7月7日(火)七夕、午後2時、CS地方裁判所3A法廷。
週末、子ども「裁判官」たちが、頭をひねって考えてきた「判決文」の発表です。
まるで本当の法廷のように机を並べ、裁判官席にずらりと並びます。
検察側は「無期懲役」を求刑しています。
これに対し、子どもたちそれぞれが下した判決は……
おもむろに裁判官全員が起立し、一礼。着席後、裁判長役の子どもの
「これより判決を行います!」の声が教室に響きます。
「主文、被告人を懲役28年5ヶ月に処する。
3万円とやや低額の金をうばい取るために、被告人が、なにも罪のない老人を
それも、急所を数回もさしたというかなり悪質な行動は断じて許せる行動ではない。
また、被告人が、自分の力を考慮し、ナイフを持ったという行動からは
十分に殺意が認められ、計画性も見られる。遺族の立場や社会的影響も考慮すると
できるだけ重い刑で罰することが相当と思われる。
しかし、被告人は、自分の犯した罪の重さも理解し反省しており
前科もないことから、社会復帰後、更生する可能性も十分認められる。
被告人の親族も出所後、被告人を支援するということから
求刑の無期懲役は重いと判断した。」
これはある子が書いてきた判決文の全文です。
どうです?なかなか立派な判決文に仕上がっていると思いませんか。
他の子もみんな、これに勝るとも劣らないものをきちんと書いてきました。
判断するポイントを整理し、どんな流れで書くかは確認しましたが
どの証拠を採用し、どんな根拠で判断するかはすべて子どもたち任せ。
当然、文体の指導など一切していないのに、「…が相当である。」とか
「断じて許すわけにはいかない」とか、いかにも裁判らしい書き方をしているので
驚きました。「現地」で「現人」に出会って得た強烈な「体験」は、そのままでは
流れてしまいますが、「自らも裁判官となる」という適切な課題が設定されたために
大人のふるまいを「まねて」「まなぶ」ことができたと言えましょう。
判決文を書き上げて、感触をつかみ、自信もやる気も高まった子どもたち。
さらに判断の質を上げるべく、「次なるケース」にチャレンジです。
最高裁判所が裁判員制度を導入するために識者を集めて行った懇談会の資料の中に
裁判の中核をなす「証拠調べ」をどう行うか実際の事例で説明しているものがありました。
物証、証人、被告人の発言が詳細に書かれていて、子どもたちが「正しく判断する力」を
磨くのに最適の教材です。
「日常から被告人と被害者との間に争いがあったと言えるよね」
証拠として採用された「証言」で、事件以前から両者は険悪な関係だとわかったのです。
日頃から相手を憎く思っていたなら、「殺意」が芽生えていたと
「判断」してもよいのではないか?
具体的な「証拠」に基づいて「事実認定」をしっかり行わなければなりません。
今回、考えるのは「殺人未遂」で起訴されたケースですが
前回と同じように、「殺意の有無」「包丁が刺さったのは故意か?偶然か?」
「正当防衛が成立するか?」という「判断基準」が明確です。
しかし、「基準」があっても、それを支える「情報」がないと「判断」できません。
さらにその手持ちの情報が「正しい」と言える「条件」が満たされていないといけません。
もしこの「証言」が正しいなら、それを支える「合理的理由」があるはず?……
立派な判決文を書いて、一歩前進したはずが
新たに「合理的な判断」という「迷宮」に入り込んだ子どもたち。
やればやるほどわからないことに直面する……
しかし、子どもたちは前向きに取り組んでいる……
まさに探究型の学びらしい「展開」です。
来週、7月14日(火)14:00。再び、CS地方裁判所3A法廷で「判決」です。
RI