【探究領域】社会寄与
【セントラルアイディア】質の高いものづくりが喜びを生み出す。
<テーマ学習> 〜レポート
【いい仕事って、どんなもの?】
身の回りにある仕事について、どのようなものがあるか語り合い、思い浮かぶことや知っていることをディスカッションしてみました。
そして、
自分にとってのいい仕事とは何か
相手にとってのいい仕事とは何か
を出し合いましたが、まだまだ、お金や自分に害がない、など自信の仕事としての認識や、相手が自分の仕事をどう捉えるのかまで、思考は届いていません。
セントラルアイディア「質の高いものづくりが喜びを生み出す。」からイメージすることを語り合ったのですが、気になる「質」「生み出す」などモヤモヤした状態でスタートしました。
「質」ってなんだろう?
このセントラルアイディアに到達できたかどうか、6週間後が楽しみです。
セントラルアイディア
Strategy of Inquiry(探究の戦略)
今回のテーマの戦略では、 Inquiry Keys(概念)を徹底的に意識して探究していきます。
まず仕事の質に対する特性を考え、道具の機能を学び、制作と技術の心構えを、なぜそのような考えや施術が必要となっていくのか、を意識して取り組んでいきます!
【いい仕事を意識して製作していく】
清水建設 東京木工場 訪問
「いい仕事とは?」「質ってどんなものなのだろう?」
と子どもたちのアンテナが動き出したところで、今回は清水建設 東京木工場を見学させていただき、お話を伺ってきました。
今回は「匠」の仕事場からたくさんのことを学びました。
どのようなことを考えて仕事をしているか?
いい仕事をするためには何が大切なのか?
実際に作っている現場を見て何を感じるか?
そんな思いでフィールドワークはスタートしました。
まずは清水建設さんの会社の紹介から始まって、東京の木場の由来を紹介していただきました。東京発見伝にもつながる話で木工の歴史を学ぶことができました。
工場長さんから丁寧に木工場のことをお話ししていただきました。
樹齢400年の徳川家康が植樹した木?を年輪年表で東京の歴史を学ぶこともできました。
ところどころで、忘れないようにメモを取っている姿が見られました。
木の触り心地から気の良さや暖かみを感じていました。この仕上がり具合が「匠の仕事」であり「質の高いものづくり」ですね。
子どもたちは触覚で「いい仕事」を感じ取っていたようです。
レーザーで焼きを入れて、それがデザインになっています。
木だから出てくる味が魅力的でした。
子どもたちも一番、興味津々で見ていたブースです。
清水建設さんのたくさんある製作物を見させていただきました。
匠の「質の高いものづくり」を間近で見ることで、その作品に対する想いや質の高さを実感できました。
歌舞伎座の舞台
その使われている木の理由や意味を知ることで、木の種類や活用の方法も学びました。
叩いてみると絶妙な木の音がして、「木の種類によって音が変わるんだー?!」と驚きの声も出ていました。
こちらでは「図面」通りに作り上げることの大切さを学びました。
寸法が違ってしまうと全てが噛み合わなくなってしまうこと。そして何よりお客様からのニーズに正確に答えられなくなってしまい、それはいい仕事ではないことを知りました。
なぜか毎回、木の切り屑に興奮するんですよねw
清水建設さんが行なっている「木育」
その活動も子どもたちに木の良さや木に対する興味関心を持ってほしいという思いで成り立っています。
「匠」の「いい仕事の証」
最後まで聞きたいことを余すことなく聞いている姿が印象的でした。
「いい仕事をするために必要なことはなんですか?」
「質の高いものを作るにはどうしたらいいですか?」
まさにセントラルアイディアにつながる問いでした。
「疲れていたらいい仕事はできない。だから気持ちもそうだが、いい仕事をするための自分のコンディションを整えることも大切!」
とアドバイスをいただいていました。このアドバイスが後々、身に染みて感じることにつながっていました。
