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「明日天気になーれ!」5年生 テーマ学習 レポート

 

 

【探究領域】万象究理
【セントラルアイディア】観測は予測の礎となる

<テーマ学習> 〜レポート 

<Tuning In>

私たちが今回最初に向かったのは島忠の屋上でした。

頭でっかちに天気のことを知るよりも「空を見上げよう」「いろいろな形の雲を見つけよう」「風を感じよう」とする姿勢こそが、天気の予測の礎になる。それが今回のテーマ学習における大切なメッセージ。

頭上に広がる空をただ眺めているだけで、雲も時間も流れていきます。「雲の向こうに青空が広がっている。これは晴れなのか曇りなのか」
そんな問いの余韻を残したまま、テーマは始まりました。

テーマ学習の王道はまず「先行知識(Prior Knowledge)」を確認すること。天気について知っていることを挙げてもらうと、言葉だけはたくさん出てきます。

晴、雨、台風、気圧、梅雨、積乱雲、気象情報、ヘクトパスカル、虹、ひつじ雲、雨雲レーダー、紫外線、カツラが飛ぶ、お天気お姉さん、災害、フェーン現象、晴れときどき雨、地球温暖化などなど、137個もの言葉が挙げられました。

では、その内容についてどのくらい理解しているのか?途端に作り笑いが場に溢れました。

「知らないこと」を知ったときが学びのチャンスではありますが、そうそう直線的に学びに入らないのが探究する学びの特徴。もっと空を眺めることの面白さと雲の美しさを実感するために、子供たちには空や雲を日々撮影するためのスマホを1人一台貸与し使い方を確認、さらに、映画「天気の子」を全員で鑑賞します。

<Finding Out>

雲や天気に関する興味が温まったところで、雲の正体や種類について簡単に学びましたが、次の日にはまた私たちは外に飛び出ます。そう、空や雲を観察するために、そしてさまざまな自然現象を体感するために「富士山」に登るのです。

 

富士山で出会った空や雲を振りかえり、そこから空や雲、天気に関する疑問を上げ、各自がそれらの疑問をテキストや参考文献、インターネットなどで調べます。

・・・ん?今ひとつドライブがかからないなぁ。教えてくれるの待っている感じだなぁ?(こころの声 by KAZU)

・・・ん?自分で調べるとき、インターネットで検索してたまたま出てきた一つの情報だけで「わかった風」になっちゃって、テキストにも参考文献にも目を通さないんだ〜。(こころの声 by KAZU)

ちなみに各自が調査し、この日発表した内容は「雲に含まれている水の量」「雷ができる理由」「雪の結晶はどうやってできるのか」「台風と温帯低気圧の境目」」「雷が高い所に落ちるのは何故か?」「空と地上の境目」「雲は何で形が違うのか? 」

それなりに理解できていた発表もありましたが、まだまだ表面的な理解であったり、一つの調査から派生して新たな疑問も湧いてきます。

少しでも理解を深めるために、疑問に思ったことを質問する一つのきっかけとして、気象科学館に行くことは元々予定していましたが、ここで投げかけられたのは、見学の詳細のアナウンスではなく、以下のようなミッションでした。

(今日のミッション)
・気象科学館見学の計画を立てよ

(条件)
・日時: 9月15日(木)昼食後〜16:30
・スクール出発〜スクール解散

(計画に入れなくてはならないもの)
・見学の目的
・どのような質問をする?
・見学スケジュール
・交通アクセス、予算

(アウトプット)
・計画を模造紙にまとめて壁に貼る

さぁ、見学に行けるかどうか、意義のある見学になるかどうかは、私たちに委ねられました。どうする・・・?

話し合いが始まりましたが、目的を決めるはずが出発時間や電車の話ばかりになり、話は進みません。役割分担を決めようにも、チームとしてまとまりがなく議論にもなりません。

結局時間切れで、翌日までに自分たちで計画を立てて提出することになりました・・・

9月15日午後、子供たちが立てた計画に基づいて、気象科学館に向かいますが・・・

 

四ツ谷駅で丸の内線乗換時間が2分しか設定されておらず、見事に乗り遅れ。霞ヶ関で日比谷線に乗り換えるも何号車に乗るべきかも調べておらず、あちらのほうへ・・・。日比谷線で虎ノ門ヒルズ駅で降りると、目の前の改札をさーっと抜けてしまい、事前に調べてあった出口とは違う出口に。地上に上がると、いったいどこへいっていいやら。現地までの地図も何も持っていない・・・。それなのになぜかK君を先頭に猪突猛進、あさっての方向に歩き出し、それに何となくついていく子供たち。不審に思ったD君が地図を発見して立ち止まる。しかしながら、2年前に移転したばかりの気象科学館が地図に載っていない!ただ、行く方向が違うと判断した子供たちは、針路を変更し、しあさっての方向へ(笑)。少し歩いて駐車場のおじさんに話しかけて、やっと気象科学館がある方向がわかり、逆戻り。しかし、珍道中はまだ終わりません。確認なく再び猪突猛進するK君。後ろを歩く子供たちは不安げながらそれでもついていく。機転を利かせたSさんが工事のおじさんに道を尋ねると、「あそこの信号を右に渡って、1本目を左に」という有効な情報をゲット!早速、先頭グループに走り寄って、情報を伝達。これでほっと一安心と思いきや、信号を渡った後、1本目で曲がる気配も見せず直進する子供たち。1本目の道ではなく、かなり先の一つ目の信号を左折して坂道を登り始め、着々と気象科学館から離れていく子供たち。

