【探究領域】自主自律
【セントラルアイディア】私たちはかけがえのない存在である。
<テーマ学習> 〜レポート
<先行知識の確認(一人ひとりの存在への認識)>
まずは探究の入り口、子どもたちとのスポーツでいうウォーミングアップからスタートです。
「I am Special,YOU are Special.」
子どもたちは今回のテーマにワクワクドキドキしていました。
テーマ学習のタイトルが英語表記になっていることに興味関心を表していました。
「I amって私ってことだよね?」「YOU are ってどういう意味?」「Specialってどんな意味なの?」とタイトルの意味を知りたい気持ちで溢れていました。
そして、今回のセントラルアイディア「私たちはかけがえのない存在である。」の意味をみんなで考えてみました。「私たちって、9人のことだよね?」「あっ!でも話聞いてないから8人かも。」「えっ、それを言ったら6人じゃない?だって他にも聞いてない人いるしw」と楽しみながら話している姿は、入学して4回目の探究ですが、すっかり学習スタイルと探究の流れを理解してきていました。
上級生からも「あーこのテーマあれだね!」と話が出て、1年生から質問攻めにあってい ます。
「存在ってなぁに??」「教えて〜」と言われ上級生からは「存在っていうのは….」「あれ?わからない??」と突っ込まれていました。
さらに上級生がきて1年生から「存在って知ってる?」と質問されてなるほど!という回答をもらって納得できたようです。
名前の話題に触れた時にも、「同じ漢字がある!」と発見した漢字から字の意味を読み解いていました。「「徳」って漢字はきっと、いいことだよ!だから名前に使われてるのは、いいことがありますようにってことだね!」と自分の名前に関心を持っていたのが印象的でした。
そして1年生にとっては入学してからTCSの学びの中で欠かせないもの「TCS スピリット」についても今回のテーマ学習の中では大切な学びです。早速、みんなに聞いてみました。卒業してしまうと薄れていくスピリット。でも決して忘れてほしくない大切なもの。だからこそ1年生のこのタイミングでTCSキッズとして学んで欲しいと考えています。
6つ全て出てきましたが一つひとつの意味はまだまだなんとなくわかっている状態。特にConfidence は難しかったようです。でも今回のテーマではこのスピリットが一番大切な磨いてほしいスピリットなんです。
ディスカッションの中で理解度を上げて、TCSキッズとしてスピリットを磨いていくことを意識していきます。
今回、このテーマで大切なこと。それは自分自身のことを改めて見つめなおしていき、知らなかった自分に出会う。そして仲間のこともじっくりと見ていきながら知ることで新たな仲間のことを知ること。
その中で知らなかったことの多さや他者から「そういうふうに見られていたんだ!」と他者視点での自分の存在を知っていく。そして自分と他者の存在が特別であって、そこに存在していることの大切さや喜びを感じていきたいです。
そんな探究にじっくりと取り組んでいきます。
今回の探究の流れは
・身体的、性格的な特徴 (form)
・興味関心と持ち味 (perspective)
・共に存在することの意義 (connection)
子どもたちとも共有して、今回の探究のポイントをディスカッションしました。
子どもたちの反応は、「めっちゃ楽しそう!」「面白そう!」とすでに興味津々の様子でした。自分の身体や性格、そして他者の身体や性格を発見!する楽しさにワクワクしていました。
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<自身の身体的特徴の発見>
早速、自身の身体的特徴について観察していくことにしました。
ここで驚いたのが、子どもたちの観察力です。
自分の左手をじっくり見ながら、スケッチしてみた。前回のテーマ学習で観察力や見たものを表現する力が発揮されていることに驚きました。
1年生でこの画力!Fine motor skills の高さと表現力の凄さに、一緒に描いていた僕もびっくりです。
自分の手の特徴や他者と比べたときの違いをみんなでシェアしました。自分の手って普段あまりじっくりと見ませんが良い機会ですね。
仲間の手の特徴に「ほくろがこんなところにある!」「よく見ると毛が生えてるよ!」「比べてみたら手が小さいなー。」など、自分の気づかなかった部分や他者と比べたときの特徴の違いなど、知ることで面白さと楽しさが倍増ですね。
似てるかなぁ。と描いた手と絵を見比べています。
みんなの絵を描くスキルが高い!素晴らしい!