今回の「匠」訪問で、子どもたちはいい仕事に関するヒントを得たようです。
特に一人一人の意識や心構え、そして作る人への想いを持って仕事に取り組む。そんな匠の仕事が今後、子どもたちの仕事に、どのような影響を与えてくれるのか楽しみです。
【製作物の資材の搬入作業】
製作物で使用する資材を購入、そのままスクールへ搬入しました。思ったより大きくて重い材料に子どもたちも悪戦苦闘でした。
【いい仕事のために道具の機能と扱い方を学ぶ】
いい仕事について「匠」から学んできた子どもたち。
今度は自分たちが「いい仕事」をするために技術を磨いていきます。
そのためにはまずは実践!ということで自身の持っているスキルでどこまでできるのかを検証してみました。
一通り道具の名前と機能を説明した後、いよいよ練習に入っていきました。
子どもたちはまだ、道具の機能は知りましたが、その活用法についてはわかっていません。まずは自分のスキルで道具を使ってみます。
ここが大切なところ。
子どもたちには多少の自信があったようで、道具の使い方についても知っているつもりでいたようです。
墨入れがなぜ必要なのか、どうやってすみを入れたらいいのかも、なんとなくやっています。
切断作業の姿勢も切るためにはどんな姿勢がいいのか、どうしたら切りやすくなるのかまでは思考が回っていないようです。
切断面の荒さと寸法通りでないことを指摘されて、その作業の難しさを実感しています。
打った釘が曲がって入ってしまったようです。
なぜか切れない…なぜ打てない…..なんでだろう?と力任せで打ったり切ったりしてうまくいかずに奮闘中。
座っているので力が入らないし、道具の機能も活かせていないことに気づいていきます
すごい姿勢と切り方に周囲も圧倒されていました!
道具の選択も重要なこと。木によって道具を使い分けることも学んでいきました。
道具の機能と扱い方(Function)
ここで一旦練習作業は終了。
自身の作業の質をふりかえり、いい仕事の難しさを体感した子どもたち。
道具の扱い方の重要性を感じた子どもたちに、「道具の扱い方」を伝授していきます。
・姿勢の大切さ(目線、体重の掛け方、台の活用法)
・道具の活用(持ち方、運動エネルギーの伝え方、特徴と使い方)
・作業のポイント(道具の選択、材料の種類、失敗と成功の実例)
など、練習の段階で出たベターポイントをふりかえり、正確な道具の使い方を知ることで、「いい仕事」や「質の高いものづくり」につながることを徐々に実感し始めました。
次週からいよいよ、本作業に入っていきます。
製作の技術と心構え(Causation)
本作業に入り、TCSから依頼を受けた木工椅子の製作に入りました。
ここから心構えも刷新。されるはずがどうやらいい仕事ができていないようです。
・終わった後の清掃作業
・安全第一で行う丁寧な作業
・一つひとつの作業を分担して、全員で取り組んでいく
など、全員で依頼を受けた9脚の椅子を納品する意識が足りていないようです。
ふりかえったことで「自分にとってのいい仕事」「相手にとってのいい仕事」を再考することができました。
こうして何事も最高することは学びの中で上ようなことです。
見えていなかった「いい仕事」が新たに感じられて子どもたちの仕事に対する考え方も、わずかながら変化していくような予感がしました。
おG3工房 再始動!
自分たちの行っている仕事や心構えをふりかえることで見えてきた改善ポイント。
それを全員が再認識して取り組むことで「いい仕事」に繋げようと子どもたちが新たに動き出しました。
変化はすぐに現れ、一つひとつの作業の丁寧さもそうですが、皆でいい仕事をするための声掛けしながら進める姿が、印象的でした。
そして「質の高い椅子」にするために正確に寸法もそうですが組み上げていかなければなりません。
椅子の構造がどうしてこうなっているのか?
材料が寸法通りになっているのか?
どうやって組み上げていったら効率的なのか?
