タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
[5・6年生]
この6週間子どもたちは「死」と「生」という非常に難解でいてまた誰もが避けては通ることができないことについて思いを馳せてきました。
「死」とはどういうことなのか?
「死」によって私たちはどういう事態に直面するのか?
そして、「死」があるからこそ見出せる「生」の意味について考えていきました。
「死」は「生」と不可分であり、「死」を「生」の「鏡」とすることによって
生きることの意味、どう生きるのかということについてフォーカスして考えてきました。
そしていざプレゼンテーション本番。
ゲーム会社の社長になるというRくんは弔辞でゲーム会社での仕事を一生懸命やっている傍ら、小学生のころから思い描いていた子ども向けの探究塾を今もやっていると語りました。それは失敗してもチャレンジし続ける人を探究を通して増やしていきたいという思いからだそうです。
年表を書き始めた頃に私から、「まさかゲームが好きだからゲーム会社を作りたいなんて簡単に言ってるわけじゃないよね?」という挑発に対して彼はいつになく真剣な表情でこう答えていました。
「ぼくは小さい頃は難しいことや苦手なことにチャレンジできるような子ではなかったんだよ。自信も無かったしさ。
でもね、TCSに入学して変わったんだ。TCSでは色々チャレンジするでしょ?
ミラクル・ハイパーステージの司会とかフェスティバルの劇とかプレゼンとかリーダーとかさ。それまでの自分は失敗したくなかったし、面倒くさそうだからチャレンジしなかった。でも今は失敗を恐れずにチャレンジすることが大事だと思っているんだ。
自分が好きで、やりたいからってゲーム会社を作るのはすごく大変なことでしょ?
でも大変だと思うけど失敗してもチャレンジし続ければできるって今は思っているんだよ。だからゲーム会社を立ち上げるっていうのは簡単に思いついたわけじゃないからね。昔のおれだったらそんな難しいことにチャレンジしたいなんて思わなかったんだから。」
その話をしている彼からは夢を成し遂げる上で起きるであろうさまざまな苦労も覚悟していることが伺えました。
また北海道で小動物専門病院の院長になるというMさんは年表作りをしながら日本や北海道の犬猫病院や小動物専門病院の現状について調べ、北海道では小動物専門病院の数が圧倒的に少ないことを知りました。
また大学生になったら瀬戸内海に浮かぶ小さな”うさぎの島”と呼ばれる大久野島でボランティアをして小動物保護に対して自分ができることをしようと決心したようです。
彼女は自分の生き方について考え、その途上で浮かぶ疑問について調べつつ組み立てていくというプロセスや、また素敵な大人たちや素晴らしい作品との出会いを通して感じてきた本質的なことを弔辞で述べました。
「私は人生は自分で創り上げていくものだと思う!」と。
ともすると私たちは深く考えず消去法的に物事を選択したり、前例に習うことを選んでしまいがちですが、どんな選択をするにせよ”自分で創り上げる”という考え方が根底になくてはいけないのかもしれません。
子どもたちはこのテーマを通して一つの道を目指していく過程で起こる様々な”楽”と”苦”についても思いを馳せる大切さを学ぶことができたことでしょう。
しかし道はたった一つではありませんし、人は変わり続けていきます。
だからもし年表に描いた通りの未来にならなくても勿論いいのです。
大切なことは目標に向かって行く過程でさまざまなことが起き得るがそれでも自分らしくあり続け、Mさんが力強く言ってくれたように未来を自分たちで創り上げていってくれればと心から思います。
”個の尊厳”を抱いてこれからも羽ばたき続けよう!
YI
※TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。