タイトル:Dear Editor
探究領域:意思表現
セントラルアイディア:「編集によって情報の価値は変わる。」
[5年生]
いつでも、どんな場面でも、何か「情報」を受け取ったときに私たちは、無意識のうちに自分たちなりの「編集」をして「情報」を受け取ってしまうことを知りました。文章や映像を「編集」するのは「意識的」な作業。しかし、そこに「無意識の編集作用」が影響してしまうのです。したがって、私たちは「無意識の編集作用」を「意識」して、質の高い「編集」を目指さなければなりません。
とはいえ、小学生にいきなり「質」の高い「編集」を「意識」しろ!と言っただけでできるようになるなら苦労しません。では、こういうやり方で「編集」しろ!と「手法」を教えれば編集できるようになるかと言えば、それも無理。
じゃあどうするのよ?
はい、だから「本」を編集するのです!
「編集」について理解してゆくには、まず、他の人の文章を手直ししてみることからです。自分たちも含めて、TCSキッズ 29名の「作品」を5年生6名で分担して「編集」するには、一人あたりだいたい5作になります。
「good & better が編集の基本だよね!」
「編集」の根本にある思想から伝えます。「編集」は、「ふりかえり」の一種ととらえることができます。書いたものを読み直して、つまり、ふりかえって、何を書こうとしたのか、それが伝わる書き方になっているか「ふりかえり」ます。その時にまず頭に入れておかないといけないのは「good & better」ということ。ロジカルライティングではなく、面白い物語を紡いだ文章に手を入れるのですから、ただ言いたいことを伝わりやすくすればいいわけではありません。まず、面白さを見つける!面白さとは自分が読みたい!と思う事。次に、その面白さと書き手の個性とをつなげてみる。今回の書き手は、毎日、ともに生活している、勝手知ったる仲間だ。
「あいつらしいなあ!」
という特徴が出ているところは活かさなければならない。その good な部分が、うまく表現しきれていないとき、どう修正したらよいか、それが better。こう考えて、仲間の作文を眺めることからスタートです。
自分の作文を添削されても、すっと流しがちなのに、他者の、それも下級生の作品となると、「面白くするもしないも先輩たる自分たちの腕にかかっている」という、強烈な「使命感」がわきでてくるから不思議ですね。どうです、みなすごく集中しているし、真剣に「赤」を入れています。
その子らしさを活かしつつ、より面白い作品にするにはどうするか……
ポイントを伝授します。大きなポイントは2つ。
① 文章の3大要素である「会話」「心情」「情景」のバランスは?
② ストーリーを展開させる順序をどうするか?、さらに、ストーリーを面白く展開させるために欠けているピースがあるとしたらそれはどんなピースか?
この2つのポイントで作品を読んでみるように促します。いつも「書く」の学びのときに指摘されているポイントですから、彼らにとって耳新しいアドバイスではありませんが、他者の作品を添削する立場で実践するとなると、また全然意識が異なるようです。
傍目八目
ということわざがぴったり。自分の作品を読み直してもなかなか気づきにくかったことが、他の人の作品をふりかえると見えてくるのです。
「わあ、会話しか書いてないじゃん」
「いきなり終わっちゃった。ここで切れちゃうの」
「最初からネタバレじゃん。最初は謎めいて、最後にバーンとわかる方がいいよね」
正直、あまりうまくない文章、欠点だらけの文章だから、いろいろはっきり見えてくるのです。と同時に、そんな文章を俺たちの手で面白いものにつくりかえてやるぜ!という「意気込み」があるから、先生だったら、本音で言えば、わあ、これ読みたくないな〜なんていうような文章も、しつこく、丹念に、読み直して、丁寧に「赤」を入れて、面白い作品に仕立てあげようとするのです。
先生から声がかかったときは「あっ……忘れちゃった!」という子が数人は出るのに、先輩から頼まれたら、全員が期限までにきちんと提出してしまいました。そのうえ、先輩に直してもらえばいいや!ではなく、自分でもなるべく「編集」しておきたいという意識が出てきて、写真のように、いつも以上に真剣・集中・没頭。これぞ「相乗効果」。
冬休み前、残り1週間。まずは、作文用紙に手書きで書かれた「作品」を、キーボードで打ち込んで「電子化」して、休み中の編集をどう行うか話し合います。
RI
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