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編集って何だ?

タイトル:Dear Editor
探究領域:意思表現
セントラルアイディア:「編集によって情報の価値は変わる。」

[5・6年生]

「定番」のテーマ学習というものがあるが、この「Dear Editor」もそのひとつである。私自身、担当するのはこれで4回目になる。しかし、探究する学びは、前回のふりかえりを活かしつつ、新たなものを常につくりだしてゆくところに妙味がある。したがって、同じやり方をなぞるわけにはいかない。

これまでは、TCSの学びの特徴を、子ども自身がふりかえり、その学びのコツを「小冊子」にまとめるということをやってきた。できあがった3冊の小冊子は、TCSの目指す「探究」を子ども自身が解き明かす貴重な資料であり、また、TCSを知らない大人に対し、力強くアピールするなかなかの出来映えであった。

一方で、「編集」という観点からみると、内容をどうするかには注力できたものの、文章の校正やレイアウト、装丁についてはあまり意識がまわらなかった。ということで、今回は、「本」をつくるというプロジェクトを通じ、「編集」とはどういうものであるか学ぶことに挑戦することにした。「小冊子」ではなく「本」。ではいったいどんな「本」をつくるかと言えば、TCSの子どもたちが1年間、Creative Writing や行事の後の Reflection で書いた作文作品から選りすぐってまとめた作品集である。

TCSの子どもたち全員が「作家」となり、自分の作品を世に知らしめる……となれば、ただでさえ作品づくりの好きな子ども達のモチベーションは高まる一方。しかし、「意欲」だけでは「作品」のクオリティを磨きあげることはできない。そこで大事な役割を果たすのが、今回、Dear Editor を行う5・6年生3名。「敏腕(を目指す……)」編集部員として、面白い「本」を生み出すことに挑戦だ!

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「編集」に従事するわけなので、まずは、子ども達が「編集」についてどんな考えを抱いているのかあぶり出すところからスタート。

真っ先に出てきた意見は、言いたいことをまとめてわかりやすくするというのが「編集する」ことだというものだった。見やすくするため、わかりやすくするため、「編集」は「意図」して行われるというわけだ。

一方、デジタルデバイスをいじり慣れている世代ゆえのコメントもすぐ出てきた。

「画像編集とかいうふうにも使われるよね」

まさしく! i-pad で写真や動画を撮影すると、「画像編集」という項目があって、明るさを調整したり、色を変えたり、トリミングできたりする。「画像編集」に特化されたアプリも入っていて、それを用いれば、写真に何かを書き込んだりするような加工が可能だ。

「そう考えると、まとめるのとわかりやすくするのは同じかも」

「まとめて」から「編集」という考え方よりも、編集という熟語の「集」の字に着目し、情報を「集」めてまとめるところから編集作業は始まっていて、そのうえでいらないところを切り落とすことではないかとある子が思い始めた。

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「NG とか、カットしてとかテレビで言ってるけど、あれって編集でしょ」

まずは集める。間違ったり、余分だったりするところを切り落としてまとめる。そういう「意図的」な作業が「編集」なのだというふうにアイデアがまとまってきたようだ。

そこで初めて「編集」とはどういうものかということについて触れている資料に当たる。「編集」と言えば。「編集工学」を掲げている松岡正剛氏を抜きにして考えることはできないだろう。松岡氏の存在と考え方を知ってもらうために、「編集工学」のウェブページを見てみる。すると、編集とは

「必要な情報、意味のある情報、使える情報を整理して変えることすべてを指す」

定義づけられていた。新聞記者やテレビ制作者だけが、「編集」しているのではなく、私たち誰もが、日常生活のあらゆる場面で、自分にとって必要で、意味があると感じて、使えるなあと思った「情報」を選別してキャッチしたら、その「行為」自体が「編集」だというわけだ。

「うわさが生まれることも編集のためだってことか……」

ある子がつぶやいた。まさにその通り!その場合、悪意を持って「意図的」な場合もあるが、何も考えず「意図的」でなく、「うわさ」をまき散らしてしまうこともある。「編集」は「非意図的」にどの瞬間でも生じてしまうということ。このことを知って、子どもたちは、なんとなく緊張感を抱いたようだった。こりゃあ大変だ……しっかり意識して「編集」作業に臨まないと、知らず知らず自分たちの先入見に引き寄せられた「うわさ」と大差ない「編集物」ができあがってしまう。

では、意図的に価値ある編集を行うためにどうするか……それは「編集方針」を共有することしかない。ということで、編集方針を子どもたちに考えてもらう材料として、ザクッとした方向性を与えた。それは「自分たちが自信を持って面白い!」と思える作品にしてということだ。親に読ませたい、一般の大人に子どもの素晴しさをアピールしたい、同世代の子どもに読んでもらいたいというような「読者対象」はしぼりこまない。大胆に、子どもらしい「面白さ」をぶつけるアグレッシブなものにしてもらいたいということだけ伝えた。

さて、場の制約をつくる作業は終了。これからは、編集部員たる子どもたちが自分で主体的に考えて行動するのみ。賽はフィールドに投げられた!いったいどんな「作品」が「編集」されるか、楽しみだ!

RI

TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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