タイトル:Borderless World
探究領域:共存共生
セントラルアイディア:「人権は自由、正義及び平和の基礎である。」
[5年生]
テーマ学習「治の力」のときに、憲法が私たちの民主政治の礎にあることを学びました。人が支配するのではなく法の支配に委ねるのが立憲主義の基本です。人が守るべき大原則を、人の上におき、権力を行使できる立場にある者が権力を濫用できないように見張るのが「憲法」の存在意義です。だからこそ、なんだかんだもったいをつけて権力側は「憲法」をないがしろにすることを狙うのです。
憲法を変えないで解釈でもなんとかなるぞ!
もし、それに文句があるなら憲法を変えさせろよ!
こんな狡猾な政治を許していいのか……明らかにおかしい政府のスタンス。にもかかわらず、権力者にすりより、力を発揮しないテレビ、新聞などのマスコミ。
でも、メディアのレベルは市民のレベルと言われます。私たちがしっかりしないとメディアもしっかりしません。大人がどうだ……世の中がどうだ……と言っているだけでは何も始まりません。まずはぼくたちから動き出そう!
ということで、私たちの人権宣言を考えます。
これまで話し合い、調べてきた結果、私たちが高らかに宣言したい!としぼったのは、
・権力者を見張るために権力者と反対する意見を表明できる
・私たちは秘密を持つ権利がある。勝手に個人の趣味をのぞきみるようなことは許さないというプライバシーの権利
・死刑ははたして犯罪を抑止するか
・法律は憲法に従うもので、好き勝手に政府の都合に合わせて変えることはできない
・偏見や差別によって犯罪捜査が影響されてはならない
・住むところを行政や政府の都合によって立ち退き命令は出せない
という領域。これらの領域について、さらに調べを進め、考えをまとめます。
みんな一生懸命調べます。そして調べて事実が明らかになると「熱く」語り出します。
「おっちゃんひどいよ!こんなことがあるなんて」
語る前の「枕詞」です。
中にはテレビのニュースでなんとなく聴いたものもまじっていますが、自分の身近なところで「人権」に違反する事件が起き、「人権」を脅かそうとする事態が進行しているのです。
特にみんながあぜんとしたのは「緊急事態条項」を政府が押し進めようとしていることでした。国を揺るがすような事態、国民が危機に陥りそうな事態が生じたときは、政府が法律を超えて決定ができる!というものだ。彼らの論理からすれば、
「東日本大震災のときを思い出してください。あのとき政府が迅速に動けなかったのはさまざまな法律に縛られたからですよ。もし、緊急事態ということで柔軟に動けたら、被害を減らせたかもしれません。私たちを信じてください。悪い使い方はしませんから!」
ということでしょう。でも、この法律を悪用して緊急事態だから俺の言う事をきけ!と好き勝手に権力を濫用する者に歯止めがかけられません。なんとも危険で際どい法律なのです。とにかく、憲法をないがしろにするような法律を設けた後に、悲惨な歴史をたどったことを過去は示しています。二度と同じことはしません!われわれは学びました!と口では言うものの、いまだ人類の歴史において、過去に学んで未来を変えた例はないのです。
一方、NIMBY Not In My Back Yard のように、みんなに必要な大事なものだけれど、自分がなんとなく「気持ち悪い」と感じるものは近くにあっては困るという問題もあります。ゴミ処理場をどこにつくるかというような問題で必ず直面します。原発はいらない。反原発だというけれど、核の処分場をどこにつくるかとなったら誰かに押しつけないといけない。そこで必ず誰かの人権がないがしろにされる危険性があるのです。
政府によって人権が脅かされる問題、みんなにとって必要な負担を誰かにだけ押しつけてしまう問題、そして、もうひとつ忘れてはならないのは、恵まれない人をどう支えてゆくかという問題です。個人の努力だけではどうにもならない格差があるとともに、生活保護をもらいながらパチンコ三昧の人もいます。基本的に「性善説」で想定されている権利を悪用する人が出てくる時点で、人権の制限が始まります。
それにしても、この子たちは、どうしてこんなにも積極的に、わがこととして「人権」について考えているのでしょう。時代の雰囲気を、子どもの純粋な感性が感じとっているのかもしれません。ぼくたちの「人権」を守ろうと意識しないと危ういぞと……。
さあ、残り1週間。悩んで、考えて、知って、調べて、思いついた「われらの人権宣言」をまとめ、発表用模造紙をつくります。
RI
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