「遺伝について学んで何がいちばん印象に残った?」
最終週の授業は、まず、この問いかけからスタートしました。
「このテーマやるまで遺伝のことなんて考えたことなかった……」
ある子がつぶやきました。すかさず、じゃあ今は遺伝についてどう考え
てるの?と質問すると
「DNAをいじっちゃうと違うふうになるっていうこと」
という答えが返ってきました。塩基の配列が変われば遺伝情報が変わり
異なる特徴を持った人間として生まれたはず……ということに強く印象
づけられたというのです。この子は、違う目の色だったらよかったとか、顔
の形はもっとこうだったらよかったと考えることはあるけれど、遺伝子を人工
的に変えることには反対だと主張しました。
「病気だとわかった場合は仕方がないんじゃないの」
別の子が、容姿や知能に関連する遺伝子をいじるのはよくないけれど
病気の発生を遺伝子操作で防げるならば構わないと述べました。
「親は自分と全然違う顔や姿の子どもじゃいやだと思うんじゃないかな」
「いや逆だよ。きっと私はあなたを美人にしてあげたし、頭もよくなるように
してあげたんだからって、きっと言うよ」
「ああ絶対言いそう」
病気の予防あるいは治療に向けて遺伝子操作の「可能性」に期待すると
いうことは「あり」かもしれないが、「個人の願望」によって「偶然」が支配
している「遺伝」のメカニズムに手を加えるのはどうも好ましい結果をもた
らしそうにないというのが子どもたちの見解でした。
「遺伝についての悩み相談に答えるっていう発表はどうかな」
テーマ発表をどうするかについてのアイデアが、この話し合いを通じて
ひらめいたようです。親からよくない遺伝を受け継いだと悩んでいる子を
どう説得するかを見せて、遺伝とどう立ち向かって生きてゆけばよいのか
自分たちの考えを示そうというのです。早速、シナリオ作りを開始です。
「おれはDNAの歌を作りたいな」
DNAがたった4つの塩基の組み合わせでできていて、それはすべての
生物に共通で、人間は30億の塩基が並んでいて、それが遺伝情報を
担っていて、コピーされてできたRNAが核の外に出て、リボゾームで解読
されてタンパク質ができて、そのおかげで私たちは生きていられる……
DNAについて学んだことをイメージマップでまとめて、どんな歌詞にするか
考えます。とても有名なある曲の替え歌としてどんなDNAの歌が出来上が
ったか……これは来週のテーマ発表のお楽しみです。
「遺伝」は「目的」によって導かれるのではなく、「偶然」が支配する世界
である。その結果、似ているけれど、決して同じではない「かけがえのない
自分」が誕生する。たった0.1%のゲノム情報の違いにすぎないのに……
そんなゲノムの不思議をひたすら追い続けたテーマ学習となりました。
RI