などを一人ひとりが考え試行錯誤していきながら、作業を進めていきます。
時には仲間に聞いてみたりして「質の高いものづくり」をしようと心構えも変わってきたようです。
ところどころで、自身の失敗からわかった注意点や上手にできたコツをシェアして、全員でいい仕事をしようと、Harmony を意識した取り組み姿勢が見えてきました。
脚部の組み上げが試行錯誤しどころです。
どうやって組み上げていったらいいか、順番や作業の仕方も重要!
わからないから聞いてしまう子が多いタイミングでもありますが、そこは自分で見つけて発見していくことが重要!
頭を悩ませながらより良い方法を見つけていました。
week 4 に入り、依頼された椅子が組み上がってきました。
でもまだ進捗としてはかなり遅れています。急ぎたいけど作業も手を抜かずに取り組んでいきたいところ。
子どもたちの「いい仕事に対する心構えと取り組み」そして「質の高いものづくりの真髄」はここからが勝負!
目にみえるいい仕事だけではなく、目に見えない心構えや、全員でいいものを作り上げていくという気持ちが試されます。
子どもたちのスキルも上がってきているのが、見ていてもはっきりとわかるくらいになってきました。
仕事の効率も上がってきて椅子が着々と完成に近づいています。
その中で意識しなければいけないことが、椅子の納期です。
Time managementしながら、自身の仕事の進捗を意識して日々、いい仕事をしていきたいところです。
安全第一とは…..
そんな中、子どもたちの意識や管理する心構えは上がってきているものの、まだ道具が片付け忘れていたり、掃除の意識がまだまだ「いい仕事」としての域まで達していません。
都度、フィードバックを受けながら心構えの基本を学んでいます。
今回のテーマの重要な学びになっています。
安全の意識→安全管理→安全第一
その中に見え隠れしている「考えられるリスク」に目と気持ちを向けて、いい仕事で目指すところは「安全第一」。この5週間の課題です。
問題があった時に全員が自分ごととして話し合っていき、意識の再徹底も重要な要素。
前年度「いい仕事してますね」探究者の4年生もこの話し合いに初期として参加してくれました。
「置きっぱなし」だった釘。
仕事を続けられるかはもちろんのこと、
・なぜ置きっぱなしになってしまったのか?
・釘の管理状況はどうだったか
・その管理体制でリスクはなかったのか
・今後、どのような意識や管理で仕事をしていったらいいのか
・今後の対策と心構え
を全員で話し合いました。
全員で決めた「今後の対策とルール」をもとに仕事を再指導していくことを決めました。
【納期までに製作を完了させる】
丁寧に椅子の脚のバランスを取っていく工程に入っているキッズも。
ここの工程も「質の高いものづくり」の重要な仕事の一つです。
これは足貫のサイズを間違えてしまった例…明らかに脚の位置が違っています。
これをどのように修正していけるかも大切な学びです。
椅子のニス塗り
バランスが取れたらいよいよ「ニス塗りの工程」です。
「ニス」は初めて使う!という子どもたちが多い中、どうやって塗ったらいいか試行錯誤しながら、仕上げていきます。
どのくらいの量をどのようにして塗りこんだらいいのかも、確かめながら、仕上がりにこだわってニスを塗っていきます。
高学年の姿勢や切り方を見て、そこからヒントをもらい学んでいます。
「真似ることは学ぶこと」
まさにそんなワンシーンです。
フィジカルも技術も、経験者の一挙一動を見逃さないように見ていました。
ノコギリ&釘打ち大会
いい仕事として自身の技術を磨いてきた証として、それぞれのスキルを出し合いながら大会を開きました。もちろん、ただ早ければいいわけではありません。
段取りから心構え、そして上達してきた技術を融合させて、大会のチャンピオンを決めていきます。
各部門のチャンピオンは、プレゼンテーションでその技術を披露する権利が与えられます。
各自がモチベーション高く挑んでいきました。
そして見事にチャンピオンに輝いたのはこの二人!
探究当初からチャンピオンの座を淡々と狙っていた甲斐がありました!
プレゼンテーション
HM
(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
・2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
・テーマ学習一覧表(実施内容)