【探究領域】社会寄与
【セントラルアイディア】私たちはおかげさまで生きている。
<テーマ学習> 〜レポート
「ありがとう」ってどんな時に使うんだろう?「ありがとう」って言われたらどんな気持ちになるんだろう?言うのはちょっぴり恥ずかしかったり、言われたらなんだか嬉しかったり、そんな日本語の中でも素敵な言葉です。ありがとうと伝える時、それは誰かが自分のために何かをしてくれたおかげで、ありがたい気持ちになり、その感謝の気持ちを「有難う」と言葉で伝えるところから生まれたのです。ありがとうの陰にある「おかげさま(お陰様)」その言葉も『陰『陰』は神仏などの陰のことを言い、その庇護(ひご)を受ける意味として用いられますが、仏教の視点から言えば『木陰』のことをさします。肌を焦がす真夏の日差しも、木陰の下に入れば涼しくなります。このとき木は、人々が涼をとるために陰をつくってくれているわけではありません。「それでも、木に、『ありがとう』と感謝する。そんな陰の力が人の役に立って人から感謝されるということを意味しています。
最近、誰かに「ありがとう」と言いましたか?最近誰かに「ありがとう」と言われましたか?無意識に言われることが当たり前だと思っていませんか?
今回のテーマ「ありがとうにありがとう」では、そんな日常に溢れている「おかげさま」に目を向け、誰かのおかげで自身がその場に存在し、そして自分も誰かのおかげになっていて、陰の行動が「ありがとう」という相手の感謝につながっていることを感じていきます。身近なスクール生活から家庭での生活、そして普段、何気なく存在している社会の中の自分に目を向けて、自身の存在の価値や他者からのおかげを炙り出し探究していき、「ありがたさ」や「ありがとう」という見つけた感謝の気持ちを「おかげさまっぷ」にまとめていきます。子どもたちが、たくさんのおかげさまに支えられ、自身も支えている社会の一員だということを感じることが社会寄与の第一歩となるでしょう。
おかげさまの言葉の由来から、言葉の意味を深めてみる。
思ったことやイメージしたことを全体でシェアしていこう!
ここで面白い発見として、子どもたちの中には2種類の「ありがとう」があって「声に出せたありがとう」「声に出せなかったありがとう」があることがわかりました。
「なんで声に出せなかったんだろうね?」という問いに、恥ずかしかった。言おうと思ったけど声に出せなかった。という意見が多かったです。
そして、「声に出さないと伝わらないよ!」「それに言われたら嬉しいじゃん」という意見も出てきました。
ありがとうの漢字からは、有ることが難しい、有ることが当たり前じゃない、この人には「ありがと」だけどあの人には「ありがとうございます」って言うなど、使うシーンにも注目して考えてみました。
普段使っていないというキッズが多かったのが印象的です。
「あざっす」「あーと」「サンキュ」など普段使いの「ありがとう」に似ている言葉が多いことを発見しました。
その場面はその言い方でいいのかな?と対話をする中で、ぐるぐると疑問のアンテナが回っていました。
おかげさまとありがとうがない世界があったらどうなる
暗黒の世界、喧嘩ばっかりになってしまう、ありがとうがない世界なんてない!と言う意見の中、ありがとうがなくても生きていける!と言うキッズもいたのが印象的です。6週間でどう変わっていくのかも、楽しみです。
救世軍の栄養科の皆さんが作ってくれている給食に隠れているおかげさまを、現地を見たり現場の人の話を聞いて探してみよう
救世軍ブース記念病院 訪問
救世軍ブース記念病院 栄養科 金子さんから話を聞く
普段何気なく注文して食べている「給食」
その陰に隠れている「おかげさま」と「ありがたみ」を見つけるために訪問させていただきました。
子どもたちの初見は、不思議そうな表情で「ここってなんだろう?」「ここで給食を作ってくれているのかな?」と不安と期待が溢れていました。
給食がどのように作られているのか。普段目にしているのはスクールに届いた後の給食。
その給食がどのようにして作られて、いったい誰が作っているのか。
この日全てが明確になりました。
まさに「おかげさま」の部分を感じることができ、子どもたちの口からは自然に「ありがたいねー」「ありがとうございます」と溢れていたのが印象的でした。
見えないおかげさまの陰の部分を知ることって、子どもたちにとっては貴重な体験ですね。
作ってくれている方々のお話も大切な学びです。
普段のメニューがどのように考えられているのか。
1年中、メニューは三種類を毎日準備してあって、同じものが重ならないように、そして栄養バランスはもちろんのこと、その季節の旬の食材や産地も厳選してくれていて、とても深く考えていただいているメニューということがわかりました。
救世軍ブース記念病院のカフェテリアでも「黙食」が実施されていました。
特に子どもたちが興味津々だったところが、普段は食べ終わったら自分で食器を洗って片付けているのですが、カフェテリアでも再度洗浄している食器。その洗浄機を食い入るように見ていました。
すごくきれいになる事に驚きを隠せませんでしたね!みんなもきれいにしてくれて「ありがとう!」と食器洗浄の係の人から言葉をいただきました。
そして大切なことは、食器についた油をきれいに落とすこと!
