【探究領域】共存共生
【セントラルアイディア】失っても失っても生きていくしかない。
<テーマ学習> 〜レポート
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<Week 1&2>
まず、テーマ名の「Blackout」ってなんだろう?
「僕知ってる、停電のことだよね!」
そう、「停電」は電気が停まるということだね。
みんな、停電を経験したことある?どんな時に停電になった?
「電車に乗っていたら、停電になって電車が止まっちゃったことがあるよ。」
「地震の時に停電した!」
「アメリカにいた時、電線に鳥が触っちゃったみたいで、停電になったことがあった。」
「小さい頃コンセントで遊んじゃって…。」
そういえば、この間のスクールフェスティバルでも、フード班がオーブンでクッキー焼いているのと同時に 電気ポット3台使ってお湯を沸かしたら、ブレーカーが落ちて停電になっちゃったことがあったっけ。
「ブレーカーって何?」
ブレーカーは安全装置で、電気を一度にたくさん使ったり異常を感知すると、装置が作動して電気を一時的にストップさせるんだよ。
「うちもそれなったことあるー!」
「私の家でも、ドライヤーつけたら停電した。」
そこでスクールのブレーカーを探し、どういう仕組みになっているのか見てみました。そして、試しに玄関部分のブレーカーを落とし、そこだけ停電させるということもしてみました。
一時的な停電ならまだいいけど、長い間停電してしまったらすごく困るよね?
私たちって1日の中でどれだけ電気を使っているのだろう?
そこで、普段の1日の 朝起きて夜寝るまでの流れを思い出してみて、どんな場面で電気を使っているか書き出してみました。
まだまだありましたが、こんなにたくさんのものが電気で動いているということを確認することができました。
そして、私たちが普段使う電気機器は、大きく4つの目的があるということを学びました。
・電車や洗濯機など、物を動かす「運動エネルギー」
・電子レンジや冷蔵庫など、温度を変える「熱エネルギー」
・照明やテレビ画面など、光を発する「光エネルギー」
・スピーカーやゲーム機など、音を発する「音エネルギー」
先ほど挙げた電気機器がどんな目的で使われるか当てはめていってみると、複数が当てはまるものもありました。
次に、どんな電気機器がどれくらいの電力を必要とするのか調べるために、スクールにある電気機器を探して(キッチンとワークゾーンに多い)、ワット数を調べてみました。
家の電気機器を調べてきてくれた子もいて、テーマ外でも「電気」に興味を持って行動してくれていることが伝わり、嬉しい限りです。
そして、それぞれの電気機器を1時間使った場合のkWhの計算をして、電気代を比較してみました。
すると、電子レンジや電子ケトルなど、熱エネルギーを出す電気機器が多くの電力を必要とするということが分かりました。
しかし、電子レンジは長い時間使うものではありません。それに対して、一見 電力があまり必要ない照明は、長い時間使います。
そこで、TCSの2階にある蛍光灯の数を数えてみると、全部で74本。それを、スクールが始まる朝の8時から みんなが帰る17時までずっとつけている想定で計算すると、1日1811円も電気代がかかるということが分かりました。
仮に1年間毎日その時間電気をつけっぱなしにすると、なんと60万円以上になってしまいます!
実際にTCSではどれだけの電気を利用し、いくらの電気代を払っているのかを知るため、過去5年分の電気代の請求書を事務局に見せてもらい、1階、2階、3階、そして共用部(玄関、階段、外灯)の場所別に、利用料金で折れ線グラフを作成して、どのような傾向が見えてくるのかを比較してみることにしました。
※TCSの電気利用量と電気代金は、4年生にITの時間を使ってスプレッドシートに打ち込んでまとめてもらいました。
※3年生にとって折れ線グラフは初めての挑戦だったので、算数の時間を使って 見方・書き方などを学びました。
出来上がったグラフを見比べてみると、、、
・1、 2階は月によって差(アップダウン)が激しく、料金も高い
・逆に 3、4階はそこまで差がなく、料金も低い
・2月、7月、9月、12月が高い
・5月、8月は低い
・2023年は料金が一段と上がった
といった傾向が見えてきました。
そこから挙がってきた考察は、、、
・冬は暖房、夏はクーラーを長い時間利用するので、料金が高い
・しかし、8月と1月は長期休みがありスクールが無い日が多いので低い
・1、2階は電気をつけたり消したりを頻繁にするし、休日は使わないのでバラつきが出るが、共用部は夜間など休日もずっとついているので差が少ない
などでした。
キッズは年間スケジュールも参考にしながら、どうして電気料金が高かったり低かったりするのかを推測することができていました。
そして、2023年が高くなった理由は、以前は1kWhの電気代が25円だったのに対し、現在は40円に値上がりしてしまったからということが分かりました。
実際にどれだけ高くなったか知ると、以前ほーりーが「電気代が上がったから、電気を節約しよう!」と言っていたことにとても納得でき、行動しようと思えます。
トイレの電気の消し忘れに気づいてくれたり、使っていないゾーンの電気を消してくれたりと、早速行動に移してくれていました。
続いて、電気がどのように作られているのかを知るために、日本で一番多く使われている3つの発電方法について資料を読み、学んでみました。
・火力発電
・水力発電
・原子力発電
それぞれの発電の仕組み(何の力でタービンを回し、運動エネルギーを電気エネルギーに変換するのか)と、メリット・デメリットをプロジェクトペーパーにまとめ、理解を深めました。
<理科>
理科とコラボしたクラスを実施しました。担当スタッフに協力を仰ぎ、発電の仕組みをもっと知るために、手回し発電機を使って自分たちでも発電してみました。
発電機のレバーを回すと、電球に明かりがつきます!
