特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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“responsibility”ってどういうこと?

[5年生]

“balanced”という学習者像、そしてそうなるために必要な“perspective”という
コンセプトについて、まだ「漠然」とした理解しか生まれていません。

正しい情報がなかなか明らかにされない……
明らかにされた情報の“正しさ”を判断することも難しい……
こういう状況でどうしたらいいのか……

(エネルギーを無駄にしないということを追究するのに、どうしてこんなことばかり
考えるんだろう?)

いくら knowledgable を目指した学びではないとはいえ、エネルギーについて
「知る」という学びにならないことを子どもたちは不思議に思い始めました。

そこで、今週は、2年前に今年の卒業生が行った「ロストエナジー」でどんなことを
調べ、どんなことを提言したか、じっくりふりかえることからスタートしました。

「25%減らすって書いてある!」

先輩たちが用いた資料に目立つように書かれていた数字をある子が見つけました。

「節電目標かな……」

別の子が、今、巷で目にし、耳にする、夏の消費電力“15%”減という数字から
連想したのでしょう。そこで記事を読んでみると、

「鳩山新首相って書いてあるよ!」
「あっ!そうか、温暖化ガスか!」

2年前の夏、政権交代が起こり総理大臣となった鳩山さんは、就任早々に行った
国連での演説で、地球温暖化ガス、つまり二酸化炭素を25%減らすと高らかに
宣言したのでした。そこで“目の敵”にされたのは、石炭・石油の化石燃料でした。

このとき先輩たちが見学に行った最新式の火力発電所は、液化天然ガス(LNG)
を用いたガスタービン式で、熱効率を高め、石油に比べCO2の排出量が少ない
ことをアピールしていました。

そのうえ、もっと「クリーン」な発電と言うことで、CO2を一切出さない「原子力発電」
への期待が、当時の資料には色濃く反映されていました。しかし、先輩達は、原発
の出す放射性廃棄物について関心を持ち、どう処分するのか、危険性があるのでは
ないか、と考え、原発を太陽光や風力などの自然エネルギへと代替する可能性に
ついて調べていました。その結果、安定供給できず、発電量が少ないことがネック
となり、まだ主力の発電方法になり得ない……したがって、しばらくは、LNG火力と
原子力を2つの柱にして対応してゆくという「現実的」な見解に達していました。

「たった2年なのにね……」

人々がいかにその場、その場の雰囲気に流されているか子どもたちは実感しました。

「クリーンじゃないって石油はダメって言ってたのに、じゃあ火力を動かせばいいって
いうのも変だよね」
「石油がダメだから原子力、原子力がダメだから別のものって、ただ悪者が交代した
だけの感じがする」

子どもたちは、過去の状況をふりかえる、つまり、reflective な視点で見つめ直す
ことで、放射能が恐いから原発はダメと言うだけでは、何の解決にもならない……
原発に頼った背景をしっかり考えないとダメだ!という“balanced” な判断の大事さ
に気づき始めました。

そこで、さらに「ゆさぶり」をかけるために、最大電力発生日に使われた電力量を
比較するグラフ(出典「原子力・エネルギー」図面集)を見せました。

これまで一日にもっとも多く電力が使われたのは、2001年7月24日の1億8300万kw
でした。しかし、2009年8月5日には1億5900万kwまで下がっています。そこでこの値
から15%減らしたらどれぐらいの電力量になるか計算してみると、1億3500万kwに
なりました。改めてグラフを見ると、ちょうど1985年と1990年の間です。

「1985年ってバブルのときでしょ」

以前行った、テーマ学習『源自物語』で、お母さんにインタビューしたときに、ブランド物
を買ったり、海外旅行に行けたりするようになったのが80年代半ばだと聞いたのを、
ある子が思い出したのでした。

(なんでバブル時代なのに、今よりずっと使用電力量が少ないんだ?)

子どもたちはとても不思議だ!と感じ始めました。

1985年の電力量のピークは、1億1000万 kw。計算してみると、2009年比約30%減
でした。家に帰って改めて1985年頃の生活をお父さん、お母さんに聞いてみるように
ホームワークを出すと、翌日、子どもたちは口々に、特に生活で困難はなく、むしろ
派手に浪費していたイメージがあると言っていたと報告してくれました。

「ということは、今より電力を30%減らしても生活は変わらないのかな」
「30%ってちょうど原発に頼っている割合だよね」
「ということは原発全部止めても大丈夫!ってことかな」

子どもたちの頭はグルグル動き始めました。

「どうしてそんなに電力量が増えたんだろう」

子どもたちの「思考」をさらに本質へと誘う「問い」を返しました。単に「数値」だけ目を
向けるのではなく、その「数値」の「背後」を解釈するように迫りました。

「家電が増えたのかなあ?」
「なるほど……もしそうだとしたらどんな資料を集めなければダメ?」

いくつかの資料を複合し、多面的に考えるように促します。

“石油がだめだから原子力、原子力がだめだから再生可能エネルギー”

短絡的に考えているだけではエネルギー問題は本質的に解決しない!
私たちのライフスタイル自体を見直して、エネルギー問題をとらえていかない限り、
今後も同じ過ちを繰り返してしまうでしょう。

他人事ではなく、responsibility を持って発想する……それが“balanced”?

とちょっぴり見えてきたかなというところでしょうか。次週からいよいよ後半戦へ突入。
これまで「広げて」きた考えを、「収斂」してゆくフェイズに入ります。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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