【探究領域】意思表現
【セントラルアイディア】魂は細部に映る。
<テーマ学習レポート> week2
上映時間に幅があったり、アニメやドラマの要素があったりと、「映画」にはいくつもの側面があると知りました。では一体、映画ってどんな要素で構成されているんだろう?と、みんなで出し合ってみました。
その中でも、「物語になるから長くなる」「最後の手前で盛り上がる」「絶対最後まで主人公は生きて勝つものが多い」「予想を裏切られると面白い」「感動的」と、ストーリーに関することが多く出てきた印象。
ということで、まずは映画制作の核となる「ストーリーづくり」から考えていくことにしました。「書く」の時間では、題材や内容に困った時小説を読んで参考にするように、映画をつくるならば映画を観て学ぶ!ことが大切。
今回は16分の短編映画作品『ショー・リール』を参考にしていきます。
映画スターになりたいと夢見る移民の掃除婦が主人公。ある日彼女は自分の夢を叶えるため、アクセントを直し、見た目を変え、新しいキャラクターを作り出す―まるで、現実の世界が映画のセットの一部になったかのように…
というところまで観たら、ストップ。「え!なんで!」というキッズに、「さぁ、自分が監督だったらこのあとどんな展開にするか、話の続きを考えてみよう」というお題を出します。
すぐに筆を走らせる子、全然思いつかないと悩み続ける子と、千差万別。それぞれの書いたストーリーをみんなにシェアしてみると、これまでに出てきた登場人物を生かした話、架空の人物を付け足した話、話の流れを汲んだ現実的にありそうな話、自分なりの空想を広げた話、元のストーリーから大きくそれて自分が主人公の内容に変えてしまった話と、一人ひとりの個性や考え方が反映された作品が出てきました。
つくりたいものを自由につくる場合なら、全て「いいね!」となるのですが、今回は子どもが好きに思うがままに映画を撮影する、というのが目的ではありません。
一人の作り手として、思いがきちんと観る人に伝わるか。
そのためには、作品の軸となる「主題(テーマ)」が必要になる。そこを、追究していくのです。
文化や習慣を超えて観客が感動できる=ハリウッド流の映画脚本術を体系化したシド・フィールドの「Screenplay」という本から、主題(テーマ)の考え方をピックアップし、主題には「キャラクターが何をするのか、どんな行動をするのか」そのつながりによって成り立っているということを学びます。よく、キャラクターが先かストーリーが先か、という話もありますが、実はどちらでも構いません。ただキャラクターがどんな具体的にどんな行動をするか、身体的や感情の変化を伴いつつ、それがキャラクターのアクションにつながっていく。だからこそ、キャラクターは●●という性格で、△△という設定である必要がある、という骨子になるのです。
そこで、途中まで観た作品を最初から最後まで通して鑑賞し、何を感じたか。そもそも何についての話だったのか、そしてこの作品は何を伝えたかったのだろうか?タイトルが意味することは?などと考えていくと、はじめ感じた印象とは違う印象を抱く子も出てきたのでした。
初回に観る時は、作品全体としてどう感じたか、どんな気持ちや感情を抱いたかにフォーカスしがちですが、2回目に観ればそこから一歩進んで、ストーリー構成の工夫や映像表現に隠された工夫など、新たな気づきが増えていき、豊穣な鑑賞体験ができるのも、映画の魅力とも言えますね!
そこで、作り手が届けたいストーリーや世界観を崩さないように、さらなる工夫として凝らされている「撮影」と「編集」についても学んでいきますよ〜。
撮影は、映画館で上映されることを念頭に入れたフレームサイズから、キャメラで撮影する画角としてのフレームまでで、何を映し何を映さないかで表現します。観客に与える心理を計算しながら、対象物と背景をどれくらいの比率で映すか(ロングショットやバストショット、クロースアップなど)”空間”を操るのが撮影の醍醐味になります。
一方編集は、カット(ショット)をつなぎあわせることで、その場にいないものを同じ空間にいるかのように見せたり、長時間の変化を見せたりと、”時間”を自在に操る技。つなぐテンポを変化させ、観客の体感時間すら操ることができるのが、編集の醍醐味になります。
ITの授業で、あるいはプライベートでも動画制作に触れていて、普段から撮影や編集に馴染みのある子どもたちですが、技を知れば知るほど「うわー、映画ってつくるの大変なんだな〜」という声が挙がってきます。さぁ、次回からはいよいよTCS映画チーム・和頼粘土組が始動していきますよ!
MK
—
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2019年度 年間プログラム(PDF) ・ テーマ学習一覧表(実施内容)