「あ、ついた!」「僕もやってみたい!」と子供たちも楽しみながら仕組みを理解します。
速く回しすぎるとフィラメントが切れてしまうので、注意が必要。ちょうど良い速さを探ります。
電球の他にも、モーターを接続してプロペラを回してみたり、ペルチェ素子という板を接続してどんな反応が起こるか実験してみました。
ペルチェ素子とは、運動エネルギーを熱エネルギーに変換することができるプレート状の装置です。
色々試すうちに、ペルチェ素子は発電機を一方の方向に回すとプレートが暖かくなり、反対に回すと冷たくなるということを発見しました。
この実験では、手回し発電機を2つ繋ぎ、運動エネルギーを一度電気エネルギーにして、それをさらに運動エネルギーに変換しています。
すると、発電のために回しているものよりも、電気を受けて回っているものの方が遅くなっていることが分かります。
この実験から、発電する際、また、エネルギーを違う形に変換する際には「ロス」が生じるということが分かりました。
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<Week 3&4>
現在日本では、70%以上の電気を火力で発電していますが、その理由、メリットは、電力が必要な状況に応じて火力を上げ下げして発電量を簡単に変えることができるので、「調整しやすい」ということが大きな理由でした。
しかし、火力を得るために「化石燃料」を使っているということが大問題だということが分かりました。なぜならば、化石燃料を燃やすと地球温暖化につながる二酸化炭素が排出され、様々な異常気象や災害につながってしまいます。
そして、大気汚染にもつながり 呼吸器系の疾患が増えて医療費も増えてしまうということでした。
さらに、化石燃料には限りがあります。そして、日本では化石燃料を得ることができないため、ほとんどを外国からの輸入に頼っています。円安や国際情勢の悪化などで 安定的な供給を得られるという保証はなく、急に輸入できない状態になれば「Blackout」=1軒だけの停電ではなく、地域全体が停電する大規模停電が本当に起こることも十分に考えられます。
そこで注目したいのが、火力発電と同じように発電量を調整しやすいのに二酸化炭素を排出しない「原子力発電」です。
しかし、東日本大震災での原発事故のように一度事故が起きれば大惨事になり、安全管理に課題が多く、信用も失っている状況です。(現在も多くの原子力発電所が停止しており、その分も火力発電で補わないといけない状況。)
もし安全管理がしっかりできたとしても、使い終わった「核燃料」の廃棄をどうするかという問題も考えなくてはいけません。
日本におけるエネルギー事情の歴史と変遷、また、現状とその背景を学んだ後、化石燃料やウラン燃料を使わない「再生可能エネルギー」についてついて見ていくことにしました。
すでに学んだ水力に加え、太陽光、風力、バイオマス、地熱発電について資料を読み学びました。
さらに、外国での再生エネルギー利用がどうなっているのかも調べてみると、それぞれの地域の特性を生かして100%以上の必要電力を再生可能エネルギーでまかなえている国もあるということが分かりました。
そして、日本も必要電力100%を再生エネルギーで発電できる「ポテンシャル」が十分あるそうです。
<理科>
2回目の理科コラボでは 再生可能エネルギーの復習をして、しっかり理解できているかを確かめました。
そして、前回の実験で分かった「エネルギーを変換させるとロスが出る」ということを踏まえて、どの発電方法が効率が良いのかを考えました。
例えば、火力発電の場合、化石燃料という化学エネルギーを燃やし→熱エネルギーへ。そして、→水を沸騰させて出る水蒸気の勢いの運動エネルギーを使いタービンを回し→電気エネルギーへ変える。というように、3回も変換させなければいけないので、ロスが大きくなります。
それに比べて、風力や水力発電では、風や水が動く運動エネルギーを使ってタービンを回し→電気エネルギーに変える。変換が1回だけなので、ロスが少ないことが分かります。
また、テーマではあまり触れていなかった「化学エネルギー」についても知るために、銅と亜鉛の板を塩水にいれ、電気を流すという実験をしました。
銅と亜鉛の板に電気を流すと、電気エネルギーが化学エネルギーに変換され、一方の板からあぶくが出てきました。
電流を逆にしてみると、もう一方の板からあぶくが出ます。
この原理を応用したものが「電池」になるそうです。
炭、塩水、アルミホイルを使って電気を作れるということで試してみましたが、残念ながら今回はうまく電球を光らせることができませんでした。
いつか再チャレンジしてみたいですね!
