タイトル:Dear Editor
探究領域:意思表現
セントラルアイディア:「編集によって情報の価値は変わる。」
[5・6年生]
自分がいいな!と思ったこと、大事だな!と思ったことをピックアップしてまとめてしまうヒトの性質が「編集」の本質です。とはいえ、今回、子どもたちが取り組むのは、ヒトの「編集」プロセス自体の追究ではなく、実際に「本」を編集することです。
ほぼ1年間、TCSの子どもたちが「書く」時間につくりあげてきた作品を1冊のステキな本に仕上げる。それがミッションです。もちろん、ただ本「を」つくりあげる活動なら、探究とは言いません。本づくりを通じて、編集による価値創造について理解するのが目的です。価値といってもいろいろありますが、今回大事にしたいのは、やはり、子どもだからこそつくれる「価値」。読者ターゲットをしぼりこみ、大衆が思わず手をとってしまうような本を、大人目線のマーケティングを行ってつくりあげるのは、子どもならではの「価値」とは言い難いでしょう。子どもだからこそ提供できる、思いっきりはじけた「価値」は、大人では考えつかない部分にあるはずです。では、それは何か……と言えば、子どもならではの面白さ!しかないでしょう。これこそが大いなる「価値」です。
編集するには「方針」が求められますが、子どもらしい面白さを思いっきり打ち出す本にするという「方針」で臨むことになりました。
「まずは作品に目を通さないとな……」
まったくその通り。実際にどんな作品を書いているのか読んでみないと、そもそも「面白い本」になるかどうか、どうにも見当がつきません。まずは4年生の作品から読んでみると……ほお、なかなかいい出だしだね。うわあ、誤字脱字が多いなあ。「○」の書き忘れが多いね。これだとどんなに中味がよくてもなかなか読んでもらえないぞ。
「添削」で「赤入れ」と言えば、先生の仕事。しかし、今回は子どもたちが、責任持って手を入れなくてはなりません。いつもだったら、指摘されていた側が、指摘する立場になると、途端にいろいろ見えてくるから不思議です。
「おれたちもこんなにぐちゃぐちゃに書いてたなあ」
「あ〜あ、ずっと会話ばっかり続けちゃって。全然、情景が描かれてないよね」
文章の細かい欠点がいろいろ見えてきます。
「でも、細かいミスばっかり直すだけだと、編集とは言わないよね」
ある子が素朴な疑問を述べます。まさしく!それはね「編集」の工程の中の一段階である「校正」だね。ミスを直すだけでは不十分だと子どもたちは気づきました。
では、どう手直しするか……もっと意味が通るようにすっきりまとめてしまえば、読みやすくはなるでしょうが、もともとの文章の子どもらしい面白さが消えてしまいます。
そこで子どもたちは、書いた子にどんなイメージで書いたのが尋ねます。信頼しているお姉さんお兄さんに尋ねられるのは、先生に聞かれるのと違うようで、素直に語り合っています。
「そういうことだったのか。じゃあこんな感じに直してみるけどどう」
「う〜ん、そうか、そう書けばよかったんだね」
楽しそうに編集者と作者がやりとりしているではありませんか。
全部で24名分の作品を手直しするのはとても大変ですが、3名の編集部員はやる気まんまんです。キーボードを手慣れた感じで打って、作業を進めてゆきます。いきなりすごい仕事モードです。たった6週間で本を完成させるのはとても大変だけど、きみたちならきっとできる!
RI
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