[6年生]
「コンセプト」に導かれたテーマを追究することで、Exhibition が
単なる調べ学習にならず、自律的かつ意義のある探究になるという
話を先週しました。次のポイントは、こうして選ばれたテーマに
ついて「仮説」を立てることです。
寿司ネタになる魚を調べたいという漠然とした興味が、conflict と
いう「コンセプト」によって見つめなおすことで、
「伝統的な食文化の保持」と「資源の維持・確保」とのconflict
という社会的に意義のあるテーマに“進化”しました。次は、この
テーマをどんな「仮説」で追究するか考えることです。
「仮説」というと難しく聞こえますが、要は、
「どうやって conflict をなくすか? 何か提案できないか?」
ということです。
具体的に言えば……
「マグロが絶滅しないように注意しつつ、他の国にたくさんもって
いかれないようにしつつ、これからもおいしい赤身や中トロを食べ
続けたい……というような例が、今回、君が Exhibition で追究しよう
としている conflict だよね。じゃあ、この conflict をどうやって解消
したらいいんだろう?なにか思いついたことはないかな?」
ここで大事なことは、最初からよい仮説をつかんでやろうという変な
欲を出さないことです。まずは、現状をふりかえって思いつくことを
どんどん出すことです。こんなことあり得ないかな?バカバカしい
かな?と自己規制してはいけません。
「もしかしたら50年後の回転寿司は、生魚はあまりないかもね」
「いまでも天ぷらがのってたり、肉がのってたりするのも多い」
「今の回転寿司の何が問題なんだろう?」
「そもそも今の値段で寿司が食べられるって安すぎるかも?」
「でも値上げすればいいっていうんじゃあ解決策とは言えないな」
「寿司ネタって好みに偏りがあるのかな?」
「寿司屋で寿司食べるって言うんじゃなくて、スーパーでも売ってる
し、持ち帰りの寿司屋も多いな」
「どうもこれまで通りのやり方を維持するのは難しそうだな」
すると……
「これまでの寿司ネタを守る寿司の食べ方を提案しないとダメかなあ」
おっ!仮説につながりそうな発言が出ました。
「どんな新しいやり方で“守れる”だろう?」
すかさず突っ込みます。
「そのためにまずデータを集めるよ!」
いい流れです!「これまでのやり方ではダメ!新たなやり方が必要!」
という「仮説」を提案するには、このままでは破綻するということを
データで示さなければなりません。今、魚の漁獲高はどうなっている?
世界でどれだけ魚の消費量が伸びている?国際価格はどうなっている?
こうしたデータを集めることで、これまでのようなスタイルで日本人
が寿司を食べ続けるのは難しいと裏づけられ、「伝統を維持しながらも
新しい寿司のスタイル」という提案に必然性と説得力が生まれます。
「これまでとは違う新しさ」とは言っても、生魚を用いた寿司を供給
し続けたい。値段も極端に上げたくない。となると、どんなやり方が
考えられるか……
こうして、最初に立てた「仮説」を明確にし、検証していくことが、
リサーチです。ところが、まったく何の仮説も立てず、漠然と資料を
集めてしまうので、「調べ学習」になってしまうのです。
いよいよ「初期仮説」に基づいてリサーチを開始です。冬休み期間は、
資料を集めたり、読みこんだり、現地に出向いたり、現人にインタビ
ューしたりするのにうってつけです。とはいえ、自律的に追究できる
かどうかは、本人の「意志」にかかっているので、後は子ども次第。
どこまでやれるか、子どもを信じて、楽しみに待つことにしましょう。
RI
※TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。