前回のテーマプレゼンで3、4年生が言っていた「限りある資源の水」を循環させるために油は流さないことの大切さが、ここでつながりました。
子どもたちの口からも「油は流しちゃいけないんだよね!」と話してくれました。
最後に「おかげさま」の食堂の方々と記念撮影♪
そしてこの日はスクールに戻って、先ほど「給食のかげ」の部分を実際に目で見て感じてきた、その感覚で給食を全員でいただきました。
なんと!この日のメニューはスクールでも初メニューの「昔懐かしいカレーライス」でした!
子どもたちにとっては大好きなカレーと救世軍ブースのカフェテリアの方々が作ってくれた給食とあって、普段味わっているそれとは、また違った感覚で「おいしいーー!」「全部食べたー」「いつもよりも早く食べることができた!」といつもの違いに驚いていたのが印象的でした。
高学年からも「私たちも救世軍に行ったよー」「ありがたいよねー」と当時、自分たちが感じた「おかげさま」や「ありがとう」を思い出して語ってくれていました。それもまた「ありがたい」ですね。
身の回りの「ありがとう」や「おかげさま」にはどんなものがある?
ひとりのキッズのお弁当の「ありがとう」からそのかげに部分の話が広がっていきました。
起きてから寝るまでの自身の1日を書いてみる。全体でシェア
1日の中で「おかげさま」を見逃していないかな?
「あっ!これおかげさまだ!」と改めて発見する場面も多く見つかりました。何気なく過ごしている1日をふりかえって見ることも重要ですね。
自分の「身の回りのありがとう」と「身の回りのおかげさま」をチームで書き出してシェアしていこう!
チームの中で出てきた「おかげさま」と「ありがとう」について、誰のおかげさまなのか?どんなありがとう?どんなふうに思った?とディスカッションしました。
書いているうちに「あれも!」「これも!」と無意識に見逃していた「おかげさま」を発見していました。
ここで重要なのは、おかげさまを感じることと、自分がその時に思った感情や行動がポイントになってきます。
たくさん集まった「おかげさま」と「ありがとう」を色々なシーンで分類していきます。
「これはTCSだね!」「これは街だ!」と発見の場所や人物をふりかえって気づいていきます。
そんな中、一番盛り上がったのが「警察、消防、救急」について、子どもたちの中で熱いディベートが繰り広げられました。
特に「警察が必要か、必要ではないか」について、「警察はそんなに必要じゃない派」と「警察は絶対に必要派」に分かれてディベートのルールの中で繰り広げられました。
最後は、「僕は警察は必要だとあんまり思っていなかったけど、今は変わって絶対に必要だと思った!」と1、2年生とは思えないくらい、いい学びにつながりました。
決めては警察官になることが夢として持っているキッズの、熱い言葉が心を動かしたようです!
そして、いよいよマップを制作していくために、分類していきながら、清書していきマップに表現する準備です。
見えていなかった「ありがたみ」、見えるようになった「ありがたみ」について、もう一度書いていきながらディスカッションしていきます 。
今回のマップでは、陰の部分と身の回りのおかげさまを表現していく上で、みんなの書いたおかげさまとありがとうを、どこに貼ったらいいのかは、自分たちがどう考えているかを表現する大切なファクトです!
ディスカッションの様子
このディスカッションでは、テーマは「警察はみんなの陰のありがたいなのか?」一人のキッズが「僕は警察はおかげさまではないと思う。」という発言からヒートアップした話し合いになっていきました。夢に「警察官」としている子どもたちが多い中、黙っていられなかったようです!なんとか自分の気持ちや考えを伝えようと、想いをぶつけていました。
マップに書き込む「太陽と地球」
描きたい子どもたちから募集した「地球と太陽」の候補たち
今回のマップのコンセプトは子どもたちが身の回りの「おかげさまとありがとう」のディスカッションで「やっぱり地球と太陽があるおかげなんだよね」と小さなおかげさまから最後に行き着いている場所だったんです。
それが元となっているコンセプトなんです。
だから「マップに入れたい!」という話から、「おかげさまっぷ」のイメージになりました。
どれも可愛い太陽と地球です。
4チームに分かれて「おかげさまとありがとう」をマップに貼っていきます。
ここで大切なのは清書として、人の書いたコメントを綺麗に切ってから書き写すことです。
プレゼンに向けたリハーサル
6週間探究してきた成果を披露するために、スピーチの練習から動きの確認をします。
伝えるために「話す力」が大切ですね。
プレゼンテーション
「おかげさまっぷ」を披露し、自分が今おかげさまをどう考えているのかを素直に語る
G1.2 制作「おかげさまっぷ」
後記
今回のテーマ学習「ありがとうにありがとう」では、子どもたちが、いかにたくさんの「ありがとう」に触れ、その陰には「おかげさま」があることに気づいたことでしょう。
私自身も普段何気なく使っている「ありがとう」への感謝の気持ちとその想いを伝えること、そして気づかない陰にある「おかげさま」の大切さを、初心に戻った気持ちで探究できたことはとても良かったです。
探究の成果としては、子どもたちが「ありがとう」や「おかげさま」があることは「当たり前じゃない!」ということを実感してくれたことだと思います。あって当たり前の世の中で、子どもたちが身の回りにある全てのものに感謝し感激して、自分もそのおかげさまの一員なんだということを感じて、成長していってくれることを願っています。
大人になってもこの気持ちは忘れずに生きていきたいものです。
HM
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)