そして、身体の特徴を自分視点と他者視点で見ていき、発見したことや疑問に思ったことをシェアしていきながら、自分自身と仲間のことを深めていきます。どんな素晴らしいところが見えてくるのか楽しみですね。
「手の大きさってもみんな違うんだ!」「自分の手ってこんな特徴があったんだ!」「シワがいっぱいある!」「こんなところにほくろが!?」といろんな自分と他者の違いや発見がたくさんあったことは、自分自身を知っていく大切な発見ですね。
「手よりも足を描く方が難しい!」と自身の足を描くことに苦戦しているキッズが多かったですね。
そこはITも活用して、iPadで自分の足の細部までじっくり観察してかいていました。
算数の授業内でも、描いた手足の大きさを測っていく予定です。
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他者の身体的な特徴の発見
Artの授業で色作り
アウトプットで制作する「等身大の自画像」にもつながる部分の学びで、Artの授業の中で、まずはいろんな色を作ってみました。
使った色は赤・青・黄の3色。どんな色ができるのかな?
自分のイメージ通りにできなかったり、新しい発見の色ができたりと終始興奮して色作りを楽しんでいました。どの色とどの色を組み合わせるとどの色になる!と進んでいくごとに発見が増えていくのが楽しいようですね。
綺麗な色に嬉しさと驚きが、子どもたちの顔から伝わってきます。
子どもたちの作り上げた色は、個性がそのまま出ています。
濃い色にこだわって作る、薄い色にこだわって作る。赤系の色をたくさん作る、誰も作っていない色にチャレンジする、など各自がこだわっていることが伝わってきました。
いい目をしていますね!
作った色を果物や自然の色に例えて表現したり、色から感じ取った感性が見られるのも面白いところ。
薄さにこだわった作品
「薄い入りを作るには水が多めで絵の具は少ない方ができやすい!」
「ほとんど水しか入れてない。」と作り方の発見も多く出ているのが印象的でした。
「この青色は誰も作っていない!」と出来上がった色に喜びを全面に表していました。
「なんの色に似てるの?」と聞くとハワイの海の色と答えていました。
確かに!(でもハワイには行ったことがないそうです)
緑系の同系色に「同じ緑だけどなんか違う!?」と僅かな色の違いに疑問を持っていました。
最後の流して捨ててしまう時の、2つのコップから作った色を合流させ て色が変わることを楽しんでいましたw
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性格的特徴を言葉で表現
自分から見た他者の性格的特徴を書き出して、みんなでシェアしました。
ところが、
「授業中、聞かないことが多い」「人の真似をしてる」「整理ができない」など、出てくることはベター(*)なことばかり。(*)TCS流ふりかえり「もっとこうしたら良くなること」
「みんなは友達のベターなところしか見えていないの?」と問いかけると、「そんなことないよ」と言ってきたので、じゃあ「友達のグッドをあげてみよう!」と話しました。「誰から言うー?」とスタートしましたが、なかなか手も上がらずグッドも出てきませんでした。
ここで大切なことは、友達のSpecialなところを発見していくこと。もちろん誰だってグッドだけではありません。ベターだってあります。でもベターなところを見つけるのは簡単なことなんです。友達の良いところに視点を向けられるかどうか。良いところをSpecialとして受け止められるかがポイントなんです。
友達のどんなところが良いところで、どうしてそれがSpecialなのか。自分のどんなところがグッドでどうしてそれがSpecialなのか。このテーマの肝の部分です。
次週以降、大切なポイントとなっていく部分です。
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自分が好きなことを語ってみる
今度は自分自身の興味関心について語ります。
それをみんなに聞いてもらうことで、自分のことを知ってもらうと同時に他者からの視点もフィードバックで知ることができます。
自身の興味関心やLoveについてたくさん書き出していきます。
その中からひとつ、語りたいことを決めてみんなの前で発表しました。
自分の興味あること
誰かの興味あること
人によって興味関心は様々。
「それ僕も興味あるー!」「それってどんなことなの?」と知らないことにさらに興味を持ってくれた仲間がいました。
意外と他者の興味関心って、聞いてみると自分も興味を持ってしまったりするんですよね。面白い!
