[3・4年生]
いよいよ最終週。My Hero について原稿用紙にまとめます。目標は、
400字詰めで10枚。目次に沿ってひたすら書き進めてゆきます。
実は、今回の学びのポイントは、「マイヒーローはすごいんだよ!」
となんとなく語るのではなく、文章でまとめるところにありました。
口が達者で、言い方も力強いので、とてもよく考えているように
“見える”子がいます。自分の世界を持っていて、とても素敵で、愛す
べき子なのですが、このままでは、早晩、「思考力」の限界に達して
しまいます。そうなったら、せっかく持っている本来の特性が活かせ
ません。
「口頭」でなんとなく伝わればよいというレベルを打ち破るために、
「文章」でまとめてみる。そうすると、自分の「思考」の弱点と限界
が見えてくる……
これまでよしとされてきたレベルを打ち破る“挑戦”ですから、決して
楽ではありません。だからこそサポートする!一人ではくじけてしま
うプロセスに伴走し、励まし、支える……「同行二人」の精神で探究
教師は子どもと関わってゆきます。
「どんなに危険でも絶対に逃げないし、あきらめないし、昔の友達に
出会って、それではダメだと気づいて……」
相変わらず、熱く語っています。とても面白い語りであることも事実
です。しかし、それをただ「文章化」してみてもちっとも面白くあり
ません。
「すばらしいね。その熱い語りをぜひ文にまとめてごらん」
文章にまとめるように促すと、鉛筆がまったく動きません。しばらく
たつと、調べるために使った本を読もうとし始めました。そこで……
「もう本を読む必要はないよ。十分、調べているし、頭の中に材料も
たくさん入っているし、どんな順序で書いたらいいかもわかっている。
あとは、思いっきり吐き出して、原稿用紙にぶつけるだけじゃないか」
と伝えると……きょとんとした顔で、鉛筆は止まったままです。
それから15分……わかっているのに、なんで書かなきゃならないんだ!
面倒くさいよ……という気持ちが「顔」に出ていました。
さらに30分……あれっ、このままじゃまずいな。なんとか書かなきゃ!
ちょっとあせり始めます。
そしてさらに30分。居残りとなって、いよいよ……なんだ俺の頭は!
真っ白じゃないか!……
この段階になって、ようやく、「書こうと思えば書ける」と考えていた
ことが誤りだと気づき始めました。なんとなく頭で「わかったつもり」
になっているのと、思考した成果を「言語」でしっかりつかみとり、
「文章化」することが大きく異なる!この「差」は大きい!という現実
に直面したのです。
普通なら、この状況に追いこまれたら、“もうダメ!”と逃げておしまい
になってしまいます。だからこそ題材を「マイ・ヒーロー」としたこと
に大きな意義がありました。
なんとかまとめたい!でもこのままではダメだ!というせめぎあいが
強く生じるので、簡単に投げ出そうとはしないのです。
涙がぼろぼろ出てきても……頭を抱えて悩んでも……やめるわけには
いかない。しかし、そのうち、まずは書いてみて、書き残したものを
見ながら考えればよいことに少しずつ気づいてきます。
ただ考えていても、ただしゃべっていてもダメ。まず書き残す!
そして、それを自分で読み、何が足りないか考えるというプロセスが
大事!
だからボーッとせず、まず手を動かせ!
今回は、探究“鬼”コーチにひたすら言われ、やらざるを得なかったと
いうのが子どもたちの正直な実感でしょう。
しかし、あきらめずに、ひたすら書き続け「思考の結晶」ができあがる
と子どもたちの表情が一変します。目標の400字詰め原稿用紙10枚以上
を達成できなかった子もいましたが、全員がこれまで自分が書いた最大
の枚数を更新!充実感にあふれていました。
その力作「第一稿」を、原稿用紙の使い方、誤字脱字、文法上の改善点
といった「形式面」で、しっかり私が「赤ペン添削」し、再び清書!
そして……
テーマ発表日ギリギリに「マイ・ヒーロー・ブック」が完成しました。
子どもたちの顔のなんとうれしそうなこと!
書くことの「大変さ」とその後の「充実感」……これこそ探究に欠かせ
ない、“つら楽しい”部分でしょう。みんなよくガンバリマシタ!
RI
※TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。