって見事にみんなの思いを形にした「歌」が生まれました。
RI
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