流石にこのままだと気象科学館に行き着かないと判断したKAZUさんに呼び止められて、珍道中は終わりを告げます。

・・・いろいろ今までフィールドワークに行っていながら、5年生でもこんな感じということは、スタッフにお膳立てされてただついていっているだけなのかなぁ。(こころの声 by KAZU)

やっと辿り着いた気象科学館では、展示物を見たり、触ったり、科学館の方に質問をしたり、予定より30分短くなった時間を満喫しました。

 

その週末、台風15号が日本に近づいてきました。先週末は台風14号が日本に上陸し、大きな被害をもたらしました。この二つの台風を2週連続で実感できたこのタイミングが学びのタイミングです。ここで、以下のような2つの台風の経路図のほか、台風の数値データ、天気図や東京の気象データも渡されました。これらの情報の読み取り方も確認しつつ、2つの台風の違いについて考えていきます。

緯度や経度、EやNといった記号、風速のm/sという単位、最大風速が18m/sから始まっていること、台風の大きさや強さ、台風の経路、気圧のこと、前線のことなどなど、いろいろな気づきから一気にたくさんの知識を得るとともに、データを分析し仮説を立てる学びをしました。

このテーマの学びの中で必要と考えていた最低限の知識は一通り学んだので、ここからプレゼンに向けての企画会議が始まります。「敷かれたレールに沿って実行する力は十分にある」 と判断し、今回はスクールとして最初に提示したプレゼンの方向性は一度リセットして、ゼロベースで自分たちのプレゼンを考えるというミッションが与えられました。

子供たちだけで議論を進めていると、お互いに人の意見が終わらないうちにかぶせて話す傾向が強かったり、人の意見をすぐに否定したり、建設的な議論ができていないことが見えてきます。

まずは相手の話に最後まで耳を傾けること、ファシリテーションする人や書記をする人は、自分なりに解釈する前に、その話し手の言葉そのものを尊重して受け止めることなど、適宜アドバイスを受けながら、少しずつ場が動き始めました。

週が明け、プレゼンの準備は進めているものの、いまだチームとしてバラバラな子供たち。そこで改めて、プレゼンを誰に向けて行うのか、その相手に対して何を伝えたいのかということについて議論をすることにしました。

一人一人の考えや想いを発表し合った結果、全員が納得できるプレゼンの目的がやっと定まりました。

「子供たちに、空や雲に興味を持ってもらうこと」

チーム全員が同じ方向に向かって歩み出した瞬間です。

子供たちが考えたプレゼンは大きく分けると、自分たちの観察記録に基づいた雲の種類について説明するパート、空や雲に関するメカニズムを説明するパート、天気予報をするパートと3つに分かれています。

ある程度準備が出来たところでプレゼンの練習をすると、90秒スピーチで今回の学びで自分たちにとって重要な要素が語られていなかったり、単なる説明の羅列(オーダー)になってストーリーがないこと、そしてせっかくプレゼンの目的を決めたのに、その目的を果たすための聞き手に対するメッセージがないことなど、いろいろな問題点が見えてきます。

雲の種類のパートは、どのような表現をしたら見やすく、想いが伝わりやすいのか?

メカニズムのパートは、知ったかぶりの理論の名前を言うだけで、オーディエンスは理解できるのか?もっとわかりやすい説明はないのか?

天気予報はアプリでもテレビでも見ることができる。「私たち」がどのように情報を収集・分析して天気を予測しているのかが、重要なのではないか?

そんな問いかけに対して、子供たちはどんどん動き始めます。しかしながら、3つ目のパートの天気予報だけは、個人の予報の仕方をシェアするだけで、チームとして1つのおすすめの予測方法を決めることができません。プレゼンの前日でこの段階ですから、ちょっとドキドキ!

・・・個人の力はそれぞれ強いけど、チームとしてはまだまだだなぁ(by KAZU)

その日の夕方、スクールの3階からは幻想的な景色が。明日のプレゼンテーションがうまくいきますように!

そしてプレゼンテーション本番の映像ではなく(見ていただけないので)、静止画を..

プレゼンで学びが終わるわけではありません。重要なのはリフレクション(ふりかえり)です。まずはプレゼンのリフクレションの様子から・・・

 

さらにテーマ学習全体のリフレクションも行います。

 

最後に、テーマ担当のKAZUから子供たちへのフィードバックを。

まずプレゼンに関して、とてもよかったのは、最後の最後までプレゼンを磨く姿勢が見えたこと。直前のリハーサルからも改善していることが素晴らしかった。

一方でメカニズムの説明に関しては、まだまだ理解が不十分で、わかりにく箇所もいくつもあった。とはいえ、探究はすればするほど知らないことが増えてくる、すなわち、学べば学ぶほどバカになる学びとも言える。そこで出てきたわからないことをわかるように学び続ければいいだけなので、とてもいいスタートを切ったと言えるでしょう。

また、テーマ全体で言うと、みんな一人一人の能力は高くて、指示したことをこなすことはできるけれども、学びのプロセスで露呈したのは、まだまだ受け身で、主体的に学びに飛び込んでくる力は十分ではないこと。また、全体としては、ディスカッションは下手だし、集団で意思決定しチームをまとめ上げていく力もまだまだ。

子供たちには、互いの違いを活用して新たな価値を創り出していくチームとして力を高めていくことを期待したい。

KK


(参考) TCSテーマ学習について、以下よりご覧ください。
2022年度 年間プログラム(PDF)運用版
テーマ学習一覧表(実施内容)

 

 

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