特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール

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銀河鉄道に乗って

[5・6年生]

今年度最初の探究領域は「時空因縁」。テーマ学習のタイトルは「銀河鉄道
に乗って」です。「地球」という「空間」を離れ「宇宙」に飛び出し、「未来」という
「時代」に人類がどんな歴史を築いてゆくのか追究する学びを展開します。

ある時代のある空間で人間どうしが関わり合うことで「因縁」が生じ、「歴史」
が形成されます。年号を覚えるのが「歴史」ではなく、地名を覚えるのが「地理」
ではありません。どんな空間的な「要因」があるのか探るのが本来の「地理」
であり、自然現象または人為的な「要因」によって生じた出来事に人々がどう
からみあい、どんな「因縁」が生じるのか探るのが本来の「歴史」です。

このことを理解するために、人類が将来宇宙空間に飛び出し、社会生活を
営まざるを得なくなったときの物語を構想し、それを紙芝居としてまとめるのが
今回の学びです。

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学びの初日、渋谷にあるコスモプラネタリウムに出かけました。昨年、日本中
を熱狂させた「はやぶさ」の帰還を、全天井ドームでの高品質CG映像で見て、
宇宙へのイメージを広げるためです。確かに、映像はリアルで、宇宙に出た
感じが味わえましたが、ストーリーや音楽などの演出が、あまりにもお涙頂戴
すぎて、ちょっとしらけた感じの子どもたち。宇宙に対する関心があまり喚起
されない状態で学びはスタートしました。

(これはちょっと手こずるかな……)

ミッションを伝えても、あまりピンと来ず、苦戦するのでは……という予感が
胸をよぎりました。

とはいえ、気持ちを入れ替えて次の日の学びへと向かうしかない……
探究教師としての第一関門にいきなり直面しました。こういうときはじたばた
しない方が得策というのがこれまでの経験則です。淡々と、今回のミッション
を告げることからスタートしました。“アウトプットは、紙芝居”ということは、
先輩たちの発表を見ているので皆わかっていました。ただ、今回は、前回と
異なり、ストーリー作りの「制約」を設定したので、まずそのことを伝えました。

制約条件は、大きく分けると3つ。

1つ目は、地球から宇宙へ飛び出すこと。

2つ目は、科学的事実と大胆な空想とをうまくおりまぜて面白いストーリーを
編み出すこと。

3つ目は、人類の可能性を広げるために宇宙に出た!というメッセージが
観客に伝わるようにすることでした。

「地球から出なければいけない理由がないとダメだよね」
「それは、地球に住めなくなったからでしょう」
「いやあそうとは限らないよ。宇宙に何かいいものが見つかって飛び出したい
と思ったのかも」

え~っ、昨日のあのしらけた雰囲気は何だったの……と思うぐらいにいきなり
議論がスパークします。やはりあせらず自然体で正解でした。

「宇宙という空間に出るということは異次元に出るということじゃないかな」
「じゃああるところは過去なのに、別のところは未来ということがあるかも」
「光の進む速さと同じ速度で飛ぶロケットの中の方が時間の進みが遅いって
聞いたことがあるよ」
「じゃあある星と別の星で時代の違いがあるなんていうのはどうかな」

2つ目の「制約」をふまえた議論も始まりました。

「みんないい観点だね。宇宙空間での時間の進み方という事実を調べて、
それを活かしながらうまく空想をまぜれば面白いストーリーができそうだね」

早くも、宇宙と人類の時空因縁に向かって子ども達は動き始めました。

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ストーリー作りへの意識が高まってきたところで、次は、登場する人物の
キャラクター作りをどうするかについて考えます。

「これから作るストーリーでは、risk-takers、open-minded、prncipled、の
3つを意識して人物をつくってほしい」

登場事物のキャラクターをPYPの目指すLearner Profileに合わせるように
伝えます。しかし……子どもたちは初めてLearner Profileについて触れる
上に“英語”です。しかし、日本語に訳した言葉は教えません。訳された
日本語にひっぱられて、本来の意味やコンセプトを理解する妨げになるから
です。

まず、ネイティヴの英語の先生が作ってくれた絵を手がかりに、意味を推測
することから始め、じょじょに意味をつかませてゆきました。そのうえで、
一昨年「陽月海心」が作った宇宙紙芝居「ビグバグドーナツ緑星」を見直し、
登場人物がどのLearner Profileに当たるか考えました。

他の星にたどりつき探検中に怪しい生物と出会い、パニックになり、持って
いた銃を乱射し、止めようとした召使いを射殺してしまった人物。
この人物は、先に示した3つのLearner Profileという観点で分析すると
いったいどうなるか……

「怪しい生き物に銃で向かっていったんだからrisk-takersでしょう」
「そうだよね、自分を守るために人を撃ったのは、やっぱりrisk-takersだよ」

一部の子は、無茶なことをするというのがrisk-takersというイメージを持って
いました。

「でも……自分だけ助かろうという感じもあるからprncipledじゃないよ」
「みんなのことを守ろうというんじゃないものね」

議論は盛り上がります。そこで、3つのLearner Profileを意識して、宇宙
紙芝居に登場しそうなキャラクターを考えてくることを週末のホームワークと
しました。

次週は、子どもたちの構想した登場人物を「ネタ」に、3つのLearner Profile
についてさらに理解を深め、紙芝居に登場させるキャラクターを固めることから
スタートです。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

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