色のたし算(Art)
等身大の自分を描くためにArtの授業では色の探究をしました。
基本の3色を使って、どの色とどの色を足すと、どんな色になるのかを実際に作ってみました。
さらに3色に今度は白色を足していくとどうなるのか。これもまたいろんな色ができて楽しいアクティビティです。世の中にあるいろんな色が、基本の色からできていることに気づき、色の組み合わせで無数に色が出来上がることを発見しました。
出来上がった色が人によって微妙に違うところも面白いところ。
「この色は緑だけどなんか違う!」「おんなじ組み合わせでも人によって違う色になる。不思議だなぁ」と色のたし算を楽しんでいました。
全く違う色を組み合わせているのに、似てる色になるなんて不思議ですね。
出来上がった色から、いろいろなものを想像したり、作りたい色はこの組み合わせでできるんだ!と発見したり。
子どもたちの創造力もここで磨かれていきます。
みんなで同じたし算をしているのに答えが違うところがArtの面白いところ。
出来上がった表を見て、それぞれが違うことの不思議さと楽しさにますます興味関心が湧いていました。
白色が入ると先ほどとは全く別の色に大変身。
「えーなんでこんな色になるんだろう?」と白色が入った色のたし算に驚いている様子は、学びのアンテナが大活躍していることが伝わってきます。
「白色を使うと明るい色になるね」「白が入ると綺麗な色になる!」「薄い入りだけど綺麗」「もっとやりたい!」と一人ひとりが出来上がったシートに興奮していました。
正解がないところがArtの良いところ。子どもたちは思うがままに絵の具で色を創造していました。
あっという間に時間が来てしまって、「もっとやりたいー!」がこだましていました。
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持ち味の共有
「持ち味ってなんだろう?」
自分で思うもの、他者から言われて発見!
持ち味って得意なこと?好きなこと?と子どもたちはあまり聞いたことのない言葉にアンテナぐるぐるさせています。
その人の得意なことじゃない?その人だけできること?味がある!と力イメージしてことを出し合いました。
そして持ち味の意味を調べたところ、自分たちの言っていることが大体当たっていることに喜ぶところから始まり、「自分の持ち味」ってなんだろう?と自分視点と他者視点での共有をしていきました。
この時の子どもたちはテーマ当初とは大きく成長しています。
そうです。仲間に興味関心を持っていること。意外と友達のことは知っているようで知らないことが多かったことに気づき、知ったことで友達との距離感が近くなっているんです。同じ学びを共有し共感していく中で友達から仲間へと変化していたんですね。
でもまだまだ自分のことも仲間のことも、知らないことがいっぱい。
自分の存在ってなんだろう?
お父さんお母さんに書いてもらった自分の知らない自分。
生まれる前から今まで、両親が自分のことについてたくさんのことを書いてくれていました。生まれた時の体重や身長、そしてお腹にいるときのエピソード、さらには、お父さんお母さんから見た自分の持ち味など。
とにかく丁寧に事細かく書いていただいていたのが印象的でした。
それを聞いた子どもたちは、自分の知らない自分を知って、「かけがえのない存在」について感じてくれていたようです。
「お父さんとお母さんがういなかったら自分もいないんだよね?」
「お腹にいる時のこと覚えてるよ。お腹蹴ったりまだ出たくないって思っていたんだ!」と自分の存在について語ってくれていました。
親御さんからのメッセージも感じながら、自分の存在していることが特別なんだということを実感するシーンでした。
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アウトプットの作成
等身大の自分を描いていく
このテーマの最大のミッション。等身大の自分を大きな画用紙に描いていきます。Artで学んだ色作り、自分の顔、自身の特徴や性格、そして持ち味を等身大を描いた画用紙にまとめていきます。
自分の好きなポーズで自分の個性を表していきます。そして描きたい服と一緒に描き進めていきました。
自分の顔を描くことも大切なミッション
みんなから見えている自分と自分自身で発見した特徴を踏まえながら、見れば見るほど見えてくるものをじっくり描いていきます。
ホクロやシワ、そして「こんなところに毛が生えている!」「なんか顔の色が違う場所がある」などじっくり見ないと気づかないことが多いことに驚いていました。
手足を描くことはスムーズだったのですが、顔を描くことはとても難しいようでほとんどのキッズが、何度も描いては消してを繰り返すほど。
目の位置や鼻の形、髪の毛の長さなど描くバランスも磨かれていくアクティビティですね。
等身大の自分を描く(全判画用紙)
ここで重要なのが等身大の自分を描く上で、色を塗っていかなければなりません。
そこで重要になってくるのが、三原色+白で「肌の色」「髪の毛の色(黒)」を作らなければなりません。これがまた辛楽しい!
