シナリオが一応できあがったものの、細かい部分を見直すと、つじつま
が合わなかったり、意味は通っていてもいまひとつ面白くない部分が
でてきたりして、なかなか最終稿ができあがりません。そうはいっても
テーマ発表までに残された時間は、今週だけ。まだ紙芝居は一枚も
描いていません。時間との戦いの中で、よりクオリティの高いものを
目指す子どもたち。とりあえず、分業することに決め、シナリオ見直し役
と、どのシーンをどんなふうに描くか考える役とに分かれて作業を開始
しました。
「どうして虫Aが虫Bの卵をねらうんだろう?」
「卵の中になんかいい成分が含まれてるからかな?」
それっきり考えが煮詰まってしまいました。
「あのさあ、前回のテーマで何やったっけ?」
子どもたちがある視点に固着して動きが取れなくなっているとき、違う
見方を促すように働きかけるのが探究教師の重要な役割です。遺伝の
テーマ学習で学んだDNAについての知識が活用できることをアドバイス
します。
「そうか、そうつなげるのか……」
他のテーマで学んだことを活かせば、発想を広げられることに子どもたち
は気づき、面白いストーリー展開を思いつくことができました。
一方、シーンを割りふり、どう描くか考えるチームは、シナリオとにらめ
っこしながら、どこで紙芝居をめくるかを考えて、絵柄を決めてゆきました。
「ここは主人公がロケットの窓から宇宙を眺めている絵がいいな」
「惑星だけでなく銀河も描いた方がいいかもね」
どのシーンを切り取るかを決めるためには、当然ながらそのシーンに誰を
そして何をどのように描くのか、イメージを明確にしてゆかなければなり
ません。ここまでじっくりストーリーを考え抜いてきたからこそ、子どもたち
は、滞ることなく話し合いを進め、容易にイメージを共有化できたことが
よくわかりました。
いったんシーンが決まり、イメージが共有されると、驚くほど、さくさくと
デッサンを描き上げてゆきました。
「虫どうしのたたかいはおれに任せて」
「わかった、じゃあ私はロケットから見た星を描く」
「手が空いたんだけどどこを手伝おうか」
時間を無駄なく効率的に使うために、分担し、お互いに指示を出し合い
確認し合って作業を進めてゆきます。もはや職人たちの集団のような
動きです。『陽心工房』フル稼働といったところでしょうか。色合いはよい
か、どう塗ったら効果的か、どこを目立たせるか、しっかり考え、決して
手抜きせず、色塗りを進めました。
「おっちゃん邪魔しないでよ」
私が余計なことを話しかけようものなら陽心工房の職人たちから文句が
出ます。
3日間連続の「志願」残業の末に、素晴らしい作品が完成しました。残る
は、紙芝居をどう読むかということだけとなりました。
「内容は頭に入っているし、電車の中でも家でも何回も読んでくるから
大丈夫だよ」
こんな頼もしい言葉がさらっと出てくるのも、とことん取り組み、納得ゆく
ものを仕上げた自信があるからでしょう。発表を乞うご期待ください!
RI
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