特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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数学的に理解する

[3・4・5年生]

てこや滑車が、加えた力よりも大きな力を出すことが、“なんとなく”
わかり、動滑車と定滑車を組み合わせるとより効果的てあることも
“なんとなく”わかってきました。いよいよ次は、“なんとなく”の段階を
乗り越えて、アルキメデスのように現象の背後にある「原理」をつきとめ
ることです。そこで今週は、数学的な法則性を確かめるための実験を丁寧
かつ正確に行いました。

実験授業を担当している和氣さんが持ってきてくださった「滑車」を使い、
科学博物館で見て、体験した展示物のミニチュアを再現し、それを用いた
実験です。

科学博物館には2つの展示物があり、1つは、動滑車と定滑車とが1つ
ずつのものであり、もう1つは、2つずつのものでした。まず、動滑車と
定滑車が1つずつの場合、動滑車の下につけたおもりを、定滑車からたれ
さががった糸でひっぱると「予想通り」半分の力で引っ張り上げることが
できました。80グラムのおもりがその半分の重さの40グラムのおもりで
つりあったからです。

「じゃあ動滑車が2つだったらさらにその半分の20グラムだ!」

頭の回転の速い子がすぐにつぶやきます。他の子も、“なんとなく”気づ
いていたことを耳にして、一気に予想がひとつに固まります。そこで、
実験をやってみると……アタリ!20グラムです。

「動滑車の数が1つ増えると半分になるんだ」

さあ、これで数学的原理は発見!一件落着!とすませてしまうのが子ども
ならずともヒト一般の陥りやすい思考スタイルです。

数学的法則を確立するには、なぜそうなったのかという「合理的な説明」
が必要。そこまで突っ込むのが、探究する学びであり、今回の追究を通じ
て子どもたちに身につけてほしい姿勢です。

なぜ80グラムのおもりが40グラムのおもりでつりあうのか?
軽くなった40グラムはどこに消えたのか?
きちんと「説明」できないといけない……

「分散されたんじゃあ……」

うん!それはいい筋だ!しかし、あまりに言葉足らず……「分散」をキー
ワードにみんなで読み解いてゆきます。

動滑車は、2本の糸でつるされているのと同じ状況に置かれている。
したがってそれぞれの糸に力が「分散」して、かかる重さが2分の1に
なる。動滑車から定滑車へとつながっている糸にかかる重さも2分の1
になるから、定滑車から垂れている糸を引っ張り下げる重さも2分の1!

おお、大分説明が洗練されてきました。しかし、まだ大事な問題が残って
います。

“動滑車の数が1つ増えるごとに力の大きさが2分の1になってゆく……
つまり、動滑車が2個だと4分の1、3個だとさらにその2分の1で
8分の1となるのか?……

ということです。

確かに、動滑車が2個だと80グラムの4分の1の20グラムでつりあい
ました。とはいうものの……この後、単純に、8分の1、16分の1になる
と言えるのか……ここで「即断できない!」と「気づく」ことが「数学的
法則」を見つけられるかどうかの分かれ道です。

じゃあまた実験!3個の動滑車ではどうなるか?……となるのがふつうの
流れ。子どもたちもそれを期待しますが、「ちょっと待った!」をかける
のが探究学習!実験する前に自ら立てた「説明原理」によってデータを
予測してみます。

先ほどの「分散」という「説明原理」に基づいて動滑車2個使った実験
装置を改めて眺めてみると……4本の糸でつるされて「分散」されている
ことがわかります。

「そうか……じゃあ次は6分の1だ!」

もう1個動滑車をつるすと、糸は6本になるから、つるしたおもりの
重さの6分の1になる!半分、半分……となる仮説は棄却されました。

“なんとなく”からスタートし、実験しつつ予測することで「数学的根拠」
に基づいた判断ができるようになってきました。こうして「原理」をしっ
かり知ったうえで再び「現実」へと回帰!この「原理」を活かして「現実」
に子どもの力で車を引っ張る「装置」を「設計」する作業へと進んでゆき
ます。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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