ただの肌色や黒ではないところが、子どもたちの見る目とレジリエンスが要求されてきます。
どの肌色が自分の肌の色なんだろう??とにている色ができるまで作り続けていきました。
おっ!なかなかいい肌色!
何と何を混ぜたら黒になるんだろう…と悩んでいました。
髪の毛の色を作って塗ってみよう!
「大阪のおばちゃんですか?!」と突っ込まれていましたね。
黒というか紫!でもここからもうひと頑張りで黒が作れるのに塗ってしまいましたが。でも大丈夫!重ね塗りすることも想定内!らしい。
等身大の自分を描く
さぁいよいよ本番の画用紙に自分自身を描いていきます。
プレゼンまで残り時間もあとわずか。間に合うか間に合わないかは あなた次第!と子どもたちも急ぐ中でも丁寧に描いてける事が1年生の持ち味!
自分の手と見比べて、性格に描いている姿は自分のことに手向きをしていないことの表れですね!
自分で厳選した「特徴」「性格」「持ち味」「頑張りたいこと」を描いて貼っていきます。「どれにしよう。」と悩んでいる仲間に「これがいいと思うよー」と持ち味についてアドバイス。すでに「かけがえのない存在」としての仲間意識が芽生えてきましたね。
あいうえお表も参考にしながら、誤字脱字に気をつけて描いていくことも大切!
「黒」が作れずに「もう目は白いままでいい!」と諦めていた仲間にも、「ダメだよー諦めちゃ」「一緒にやろー」と数人が協力してくれてなんとか黒目と髪の毛を塗ることができました。諦めていた本人も「よかった」と嬉しそうにしているのが印象的でした。
全員による「自分を語る」プレゼンテーション
スピーチを磨く時間も少ない中、自分のことを知ってもらいたい!自分のことや仲間のことをみんなに知ってもらいたい!と一所懸命に語彙が少ない中でも伝える力の「はなす力」を発揮して、自分の伝えたいことを考えています。
プレゼンテーション
持ち時間約60秒の中で、「自分の性格・持ち味・かけがえのない存在」のついて語ります。
ふりかえり
子どもたちは、プレゼン映像を見てまず第一声
「フラフラしたり声が小さい」ことに言及。なんとか自身の発表が終えられた安堵感と久しぶりのプレゼンで緊張感があったのも事実。でも自身の発表が終わって緊張の糸が切れてしまい、逆に緩んでしまった事をふりかえりました。
それでも「かけがえのない存在」については
・大切な存在・だいじな存在・一緒にいて嬉しい存在・ずっと仲良しな存在・特別な存在・大好きな存在ということがわかったようです。
後記
今回のテーマ学習「I am Special,YOU are Special.」
初めて担当したテーマとして色々な思いがあります。
まず自分自身を知ることの大切さ。そして一緒にいるのが当たり前じゃない仲間。さらに自分自身を産んでくれてここまで育ててくれたお父さんお母さんの存在。と感じることや知ることの重みを子どもたちは感じてくれたことと思います。
当たり前のことにも意味があるし、それは本当は当たり前ではないことにも気づきがありました。
このテーマのスタートはセントラルアイディアの「私たちは かけがえのない存在である。」の中にある「私たち」。1年生9人、そして僕を含めた10人の話からすたとしていきました。「今の私たちは10人じゃなくて5人だよね」とあるキッズが発言しました。「10人揃ってないとダメだよ」と返したキッズもいました。「なんで10人揃っていないとダメなの?」という問いになんとなくダメなんじゃ…ともやもやしていたのが今でも頭に残っています。そして誰一人友達のGoodを言えなかったことも僕も子どもたちも一番記憶に残ったことだと思います。
でもテーマが終わって子どもたちの気持ちは「この10人じゃないとダメなんだ!」と今居るみんなが特別な存在で、誰にも変わることができない存在なんだ!と感じているようでした。お父さんお母さんの存在、スクールの仲間の存在、そして自分自身の存在とこれから私たちの存在のSpecialなことを感じて成長していってほしいなと、今胸いっぱいに感じています。
HM
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2023年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)