特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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東京コミュニティスクール

書を捨てよ、町へ出よう

[6年生]

スクール最後となるテーマ学習もいよいよ残り3週間となりました。

「まち」をテーマに探究を進めたいと考えていた男の子。
前半の3週間は、大きなテーマを自分事に引き寄せて考えたり、自
身の心の内から出て来た素直な問いを挙げることができず、苦戦し
ていました。

興味関心があるテーマの中でどんなconflict(対立、葛藤)が発生
しているのか、インターネットや本を調べては、そこから得た情報
をノートに書き写していたのですが、考えがなかなか深まらないの
です。

インターネットや本は有効な情報リソースではありますが、所詮は
誰かの考えや意見が反映された二次情報にすぎません。
テーマ学習で、我々が「現地」「現人」「現物」を重要視している
のは、一次情報に触れ、五感を働かせることが子どもの学びの原動
力になると考えているからです。

彼は机上の世界で考えを巡らせるだけで、そこから動けずにいるよ
うに見えたのです。

(このままではまずいな・・・)

何かしら対策を打つ必要があると感じ、一緒にフィールドワークに
出かけることを提案してみました。
時間割の調整が比較的簡単にできる曜日があったので、丸一日外出
してみることにしたのです。

「シャッター商店街」をテーマに、まずは賑わっている商店街と寂
れている商店街を比較してみようということで、高円寺の商店街と
中野新町の商店街を訪れることにしました。

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最初に訪れたのは高円寺のルック商店街。
青梅街道からJR高円寺駅まで続く商店街の約半分を占めています。

まだ午前中ということもあり、開店していない店も多かったのです
が、所々「テナント募集」の張り紙を見かけます。

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「新しい借り手が見つかっていないところは建物が老朽化している
ことが多いね。。」
「お店とマンションが一体化してることが多いね。オーナーはマン
ション経営やテナント貸しで儲けてるのかな〜。」

目に飛び込んでくる情報からいろいろ想像が膨らみます。

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商店街をゆっくりと北上する中で、振興組合の事務所の前を通りが
かったので、事務所の方にお話を伺うことに。

「この商店街は古着屋で有名になったんだよ。やはり特色がないと
商店街が生き残るのは難しいよね。」
「お惣菜屋さんが少ないのも、この商店街の特徴だよ。みんな近く
のスーパーで済ましているね。オーナーも飲食関係のお店には貸し
たがらないんだよ。」

このような商店街の裏話をたくさん聞かせて頂くだけでなく、事務
所の壁に貼っていた昭和6年当時の近辺の様子を描いた地図をコピ
ーさせて頂きました。
これは貴重な資料です!

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続く、パル商店街は立派なアーケードが設置されており、電灯が煌
々として明るい印象。

「チェーン店ばっかりだね。。」
「パル商店街の方が特徴的な店が多かったなあ。」

じっくり観察する中で商店街の様子の違いが浮き彫りになってきま
す。結局、午前中いっぱい使って、約1キロ続く商店街を往復しま
した。

続いて訪れたのは中野新町にある川島商店街です。

駅から5分ほど歩いて到着した我々を待ち構えていたのは、文字通
りのシャッター通り。お客さんを寄せ付けない雰囲気に、二人とも
しばらく無言になってしまいました。

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お昼時にも関わらず、お客さんが我々以外に二人くらいしか見当た
らず。シャッターが閉まったお店が多いばかりか、ほとんどのお店
が開店休業状態です。

「高円寺はあんなに賑わっていたのに。なんだろう、この違いは。」
「お店の人もお客さんを呼ぼうという気持ちが伝わってこないね・・・」

一通りお店を調査し、最後にお米屋さんのご主人にお話を伺うこと
に。

「見ての通り、この商店街はすっかり寂れてしまって。平成に入っ
てから売り上げががた落ちだよ。最盛時の10分の1くらいになっ
ちゃったね。」
「自分は父親から家業を継ぐように言われたけど、自分の息子には
絶対に継がせたくないんだよね。」
「お店の半分を駄菓子屋にしたのは、お客さんがちょくちょく来て
くれるから。お客さんと話をするのだけが楽しみだね。儲けは度外
視だよ。」

元気なく笑うご主人。
そこには商店街が隆盛した過去と衰退した今の両方を知る現場の生
の声がありました。

その後、スクールに戻り、調査結果をまとめることに。
ようやくエキシビションを進める端緒にたどりつきました。

HY

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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