週末のホームワークで子どもたちはスクールの「電灯」の消費電力量をシミュ
レーションしてきました。
「教室は大体どれぐらいの時間使ってるか想像つくんだけど、階段が難し
かった」
「階段って白熱灯だよね」
「階段の電気つけっぱなしになってることが多いんだよ」
「そうそう、だから結構、長い時間ついてると予想したんだよね」
それぞれの子どもが自分なりの根拠に基づいてシミュレーションしてきました。
エアコンのように圧倒的に電力量が多いという結果にはなりませんでしたが、
点灯時間を予想する際に、きちんと「消す」か「つけっ放し」かでシミュレーション
の数値が大きく変わってしまうことに子どもたちは気づきました。
「やっぱこまめに消さないとね」
「わかってるんだけどそのままにしちゃうんだよね」
節電するには、まずは「行動」。そのために、ムダづかいしないという意識の
徹底がまず必要。特に電灯は、スイッチ一つで簡単につけたり消したりできる
のだから、そんなに負担にならないはず……にもかかわらず、徹底できない
のはどうしてか……これから節電計画を立てるうえでの「課題」が浮き彫りに
なりました。
スクールの電力消費の「実態」を数値化した結果、「エアコン・電灯・冷蔵庫」
の3つの電力量が多いことが分かり、やはりこれらの電力量を減らすことが、
スクール節電計画の中核であることが明らかになりました。そこで、分担して、
エアコン、電灯、冷蔵庫の「省エネ」を図るためにどんな対策が考えられるか
調査することにしました。
「開け閉めの回数と時間を減らして庫内の温度を上げないようにするといいん
だって」
早くも冷蔵庫班の子が、パソコンで調べて得た情報を発表します。
「なるほど!確かにそうだね。ただ問題はどうやって開け閉めの時間と回数を
減らすかだよね。どうやったらできるか想像つく?」
調査する……となると、すぐにパソコンの前に陣取って情報を得て、終わり!と
なりがちです。しかし、調査で大事なことは、調査の目的に合った情報を収集し、
集めた情報を自分たちの主張を補強するために効果的に用いることです。今回
の調査の目的は、「楽しく、賢く節電する方法を見つけること」。なぜ「楽しく、賢
く節電する」のかと言えば、自分たちが率先して実行し続けようと思える対策を
提案し、他者を巻き込むことが必要だからです。たとえば「全部、省エネ家電に
する」というようなアイデアも考えられるでしょうが、コストもかかり、すぐに実行
可能な対策ではありません。まず、ちょっとした工夫の伴う、自らの意識・行動
変革で節電できる方法を考える!それが先決です。
「エアコンの風量と消費電力は関係するかな?」
「高い温度設定にしても風量が多ければ消費電力少ないかも?」
「でも風量が多いってことはやっぱりそれだけエネルギー使うよ」
「専門家に聞きたいねえ……」
探究型の学びを支えるのは「現地」「現物」「現人」。その中の「現人」と出会い、
学ぶ必然性が生じてきました。
「日曜日なら行けるね」
エアコン班の子どもたちは、週末のお互いのスケジュールを確認し、自主的に
インタビュー取材へ出かけることを決めました。早速、ネットで、日本を代表する
エアコンメーカーのホームページを調べ、エアコンのメカニズムに詳しい専門家
のいるオフィスをつきとめ、電話をかけ、アポイントをとりつけることに成功しました。
電灯班は、電灯メーカーのショールームと家電量販店に出向き、話を聞くことに
したようです。子どもたちそれぞれが「楽しく、賢い節電計画」をまとめるために
「自律的」に動き出しました。
「きちんと質問を決めておかないとね……」
インタビューに行けば必ず実りのある取材ができるわけではありません。相手の
方の貴重な時間を頂戴する以上、つまらない質問は許されません。有益な内容を
聞き出すには、インタビューの目的を明確にし、質問項目をしっかりまとめておくこと。
つまり「下準備」が重要です。さらに、ただ質問するだけでなく、相手の発言を受けて、
それを広げて、深めてゆくと大事な情報が手に入るというところにも気をつかって
ほしい!ボイスレコーダーで録音してくることも大事……
インタビューの基本をしっかり確認し、その日の授業を終えました。
節電は、大変で、苦しくて、面倒くさい、というイメージがある。だから楽しくなんて
できそうにない……
そんな心の揺れが子どもたちの中にあります。「楽しさ」を「犠牲」にしなくても
できるんだ!という提案をまとめる……決して簡単ではありませんが、子どもたち
がどんなアイデアを編み出すか。楽しみです。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。