[3・4年生]
「ヒーローって聞いてどんなことをイメージする」
この問いかけから学びはスタート。いつも通り、まず、子どもたちの先行知識をあぶり出します。最初に浮かび上がってきたのは、やはり、「正義」「強い」という要素。いわゆる典型的なヒーロー像ですな。次に浮かび上がってきたのが、「やさしい」という要素。なるほど、弱気を助け、悪をくじくわけですから、ただ暴力的ではなく、思いやる気持ちもあるということですね。
「でも、完全じゃないよ……」
おっ、だんだん面白い見方が掘り出されてきましたね。完全無欠のヒーローという言葉がありますが、子どもたちのイメージはそれだけではないようです。
「いたずら好きで、普段はけっこうだらしないんだよね」
「そうそう、でもいざというときにはやる」
なるほどね。できない部分・弱点・欠点を持ちながらも、ここは勝負所!というときには、素晴らしい力を発揮して、みんなを助けるということですね。確かにこの要素が「共感」を呼ぶポイントと言えるかもしれません。
「でも、いつもヒーローが勝つというのは疑問……」
漫画やアニメのヒーローの基本は、勧善懲悪で、ギリギリのところで必ずヒーローが勝利して話は終わります。しかし、現実はそう甘くはない。しょせん「架空のお話だよね」という冷めた気持ちも持っているようです。
「普通の人とは違う部分が必ずあるんだよ……」
本質的なつぶやきが現れ始めました。
「普通の人とヒーローってとどんなところが違うんだろう?」
とたずねてみると、ある子が興味深いことを語ってくれました。
「無敵ということの意味が違うんだよ」
それはどういうことかとさらに語ってもらうと……漫画のキャラクターとかの無敵は、単にいちばん強くて誰にも負けないということ。でも、普通の人とは違うヒーローは、「敵」が「無」いという意味での「無敵」。つまり、どんな人でも受け入れて、自分の方へと巻き込んでゆくことができるから、自分にとっての敵がいないし、敵の方も敵ではなくなって仲間になってくれるというのです。なるほど、それは面白いし、深い。さらにもっと普通の人と違う特徴は、「犠牲」を厭わないということ!という意見まで飛び出してきました。誰かのため、何かのために、お金や命を差し出すことができるというのがスゴ過ぎるというわけです。
「人によってヒーローが誰か違うよね」
そう!そうなんです!本質であり、「核心」となる意見が出てきましたね。今回の学びの目的は、My Hero、つまり人それぞれによって異なる My Hero について徹底的に追究するということなのです。
自分にとってのあこがれの存在……あんなふうになれたらいいなあと思える存在……それがMy Hero です。自分にとってのヒーロー(実在・非実在は問わない。架空のキャラクターでもよい)が、なぜヒーローと言えるのか、そして、自分のこれからの生き方とヒーローの生き方とをどうつなげてゆくか考えるのが今回の学びの目的です。
「ぼくはもう決まってるよ!」
ほとんどの子どもが既に My Hero を心に抱いていました。自分にはない熱さと誠実さを持っている松岡修造。幼い頃からずっと見ていて自分が電車好きになるきっかけとなった鉄道を作り上げた根津嘉一郎。ユーモアと強さを合わせ持っていて実は caring なドラゴンボールの悟空。いたずら好きだけど、ユニークな発明ができるゾロリ。満塁に強く、運動能力の高い巨人の坂本。そして……特別お金持ちではなかったのにアイデアの力で大金持ちになったスティーヴ・ジョブズ。ほお〜、なかなかユニークなラインアップとなりました。
あっという間に、自分がもっと知りたい、調べたいヒーローは決まりましたが、この人たちが自分の生き方にどんなつながりをもつのか追究してゆくのはこれから。ヒーローの生き方探究の旅がスタートしました。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。