<スペシャルゲスト>
環境エネルギー政策研究所(ISEP)から、研究員の山下さんと5名のインターン生にお越しいただきました。
山下さんには、「日本のエネルギー問題と再エネの可能性」という題でプレゼンテーションをしていただき、
「1. 世界と日本のエネルギー問題」、
「2. 再生エネルギーの重要性と可能性」、そして、山下さんが取り組んでいらっしゃる
「3. 地域主体の再生エネルギー事業」について様々なことを教えていただきました。
今の計算だと化石燃料があと50年で枯渇すること、ペロブスカイトソーラーパネルや、営農型太陽光発電、洋上風力発電、ZEH(ゼロエネルギーハウス)などの新しい技術、そして、実際に地域主体で行われている事業の例など、私たちが知らなかったことも教えていただくことができました。
プレゼンの後はキッズからの質問にも答えていただき、疑問に思っていたこと、もっと知りたかったこと、そして 山下さんの考えなど、たくさんのことを教えていただき、プレゼンに向けてたくさんのヒントを得ることができました。
エネルギーの研究をしているプロから教えていただけたことは、とても良い学びの機会となりました!
そして、山下さんのプレゼンの後はインターンの方達からも自分たちの国の電気事情がどうなっているかについてプレゼンをしてもらいました。
フランス、オーストラリア、アメリカの3カ国について、どの発電が多く使われているか、政府が掲げるプランはどのようなものになっているか、使われている/期待される再生可能エネルギーは何かなど教えていただきました。また、フランスのお隣のドイツでは 大部分を担っていた原子力を廃止したなど、近隣の国での事情も知ることができました。
インターン生は日本語を習っているという方が多かったので、一生懸命日本語でプレゼンをしてくれたことにも感謝です。
プレゼンの後は4つのグループに分かれ、交流タイムを設けました。
さらに詳しく電気について質問をしたり、日本での生活がどうか聞いたり、フランスのサッカー選手の話題で盛り上がったりと、お互いに知っている日本語と英語で会話して、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
余談ですが、休憩時間には 山下さんとインターンの皆さんのサインが欲しいというキッズが行列を作り、サイン会場と化しました。(笑)
最後に記念撮影。「ありがとうございました!」
<Week 5&6>
インフルエンザの蔓延で休校となってしまったWeek5。オンライン授業となりましたが、ZoomとITを使って 山下さんから教えていただいたことをまとめるために、3つのアンテナでふりかえってみました。
そして、プレゼンに向けて「私たちが考えなければいけないポイント」をまとめました。
さらに、ブレイクアウトルームで3つのチームに分かれて どのようなポイントを入れたいか アイディア出しを重ね、疑問に思うことや現状がどうなっているかなど、リサーチしながらプレゼンの流れを作ることに挑戦しました。
オンラインだと話し合いなどで不便なこともありましたが、さすが3、4年生!4年生がファシリテーターを務め、書記係が画面を共有しながらポイントを書き出していったり、その場で分からないことを調べながら進めたりと、今年度の初めのクラス決めの時と比べて格段に話し合いが上手くなり、ITも使いこなせるようになっていることに驚きました!
そして、休校が明けたプレゼンの週は、どの学年も準備ができていない!ということで、音楽やアセンブリなど、いくつかのクラスを除いて全てのコマがテーマになるという、異例の「テーマ祭り」が開催されました!
丸1日テーマだと集中が切れてしまわないかと心配していましたが、みんなレジリエンスを発揮して、最後までやり切ることができました。
政府:
生産者:
消費者:
それぞれのチームが2枚の模造紙に発表する内容をまとめ、写真やグラフなどのデータはスライドで補助するというスタイルでプレゼンに臨みました。
<ふりかえり>
プレゼンのふりかえりでは、ひとりずつGood&Betterを言ってもらいました。
前日の朝の会で、プレゼンに向けて「なかなか言うことが覚えられない」と言うお悩み相談をすると、上級生から「文章を覚えるのではなくて、これは絶対伝えたいというポイントを覚えるといい」とアドバイスをもらい、それを意識して練習しました。
その甲斐があってか、話す内容が難しかったにも関わらず、「言いたいことを言えた」というGoodが多かったことが良かったです。
このテーマでは、色々な発電の方法、それらのメリットとデメリット、電気の歴史と変遷、日本と世界の状況 などなど、情報のインプットが多くありました。
そして、政府・生産者・消費者という3つの立場からプレゼンをするということで、アウトプットを考える際にもチーム間で内容を確認して被らないようにまとめないといけないなど、なかなかチャレンジングでした。
どのように自分が話すことをまとめればいいのか悩み込んでしまったり、内容が二転三転して混乱してしまったりと、プレゼン準備は一筋縄ではいきませんでした。
そんな状況でも4年生が主体となってチームを引っ張り、前日の放課後、当日の朝まで、「どうやったらもっと伝わるだろう?」と考えながら、諦めずに 模造紙も語りも磨けたことを誇らしく思い、きっと彼らの今後につながる成長になったのではないかと思います。
6週間 お疲れ様でした!
YH/YI
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)